面白ネタ 世の中には物好きな人(失礼)もいるもんだ ベンツSクラスのピックアップトラック

69

メルセデスS280(W140): 珍しいピックアップトラックへのコンバージョン

このピックアップトラックはSクラスだ! 節税のためのコンバージョン? デンマーク人がメルセデスのリムジンをピックアップトラックに変えた。このW140シリーズS280トランスポーターのリア部分は、ヨット作りの職人の手によって改造された可能性がある。

このメルセデスS 280(W 140)は、今までに見たことがないようなユニークなSクラスだ。メルセデスのリムジンは、Bピラーから後半がピックアップトラックになっている!
このドイツとデンマークの共同製作車は、新車購入者に恐ろしい登録税を課すデンマークの税法に起因している。しかし、商用車には割引があるのだ。

その税法のため、この数十年の間に、デンマーク人は乗用車の改造に独創性を発揮し、このW140ピックアップトラックのような、自動車文化の面白いスタイルの花を咲かせてきた。
デンマークのユトランド州中央部に位置するアンボー(Arnborg)出身の煉瓦職人、マーティン オーバーガード氏(63歳)は、これらのメルセデスベースのピックアップを気に入ってコレクションしている。

改造にかかったコストは44,000ユーロ(約528万円)

オーバーガード氏のコレクションの中で最も豪華なコンバージョンは、1995年製のW140シリーズのこの黒のメルセデスS 280だ。
オーバーガード氏は2018年まで、メルセデスベンツを購入したことはなかった。そしてこのSクラスピックアップトラックは8,800ユーロ(約105万円)という、彼にとっては最も高価な買い物だった。
だが、前のオーナーは、Sクラスをピックアップトラックに改造するために、44.000ユーロ(約528万円)相当のお金をかけている。そのことを考えれば、105万円は破格の値段といえよう。
メルセデスベンツSクラス史上、もっとも大きなW 140シリーズの高級車は、遠くからでも高貴な印象を与える。

チェッカープレートが施された荷室は、木製の手すりとマッチしている。

リアの改造は、ヨット建造の構造を彷彿とさせる。
チェックのステンレススチールを敷き詰めた荷室の周りには、重厚なマホガニーの手すりが取り付けられている。ターポリン製のデッキパッドアイもマリーン分野から来ている。ヨット製造の手法が採り入れられているようだ。
テールゲートは座ってみても大丈夫なほどしっかりしている。

デンマーク最後のピックアップコンバージョンの1台

このような改造ピックアップトラックは、デンマークでの節税を目的としていたとはいえ、ごく一般的なエコノミーカーとは程遠い高級品である。
高価な車のコンバージョンに興味を持った人はお金を持っていて、比較的安価な追加装備にケチをつけなかった。変更されていないコックピットは、革張りを含むSクラスの豪華さを維持している。
現在も、この車は、運転中にリラックスした静けさを放っている。
S280はデンマークで最後のピックアップコンバージョンの1台だという。そりゃそうだろう。
車のデザインが複雑化し、改造に関しての規制が厳しくなったこともあり、90年代末にその傾向は行き詰まった。今日では、この分厚い船はライフスタイルカーのように見え、目を惹く存在となっている。
最初は苦笑したが、意外にクールで、こういうのもありかな?と思えてきた。 
まさに希少かつ貴重な1台だ。

コックピットはレザーをはじめとしたSクラスの豪華さを保っている。若干シートがへたり気味ではあるが。

ついでに他の例も挙げておこう。写真はメルセデスEクラス(当時はミディアムクラスと呼ばれていた)、300 D(W124)のピックアップトラックだ。この124シリーズ中期モデルベースの300 Dは、まるでメルセデスの組み立てラインから外れたかのように、良いクオリティで製造されている。
これも、前述のデンマーク人、マーティン オーバーガード氏のコレクションの1台だ。
コックピットはそのままセダンから引き継がれたが、ドライバーの後ろには大きなリアウィンドウが設置されている。追加のサイドウィンドウと組み合わせることで、まったく異なる空間感を生み出している。風通しもいいようだ(笑)。

その昔、メルセデスベンツSクラス(W126)ベースのワゴンの実車、というのを東京都内で見たことがある。その頃はW124(その頃はミディアムクラスと呼んでいた)のTモデルしかメルセデスベンツのワゴンはなかったし、バブルの好景気に背中を押される形で、こういう素っ頓狂な改造を施されたメルセデスベンツをよく見たものだった。
以前にも書いた「スバッロ」のSECベースのガルウイングドアも実際に見かけたし、スタイリングガレージや、ドゥシャレーといったメルセデスベンツを長くしたり、高価にしたりするメーカーの作る車は結構な数が作られたのではないかと思われる。
もちろん今でもそういうチューナーというか、改造するメーカーは数多く存在し、中でもメルセデスベンツ(だけではなくその他の車もだが)を霊柩車に改造するコーチワーカーは昔から多数存在している。
このピックアップトラックもそんなメーカーのひとつが手掛けたのかもしれないが、まあ目くじらを立てる問題でもないし、街で見かけたら振り返ってしまう、くらいの珍奇さは持っているだろう。他の人に迷惑をかけなければ、こういう洒落だってありかもしれないし、それがメルセデスベンツというメーカーの、中でもW124とかW140という、一番お堅く、くそ真面目に車を作っていた頃のモデルだから、より一層シャレが効いているのである。
まあ自分で買うことは絶対にないだろうが、どこかのクルマのイベントとかで見かけたら、このクルマのオーナーの人とのおしゃべりは、きっと弾むだろう。このメルセデスベンツのピックアップトラックに乗っている人は、なんだか悪い人じゃなさそうだから。

Text: Richard Holtz
加筆:大林晃平