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ロータス「Type 66」はレストアでも復刻でもない超高級少量生産車

2023年8月22日

ロータスがType 66を世界初公開し、その歴史を蘇らせた。このユニークなプロジェクトは、米国カリフォルニア州で開催されたモントレー・カー・ウィークの一環である「The Quail,A Motorsport Gathering(ザ・クエイル モータースポーツ・ギャザリング)」で発表された。

エキゾチックなデザインが施されたはType66は、ロータスの新しい超高級少量生産車である。ロータスの世界的に有名なモータースポーツの伝統から生まれた「失われたロータス」の図面プログラムを、今日の最先端のレーシング・テクノロジーとコンポーネントに融合させた。

Type 66は、ロータスの75周年という記念すべき年に発表され、ロータスの伝統の最良の要素を再構築し、可能な限り爽快な方法でアップデートしたいというブランドの願いの証である。ロータスの製図技師ジェフ・フェリスによって60年代後半にデザインされたType 66は、カンナム・レースシリーズに参戦する可能性を秘めたプロジェクトであったが、技術的なドローイングやスケールモデルに留まった。ロータスの輝かしいレースの血統と伝統に敬意を表し、デザイナーが最初にペンを走らせてから53年後、ロータスは誇りをもってオリジナルのビジョンを実現した。

この「再発見され、再構築された」ロータスV8は、わずか10台しか製造されない。これは、Type 66が1970年シーズンに参戦していたと想定される10のレース数に由来する。このクルマは、創業者コーリン・チャップマンがモータースポーツにおける商業スポンサーシップの先駆者であった70年代初頭に、ロータスがレースで使用していた赤、白、金のカラーを反映した、伝統にインスパイアされたカラーリングで一般公開された。

Type 66は、ロータスがこれまでに手がけた中で最もエクスクルーシブなプロジェクトであり、1台あたりの価格は100万ポンドを超える。

ロータス・ アドバンスト ・パフォーマンスのエグゼクティブ ディレクター、サイモン レーンは次のように述べている。「Type 66は過去と現在を完璧に融合させています。ドライバーを50年以上前のモータースポーツの象徴的なデザイン、サウンド、ピュアな舞台にタイムスリップさせ、21世紀のパフォーマンスと安全性を追加しています。これは本当にユニークなプロジェクトであり、75周年という記念すべき年に、ロータスから世界中のファン、そしてほんの一握りのお客様への完璧な贈り物です」。

同氏はさらに次のように続ける、「白、赤、金のグラフィックを含め、ビジュアルは当時のものと驚くほど似ていますが、ロータス・Type 66のテクノロジーと機械的基盤は、今日の高度なレーシング パフォーマンスにおいて最高のものとなっております。」

Type 66プログラムの開発で重要な役割を果たしたのは、クラシック・チーム・ロータスのマネージング・ディレクターであり、ロータスの創始者コーリン・チャップマンの息子であるクライブ・チャップマンである。ロータス・デザイン・チームがこのクルマに命を吹き込むことができたのは、クライブが持っていた資料のおかげである。

同氏は次のようにコメントした。「この車は、同じ時代に開発され、最も成功したF1シャシーであるロータス・ Type 72と多くの革新的な特徴を共有しています。これらには、フロントウイング用のスペースを確保したサイドマウントラジエーターが含まれます。これは 1970 年シーズンのCan-Amではユニークなことだったでしょう。さらに、車の後部は非常に特徴的で、当時のル・マン耐久車に似ていました。これらの機能により、ライバルと比較してダウンフォースが大幅に向上し、高速安定性が向上し、最終的にはラップタイムが向上したと考えられます」。

クライブは、もしType 66 が製造されていれば、ロータス F1 のレジェンドであるエマーソン・フィッティパルディがこのType 66をドライブしていた可能性が高いことを認めた。彼はザ・クエイルのロータスブースで主賓としてこのクルマのお披露目を手伝った。

ロータス・Type 66は、そのデザイン、エンジニアリング、製造の最適化のために、想像されてから半世紀以上にわたる技術的進歩の恩恵を受けている。

ロータスのデザイン・ディレクター、ラッセル・カーが率いるチームは、最先端のコンピューターソフトウェアを駆使し、クライブ・チャップマンから提供された1/4スケールと1/10スケールの図面をデジタル化し、3Dレンダリングによってまったく新しい視点からこのクルマを表現した。オリジナルのスケッチは、コーリン・チャップマンの初期のデザインに忠実で、ドラッグを減らし、リアウイングへのエアフローを改善するコクピットエンクロージャーが特徴だった。

Type 66のエアロダイナミクス最適化には1,000時間以上の数値流体力学 (CFD) 作業が費やされ、その結果、時速241km/hで800kgを超えるダウンフォースが得られた。これは、元のアンダーボディ設計で対応できる量をはるかに超えており、ドライバーの安全性と車両のパフォーマンスの両方を向上させ、ラップタイムを短縮する。

車体の中を空気が通るエアロダイナミクスは、ロータスの車両デザインの特徴的な要素であり、現代に引き継がれている。

現代の安全基準に適合させ、21世紀のドライバーの信頼性を確保するため、オリジナルのデザインを繊細に解釈し直されており、Type 66には、近代化されたパッセンジャー・コンパートメント、インボード燃料電池、シーケンシャル・トランスミッション、アンチストール・システムなどの新機能のすべてがフルカーボンファイバーのボディシェルに収められている。

フロントウイングは、車体前方からリアウイングの下を通って空気を流すように設計され、フルスピードで車体総重量以上のダウンフォースを発生させる。空気の流れが車体を取り囲むのではなく、車体の中を通り抜けるというこの多孔性の感覚は、今日でもロータスの車両デザインの特徴的な要素であり、スポーツカーのエミーラ、SUVのエレトレ、ハイパーカーのエヴァイヤに見られる。

レトロデザインのパッセンジャー・コンパートメントの中は近代化されている。

ラッセル氏は次のように述べた。「このようなユニークなプロジェクト、そしてコーリン・チャップマンが個人的に関わったプロジェクトを完了出来たことを非常に誇りに思っています。過去を再現することには、本当に繊細さが必要です。これは復刻版でも修復車でもなく、まったく新しいロータスの姿であり、私達の過去の栄光が未来に反映され続けることを約束するものなのです」。

ラグナ・セカ、シルバーストーン、富士、スパなど世界各地のサーキットで、先進の 「ドライバー・イン・ザ・ループ 」技術を駆使してテストが行われた。

Type 66の心臓部には、時代を象徴するV8プッシュロッドエンジンが搭載されている。ロータスは、ミッドマウントされたこのエンジンをアルミニウム鍛造クランク、ロッド、ピストンなど、特注の現代コンポーネントを使って7,400rpmで746Nm以上のトルクと850bhp/8,800rpm以上のパワーを発生するようにチューニングするる。そして、エンジン上部には、カンナムを象徴するエアインテーク「トランペット」を装備。吸気をスムーズにして層流を作るだけでなく、体積効率を大幅に向上させ、より大きな燃焼とパワーを可能にする。

カンナムを象徴するエアインテーク「トランペット」。その長さもチューニングの対象だ。

シャシーもまた、押し出し成型アルミニウム・セクション、接着ジョイント、アルミニウム・ハニカムパネルなど、当時を彷彿とさせるものとなっている。サーキット走行時にドライバーが最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、Type66 はEPASSモータースポーツ・パワーステアリング・コラム、リバース付きシーケンシャル・レーシング・ギアボックス、レース用ABSブレーキ・システム、アンチストール・マルチプレート・クラッチ、固定式ロールオーバー・バーといった現代的な快適装備を備えている。

これらの現代のエンジニアリングと創意工夫により、Type 66はGT3レーシングカーのダイナミックなパフォーマンスのラップタイムに匹敵するものとなった。ラグナ・セカの他、いくつかのサーキットでは、シミュレーターの結果より速く走れることが実証されている。

Text:アウトビルトジャパン
Photo:Lotus Cars/LCI