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【クラシック オブ ザ デイ】20世紀最後に生まれたカルトモデル BMW M3 CSLはスポーティなBMWドライビングの頂点だった

2023年9月1日

BMW M3 CSL:NA直6エンジンは、BMWのスポーティな走りの代名詞であり、BMW M3 CSL(E46)はその筆頭だった。今日は、このクルマが“Classic of the Day”だ。

「E46」シリーズの「BMW M3 CSL」は、外観は標準的な「M3」とほとんど変わらない。その一方で、このホットなチューニングを施したスポーツカーをレーストラックに放つと、ツッフェンハウゼンのスポーツカー(ポルシェのこと)を食ってしまう。

「CSL」は「Coupé Sport Leichtbau(クーペ スポーツ ライトウェイト)」の略だ。台数は1,400台弱と推測されている。

重量ダウン!CSLでは、スチール製のルーフなどがカーボン製となり、リアウィンドウを極薄ガラスに変更するなど数多くの部品が軽量化されて150kgのダイエットに成功している。
Photo: Toni Bader / AUTO BILD

BMWは150kgの軽量化を実現し、伝説的な名声を獲得した

すでにホットだった「M3」をこのコーナリングアーティストに変身させるために、BMWのエンジニアはいくつかのアイデアを思いついた。まず、軽量化を図った。ルーフ、エプロン、ドアパネル、センターコンソールはカーボン製。「CSL」のバケットシートはGRP製、リアウィンドウは極薄ガラス製、テールゲートは繊維強化プラスチック製である。

エグゾーストシステムは通常の「M3」よりも肉薄で、テールパイプの重量は5.5kg軽い。全体として、「M3 CSL」は、すでに軽い兄弟車の「M3」よりも、さらに150kg(!)も軽量化されたのだった。

エンジンマネージメントが変更され、カムシャフトとエキゾーストマニホールドが交換され、バルブがより長く開き、エキゾーストバルブが最適化された。その結果、最高出力は343馬力から360馬力に向上した。「CSL」にはCFRP製エアボックスが装備され、6,000回転を超えると開放され、ツーリングカーのようにレブリミットまでBMWの雄叫びを上げることができる。

再チューンされたシャシーとシーケンシャルギアボックスにより、「BMW M3 CSL」は理想のラインを追求する精密機械となった。

ホット: BMW M3 CSL(E46)のボンネットに搭載された直6は、360馬力を発生する。
Photo: Toni Bader / AUTO BILD

M3 CSLは特別な旅のための車だ

保育園とホームセンターを往復する日常的なドライブには、このスーパー3シリーズは向いていない。そのためにはステアリングが鋭すぎるし、ターンインの挙動も鋭すぎるし、トラクションも豊かすぎる。シフトアップ時にはシフトショックが発生し、シフトダウン時にはダブルクラッチのサルボが発生する。これは熱心なスポーツドライバーには病みつきになるが、経験の浅い若いドライバーの神経を逆なですることになるかもしれない。

技術的な問題点はほとんど知られていない。摩耗部品を除けば、野性的なBMWはサーキットで使用する際に細心の注意を要するだけだ。

大林浩平: たしか昨年のことだったと思うが、M3 CSLの新車のような一台が発見され、4,700万円のプライスタグがつけられたというニュースを聞いた。と言うことは、今なら5,000万円オーバーかもしれないが、そもそも2003年に日本でつけられた正規物の価格は1,150万円と1,000万円オーバーのM3だったが、それが今や5倍。20年で5倍かぁ、とちょっとため息が出る。

ちなみに2003年とはどんな年だったかというと、ホンダ エレメントやスズキ ツインが発表され、プリウスが2代目にフルモデルチェンジとなった年であった。世相的には、小泉首相が靖国神社を参拝したり、武蔵丸が引退したり、六本木ヒルズが開業し、阪神タイガースが18年ぶりにセリーグで優勝している。ということは、今年はタイガース、20年ぶりに優勝するのか!?(残念ながら2003年、日本一になったのはダイエーであった・・・)。

ちなみにどうでもいいことだが、2003年には渦中の広末涼子が自称モデルでデザイナーの岡沢高宏さんと結婚している、ということは、キャンドル ジュンは二人目の旦那さんだったわけだが、岡沢氏との結婚はあっという間に終わっているのが特徴でもある。そんないろいろあった2003年に、総生産台数1,400台の中から150台ほどが正規輸入されたのがM3 CSLであった。本国にはMTとSMGというオートマチックトランスミッションの二つがあったが、日本に輸入されたのは後者の方だけで、なぜかMTモデルは導入されなかった。この部分だけはちょっとナゾなのだが、先進と高性能を前面に押し出したいという戦略だったのかもしれない。

さて、そんなM3 CSLだが、いざ乗ってみれば普通のM3とは一味も二味も異なる乗り味を持つのだという。どこがそんなに違うのかと言えば、一言でいえば軽さからくる乗り味の違いだそうで、CSL場合、有名なルーフをはじめとする各所のCFRPパーツ以外にもリアガラスが薄かったり、リアシートが安宿の座椅子のようにペラペラになっていたりと、開発者の執念が感じられる軽量化が施されている。

そんなこともあり、M3 CSLを所有している方の多くは「これだけは売らない」という台詞が常套句で実際、複数所有する車の中でも、「これだけ」は長年所有するというケースがほとんどなのだそうだ。

そうなってくると問題になるのはSMGという6速AMTで、この部分がトラブルの原因になることが多いと言われているが、実は壊れることで有名な(?)トランスミッションはSMGの方で、M3 CSLにはSMGⅡという改良型が搭載されており、SMGⅠほどトラブルを起こすことはないらしい。とはいってもやはりMTで乗りたい、と思うエンスージャストも多いのは当たり前で、SMGを普通のMTに換装する方もいたと聞く。そうまでしても乗りたいと思わせるM3 CSLの軽さは特別なものらしく、なんでもバイクに乗っているようなひらひら感さえ味わえるらしい。

なお、フロントバンパーも含めてスポイラー部分もルーフパネル同様にCFRP製。これだけ大きいパーツだときっと高いはず、と調べてみたらざっと70万円であった。パーツも今や探すのも困難だし、コンビニエンスストアの入り口やガソリンスタンドではくれぐれもご注意ください。とは言ってみたものの、M3 CSLの日本における中古車市場での在庫はゼロ。同じ年代のCSLでないM3やCSL風のモディファイを施した「なんちゃってCSL」はあるものの、本物のCSLは在庫がなかった。やっぱりそれほどまでに、一度手に入れたオーナーは手放さないモデルであるということだろう。

Text: Lars Hänsch-Petersen