1. ホーム
  2. スポーツカー
  3. フェラーリとポルシェとマクラーレン、ガチンコ勝負!

フェラーリとポルシェとマクラーレン、ガチンコ勝負!

2020年6月24日

比較テスト: フェラーリ488ピスタ対マクラーレン720Sスパイダー対ポルシェ911GT2 RS

なぜかフェラーリは他のクルマと比較されることを嫌がる。実際に比較テストを行うことを(事実はわからないが)禁じてもいるようだし、他の似たようなスーパースポーツと並べて写真を撮影したり、展示したりすることにさえNGを出すこともある。
そんな比較しにくい車を、今回は神をも恐れずに、ポルシェ、マクラーレンと一緒に走らせ比較テストしてみた。
さてさて、この3台のレーシングトラックアニマルたちのハイウェイでのパフォーマンスやいかに?

3台のスーパースポーツカー、フェラーリ488ピスタ、マクラーレン720Sスパイダー、そしてポルシェ911 GT2 RSをテストしてみた。

気持ちのよいアルトミュールタール自然公園の中をクルーズする3台のスーパーアスリート。ダイナミックトリオ。左からGT2 RS、そして488ピスタ、そして720Sだ。テストの前のニュルンベルク周辺の絵のように美しい田園地帯を走る、リラックスした観光ツアーのヒトコマ。

見るからに武骨でとてもエレガントとは呼べない巨大なリアウィングと兵器用のペイントのように見えるカーボンフード、フロントの巨大なエアインテーク、ホイールアーチベンチレーション用のフェンダーのルーバー。田舎道では911は道に迷ったレーシングカーのように見える。
GT2 RSは340km/h時に340kgのダウンフォースを生成し、生産型ポルシェとして初めて、ボンネット上に備わったエアロダイナミックNACA開口部がブレーキを冷却するようになった。

一方、フェラーリの場合、突出したウィングまたはアタッチメントは空力的に洗練されたソリューションにつながっている。
たとえば、フロントフードのF1にインスパイアされたノッチと呼ばれる、目立たないSダクトは、走行中にウィングのように機能し、空気抵抗を増加させることなくフロントアクスルに荷重がかかることを援助する。

コンタクトプレッシャーを増加させるダブテール形のリアスポイラーも同様に機能し、同時にリアライトの下のエアアウトレットが空気抵抗を減らすような効能がある。

マクラーレンの場合、ドライバーはエアロダイナミクスと最もダイレクトなコンタクトを期待できる。なぜなら、リアスポイラーがエアブレーキとして機能するためだ。つまり、ドライバーがブレーキをかけると、リアスポイラーによってエアブレーキエレメントへのエア制御をすると同時に最大ダウンフォースが得られるようになっているのだ。
それは常に、ダウンフォースと空気抵抗の間の最適な相互作用を見つけ、空力効率を改善し、避けられない給気と排気の流れの間の複雑な関係を完全に管理し、巧みに使用することを意味する。

たとえまだエンジンが作動しておらず、完全にデジタル化された機器が実際にオンになる以前でも、マクラーレン720Sに乗り込んでステアリングを目にしただけで、ドライバーの心臓はより速く鼓動する。これは、身体をしっかりと包み込んでくれるようなシートと完璧なシートポジション、クールな魅力を備えた薄いステアリングホイールによるものだ。マクラーレンのステアリングには一切のスイッチがないことに注意。

跳ね馬マーク入りの4点式ベルトを装着し、バケットシートにおさまると、すぐにフェラーリならではの特別な感情がわいてくる。

ハンドルの後ろに備わったアナログ回転カウンターが目を引く。残りの機器は、カスタマイズ可能なモニターで構成されている。ややデザイン過多で、操作性が煩雑なのがややマイナスではあるが。

991をベースとしているため、ポルシェ911GT2 RSのインスツールメントだけが、すべてアナログだ。むろんデジタルのほうが機能的にはすぐれているが、不思議なことになぜかアナログのほうにより親しみを感じる。400㎞/hまでに刻まれたスピードメーターに注意。

高速走行に備え、徐々に徐々にペースを上げ、ウォームアップしていく。マクラーレンの力強い音とフェラーリの甲高い音が対照的だ。

ポルシェのターボボクサーエンジンは、実に獰猛で不機嫌、ゴロゴロ、ギシギシと鳴り響く。しかし、それは標準の排気システムの音が主な原因でもある。神経質で重厚な音の一部は、明らかにボクサーエンジンの動作原理によるものだ。3台のうち最も排気量が小さいにもかかわらず、もっともボリュームがあり低音に聞こえる。

エンジンが十分に温まったところで、マクラーレンのアクセルペダルを強く踏む。720Sは唸りをあげて狂ったように走り始め、ぐんぐんとスピードをあげていく。あたかもギアボックスなど備わっていないかのように。もちろんギアボックスは存在するが、このフィーリングをマクラーレンは「シームレス(継ぎ目のない滑らかさ)」と表現する。まるで目に見えない非常に強いゴムが地平線を引っ張っているかのようだ。

488 GTBのエンジンが大幅に開発されたピスタでは、最も軽い踏力でエンジンがどんどん回転しいく。ギアシフトはショーの一部であり、より多くのアクションをもたらし、自分自身が主人公でアクションの中心にいるというフィーリングを強く感じ、テンポだけでなく、ハイスピードも中毒のように繰り返す。
3台中、ピスタがもっとも頻繁にシフトパドルの操作を要求するが、それは信じられないほどクール、ただただクールでつい操作してしまうから、でもある。

一方でシフトパドルを頻繁に操作するようなことはGT2 RSでは起きない。1つには、その小さなパドルのせいでもあるし、2つ目は、自動モードが非常に有用で優れているため、ある時点で、手動で切り替える、ということ忘れてしまうせいだ。にもかかわらずポルシェは3台の中で最も凶暴だ。それはその獰猛なエンジン音も原因の一部となっている。さらには、中速域ですでにその強大な威力を発揮するため、他の2台のライバルモデルほど高回転域で勝負する必要がないのだ。

スポーツ性という点に最大の焦点を置くポルシェは、シャシージョイントでさえもその批判的な外観によって、スチール製のユニボールジョイントに置き換えられた。そしてそれはGT2 RSの特徴のひとつでもある。このようにして得られた剛性は、小さな曲がりくねった田舎道でも絶対的な精度を保証するが、その極度にバイオレントで、妥協せずにベストタイムのために常にプッシュするよう作り上げられたGT2 RSは悪路には適していない。
しかし、そのためだけにこのレーシングマシンを責めることはできない。また、ボディの動きを抑えるためだけに、残りの快適さが大きく犠牲になったわけでもない。
もちろん、ダイナミックエンジンマウントも標準装備されており、リアアクスルの後ろに備わったボクサーエンジンを効果的にサポートする。要するに、すべてが最高の時間のために費やされたのだが、その小さな喜びのために少し極端にやりすぎたような感は否めない。

マクラーレンも非常に正確に走り、旧いランボルギーニのようにフロントアクスル上に座っているように感じ、それによってステアリングとドライビング両方のフィーリングを瞬間的に得ることができる。今や少数派となった油圧式ステアリングは、軽いサポートを備えたすばらしいデバイスであり、ポルシェ同様、一方でステアリングリンケージをしっかりと感じることができる。
720Sは快適なドライブも提供してくれるが常に圧倒的なGT2 RSほどではないものの、難度の高いコーナリングも楽しむこともできる一台だ。しかしマクラーレンに関しては、ステアリングではそれ以上とりたてて言及することはない。

一方で、フェラーリは、求められる目標を達成するために、完全に異なる方法を採っている。つまり、ドライバーと車との距離を最大限近づけること、つまりコンスタントで正確なフィードバックの実現だ。フェラーリのステアリングホイールを握った時の最初の感触は、ステアリングが予想外に滑らかであるため、少しわかりにくい。しかし数回の高速コーナリングの後、目を見張るような効果に気づく。なぜならコーナリング性能が非常に正確で、直観的に非常に快適なコーナーからの立ち上がりとロードホールディング性能に優れているためだ。
比較的短い時間でクルマに慣れさえすれば、メスのようにシャープなフロントアクスルと、非常に直接ではあっても決して鋭すぎないステアリングと着座位置によるフロントアクスルの正確なコントロールを感じることができる。
これこそが、フェラーリ式の、人工的なステアリングと思われるにもかかわらず、即座にドライバーに車に対しての大きな自信をもたらすという偉業を生み出す方法なのである。

結論: 最初は強力なマシン911 GT2 RSに圧倒される。マクラーレンはより融和的といえる乗り味だが、最終的にはシャープなフェラーリ ピスタがその極めて高い実用性によって多くの人々を納得させるであろう。

Text: Ralf Kund
Photos: Ronald Sassen / AUTO BILD