ランクルへのストレートな評価 トヨタ ランドクルーザーはレジェンドか?
2020年6月3日
トヨタ ランドクルーザー(日本名プラド)2.8 D4-D: テスト
伝説のランドクルーザーで行く旅。70年間作られ続けているトヨタ ランドクルーザー(日本名プラド)はいまや伝説の1台だ。我々は、その才能ある四輪車の最新世代をドライブしてきた。
トヨタ ランドクルーザーのハンドルを握っていると、日常の交通の中で行き交う自称クロスオーバーやSUVを見ると、自然と笑みが浮かんでくる。それはこちらの方が、より本格的だからこその笑みだと言えよう。
高い位置にドライバーズシートに座り、快適で、路上でもオフロードでも何が起きても大丈夫なように準備万端なランドクルーザーは、最新世代でも、ソフトタッチへの野心を持たない、本物のオフロード車であることに変わりはない。
エアコン付きのレザーシートや数々のアシスタンスシステム、快適装備でさえもそれは変わらず、長距離旅の快適さを十分に提供してくれる。
4人以上の乗車で、スペースはプレミアムなものとなる
ランドクルーザーの長さは4.84メートルで、かさばる形状と印象的な顔をして非常に大規模であるにもかかわらず、決して巨人というわけではない。
それにもかかわらず、5ドアのトヨタランドクルーザーには、多くのスペースを兼ね備えている。640リットルのトランク内に2個の非常用シートが備わっていて、最大7名乗車が可能だ。実用的な積み降ろしのために、リアドアを右に開くだけでなく、窓ガラスも個別に下げることができるようになっている。
海外のライバルとは異なり、ランドクルーザーは、少なくともヨーロッパではシングルエンジンのみが用意されている。177馬力と450Nmのトルクを発揮する2.8リッター4気筒コモンレールディーゼルは、2.3トン四輪車の物静かなキャラクターによく似合う素朴なユニットだ。
ランドクルーザーは、今も昔もオフロードの伝説だ
12.7秒で0から100km/hまで加速し、最高速度は175km/hだ。6速オートマチックトランスミッションは堅実な性能を発揮するが、活発なドライビングスタイルには、より近代的なトルクコンバーターが望ましいだろう。若干ATトランスミッションは古いが信頼性を重視したためかもしれない。
標準的な平均燃費は、経済的なディーゼルで、リッターあたり12.8km(高速主体で)と重さを考えればかなり優秀だ。
特にオフロードでは、ランドクルーザーは、ラダーフレーム、電子制御ダンパーコントロール、エアサスペンションを備え、独自のクラスに属している。
ランドクルーザーには、可変荷重配分機能付き四輪駆動システムと6速オートマチックトランスミッションに加えて、トルセン式リアアクスルディファレンシャルが装備されている。加えて、マルチテレインセレクトシステムや各種走行プログラムにより、高いオフロード性能を確保している。
いわゆるクロール機能は、特にゆっくりとした走行を可能にし、KDSSダイナミックシャシーコントロールシステムは、スタビライザーを油圧で切り離し、アクスルの強弱や柔軟性を高めることも可能にしている。
中央に配置されたタッチスクリーンを介してのナビゲーション、サウンドモジュール、各種コントロールを備えたインフォテインメントシステムは少し時代遅れで、国際的な競争相手のレベルには達していない。これは一般的なコントロールにも当てはまる。シンプルな回転式のノブやボタンを使って、タッチスクリーン以外の操作機能を調整する。
64,430ユーロ(約773万円)の価格のランドクルーザーは、キーレスアクセス, 電動エアコン付きレザーシート、JBLサウンドシステム、ダイナミックシャシーコントロールシステムなど、様々なドライバー支援システムを備えた快適オフローダーだが、内装のセンスや質感、そしてインフォテインメントのシステムは価格ほどのものではない。
ランドクルーザー、それはいつの時代も、世界でもっとも信頼性のある車の1台である。UNと書かれた白い車から、アラブの砂地を走る車まで、とにかく、これでなくてはいけないという需要が必ず地球のどこかに存在し続けている。
それはレンジローバーでさえも及ばない世界かもしれないし、トヨタにとって失うことが許されない票田であるともいえる。だからこそ、そろそろ新しくなってはいかがかと思うと同時に、よりシンプルで合目的的なランドクルーザーもあってもいいのではないか、とも思う。
風の便りではそろそろランドクルーザー300が登場するというし、それはおそらくレクサスブランドをも巻き込んで展開する、超豪華で大きく派手なランドクルーザーであろう。であれば、もっとシンプルで、ユーザーが自分で工夫しながら自動車とのライフを満喫できるような、そんな一台もあっていいのではないかと思う。
いつの間にか豪華に、そして高価になってしまったプラドランドクルーザーではあるが、もはや内装はひと昔前のセンスだし、本文中にもあるようにインフォテインメントシステムなどはオートバックス後付け感満載の世界である。車そのものの内容も、ディーゼルエンジンで延命はしているものの、他の車が持っているようなデバイスも、環境対策も持っていない。トヨタにとってもそんなことはとっくに承知のことだろうし、新しいプラドも日々テストコースを走っているのだろう。きっとそれはより大きく、快適で、電子装備満載のランドクルーザーに違いない。だとしたら、あえてシンプルな、世界のどこの国に持っていってもタフで乗った人を笑顔にできるような、そんなモデルもラインナップに加えて欲しい。
ランドクルーザーはいつの時代も、地球の未開の地に行ったとしても出会えるような、そんな自動車でいて欲しい。
Text: Stefan Grundhoff
加筆:大林晃平
Photo: Harald Dawo