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【ユニークな比較テスト】アルファロメオのトップモデル2台 ジュリア VS ステルヴィオ

2020年7月10日

アルファのフェイスリフトされた510馬力クローバーリーブスをテスト。真夏に向けて、アルファロメオ ジュリアとアルファロメオ ステルヴィオがリフレッシュされた。今回は、まず510馬力のクアドリフォリオモデルをチェックしてみた。

「クアドリフォリオ(Quadrifoglio)」とはイタリア語で「四つ葉のクローバー」と訳され、「幸運のクローバー」という意味もある。そして、ジュリアやステルヴィオのトップモデルのフェンダーには、そのクローバーの葉が備わっている。私たちは、リムジンとSUVを合わせて1020馬力で自然の中へとテストに出かけた。田園地帯にたたずむ2つの赤いアルファロメオは、「幸運のクローバー」よりもさらに希少なモデルだ。 昨年アルファロメオは、260台のステルヴィオ クアドリフォリオと208台のジュリア クアドリフォリオを510馬力で販売した。これは非常に少ない数だ。しかし、それは、ドイツでステルヴィオが2164台とジュリアが1172台という販売台数を考慮すると、かなりな数だともいえる。

変更点はシートメタルの下にある

今回、アルファのフェイスリフトには、3つの重要な変更点がある。
第一に、両モデルには、アクティブレーンキープやブラインドスポットアシスト、渋滞警報や疲労警報などのアシスト機能が搭載されている。言い換えれば、自動運転のレベル2のためのすべてのサポートを備えているということだ。
第二に、インテリアをアップグレードしている。センターコンソールにキーのための棚を増設したり、その後ろにスマートフォン非接触充電のためのコンパートメントを作ったりしている。
第三に、マルチメディアの改善で、プッシュ/ターンコントロールボタンを使用して、電話、ナビゲーションシステム、ラジオなど、すべてを直接コントロールしていたが、これからは、タッチパネルでコントロールできるようになった。
しかし、8.8インチのディスプレイはまだ小さいし、残念ながら、すべてのエントリーレベルのスマートフォンは、アルファの画面よりも優れた解像度を持っている。

ジュリアとステルヴィオのモデルアップグレードは、アシスタンスシステムで特に顕著だ。

アルファ、最強のジュリアでBMW M3にターゲット

アルファには、フェラーリが宿っているともいえよう。2.9リッターV6ツインターボはフェラーリ488 GTBとピスタの直系の子孫だ。ステアリングホイールの赤いスタートボタンを押し、ヘッドレストが完全に一体化した美しい形状のスポーツシートに座り、ボンネットの下側のカーボンファイバートリムと深いチューブの中の2つのアナログメーターが残っていることを確認し、あなたこう思う。アルファロメオ、ありがとう、と。誰もがこのデジタルタコメーターの流行にはまっていないことに感謝するのだ。ジュリアは後輪駆動なので、フロントアクスルには何の力もなく、後輪を駆動するだけだ。アルファは、ジュリアをBMW 3シリーズに、クアドリフォリオはM3に標準を合わせている。BMWと同様に、アルファはZF製の8速オートマチックを採用しているが、これは完全自動変速か、固定された巨大なステアリングホイールのパドルを使って手動で変速することができる。そしてジュリア クアドリフォリオは、510馬力のパワーをいかんなく発揮し、リアホイールドライブマシンとして、とても楽しいコーナリングを心行くまで提供してくれる。パワフルな、ものすごい推力(2500rpmから600Nmの最大トルクを発揮)で、グイグイと前へ進み、次のターンが待ち遠しくなるほどだ。ブレーキをかけ、左のステアリングホイールのパドルを押し、シフトダウン、アクセルを踏み、右のパドルでシフトアップと、ドライブする喜びを与えてくれる、まさにドライビングマシンだ。ただ、クアドリフォリオという特別なモデル名を付けた高額なジュリアとしては、それだけでは多少、説得力に欠けるのも事実だ。

楽しいデバイス。その510馬力と後輪駆動でやや平凡に見えるジュリアだが、真にドライブする喜びを与えてくれる。

ステルヴィオの場合、510馬力エンジンは最初の選択ではありえない

アルファのトップモデルSUVステルヴィオ クアドリフォリオは?
正直言っていい車だ。しかし、我々ならディーゼルモデルのほうを選択するだろう。この510馬力のツインターボパワーユニットをフロントに搭載し、四輪駆動、1.9トンの重量(ジュリアより200キロ以上重い)を走らせる。そのためか、高速コーナリング時にはふらつき、凹凸のある道路では、ジュリアほど良い乗り心地を持たない。そして4.70メートルのSUVに、このようなパワーが本当に必要かどうかは、ビッグクエスチョンだ。

パワーSUV:ステルヴィオ クアドリフォリオのV6はとても速いが、コーナーでふらつく。

さて、この楽しさにはどれくらいのコストがかかるのだろうか?
それは愛の力に以外にはありえない価格だ! ジュリア クアドリフォリオは82,500ユーロ(約1,031万円)、クローバーリーフ ステルヴィオはそれよりも10,000(約125万円)ユーロ以上の費用がかかる。オプションとして、5,000ユーロ(約62万円)のチタン製のアクラポヴィッチ(Akrapovic)エキゾーストシステムと2,800ユーロ(約35万円)のこの鮮やかな真っ赤なボディペイントが用視されている。つまり1200万円が必要となるのである。

テクニカルデータ: アルファロメオ ジュリア クアドリフォリオ
• エンジン: V6ツインターボ、フロント縦置き • 排気量: 2891cc • 最高出力: 375kW(510HP)@6500rpm • 最大トルク: 600Nm@2500rpm • 駆動方式: 後輪駆動、8速AT • 全長×全幅×全高: 4639×1874×1437mm • 乾燥重量: 1695kg • ラゲッジコンパートメント容量: 480リットル • 0-100km/h加速: 3.9秒 • 最高速度: 307km/h • 燃費: 10km/ℓ • CO2排出量: 238g/km • 価格: 82,500ユーロ(約1,031万円)より

テクニカルデータ: アルファロメオ ステルヴィオ クアドリフォリオ
• エンジン: V6ツインターボ、フロント縦置き • 排気量: 2891cc • 最高出力: 375kW(510HP)@6500rpm • 最大トルク: 600Nm@2500rpm • 駆動方式: 全輪駆動、8速AT • 全長×全幅×全高: 4702×1955×1681mm • 乾燥重量: 1905g • ラゲッジコンパートメント容量: 525~1600リットル • 0-100km/h加速: 3.8秒 • 最高速度: 283km/h • 燃費: 9km/ℓ • CO2排出量: 261g/km • 価格: 92,500ユーロ(約1,156万円)より

【フォトギャラリーと結論】

ジュリアは、「Fun to drive」、「Real joy to drive」といった言葉に値するドライビングマシンだ。
インテリアもアルファらしいスポーティな装いを備えている。
最大トルクの600Nmは2500回転時から活用できるようになっている。
フェラーリ488譲りのV6ツインターボユニット。見た目も美しい。
良い出来のクルマだが、高速走行には向いていない。

結論:
アルファロメオはまだ生きている。そして、それは良いことだ。
ジュリアは美しくパワフルなリムジンだが、クアドリフォリオとしてはややさわやかさに欠ける。
ステルヴィオは正直に言って、ディーゼルの方が適している、と思う。
AUTO BILDテストスコア ジュリア クアドリフォリオ: 2+
AUTO BILDテストスコア ステルヴィオ クアドリフォリオ: 3+

ジュリアもステルヴィオも、アルファロメオらしい魅力を持ったクルマ、だと個人的には思っている。とはいっても、どんな自動車がアルファロメオらしいか、と聞かれたら一言ではこたえられないような、なかなか困る問題ではあるが、2020年の現在、どちらも魅力のある自動車であることに間違えはない。
強いて言えばジュリアはFRであることと、じっくり乗ると滋味あふれる乗り心地やシートがアルファロメオらしいという人も多いし、一方のステルヴィオのほうは、SUVの中では圧倒的に鋭いステアリングフィールがアルファロメオらしいという声も聞く。
私の考えるアルファロメオの魅力というのは、もっと雰囲気とか情緒的なイメージが強く、強いて言えば、運転している自分が、ちょっと運転がうまくなって、ちょっといけてるようでモテるような、格好いい男になったかのような錯覚を抱かせる、そんな自動車がアルファロメオなのではないかと思い続けている(ちなみにBMWに乗って抱く錯覚は、スマートに仕事をパリパリとこなす、スポーツもこなせるエリートビジネスマンへの変身だろうか。)。

思い切り偏見な感想かもしれないが、星の数ほど種類がある世の中の自動車から、あえてイタリア車を選ぶのであれば、それぐらいのテンションを保ちながら乗らなければつまらないとも思う。そして、今回のアルファロメオはどちらも500馬力以上という、数年前までは想像できなかったほどの高出力エンジン搭載モデルだが、本当はそんな高性能バージョンは一握りの限られた好事家向けのバージョンであって、本来はもっと穏やかで滋味あふれる「普通の」モデルにこそアルファロメオの魅力の真髄があるようにも感じられる。そして現在のアルファロメオは、決してトラブルに悩まされるような自動車でもなければ、特別な努力も労力も必要とせず、気持ちよく毎日使える自動車なのである。
そんななかなかイケてると思うジュリアもステルヴィオも、特にわが国では残念なことに絶好調なセールスを展開しているとはいえず、メルセデスベンツやBMWの牙城を崩すには程遠い状況である。もちろんそんなメーカーと比較したり、台数を競ったりする必要もないという考えは正しいし、本当に好きな人が選ぶブランドであることをまっすぐに歩むことも正しい道ではある。
だが今までのセールスの不振が、例えばスマートフォンがなければ表示することのできないナビシステムであったり、ゲルマン民族の自動車に圧倒的な差をつけられたアダプティブクルーズコントロールやステアリングサポートや自動ブレーキシステムであったりしたのではないかというメーカーの反省の結果が今回のマイナーチェンジの大きな部分ではあるだろう。もちろんそれだけではなく、様々な部分においてのアップデートも行われていることは間違えないが、写真を見る限り、エクステリアやインテリアに必要以上の手を加えられ、改悪になってしまうことを避けられたことは嬉しい限りである。
そして本文にも記されている通り、コンベンショナルなアナログメーターがそのまま残されたことは本当に安堵した次第である。自分がちょっとイケてるちょい悪オヤジに変身したかのような錯覚を抱かせるためにも、パネライの腕時計と並んで、こういう格好の良いメーターは絶対に必要なのである。

Text: Andrew May
加筆:大林晃平
Photo: FCA