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【クラシック オブ ザ デイ】80年代のアイコンモデル 若者たちの間で絶大な人気を誇ったクレイジーなルノー5ターボとは?

2023年8月16日

ルノー5ターボ:最もクレイジーなフランス車?世界ラリー選手権のホモロゲーション取得のため、ルノーは80年代にクレイジーなR5ターボを製造した。クラシック オブ ザ デイ!

「ルノーR5ターボ」は、無害な”小さなお友達”ではない。むしろ、1980年代初頭の世界ラリー選手権における前代未聞の性能争いで生まれた特別なクルマなのだ。

ルノーも大きく関与した。グループ4のホモロゲーションを得るためには、400台のロードカーが必要だった。ルノーの過激なロケットは1980年に登場し、「R5ターボ」と呼ばれた。

160馬力の4気筒エンジンはリアアクスルにパワーを伝える。

ミッドシップエンジンのルノーは頬を大きく膨らませる

「ルノー5ターボ」では、エンジンは普通の「R5」のリアシートがある場所に搭載されている。レース用に、「R12」の4気筒エンジンは1397ccにボアアップされ、クロスフローヘッド、K-ジェットトロニック、ターボでパワーアップされている。エンジンは、車体左右の分厚いチークから呼吸に必要な空気を得て、データシートには160馬力と記載されている。

この小さなフレンチロケット「R5ターボ」は0から100km/hまで7秒、160km/hまで20秒で到達する。空力的な問題で、最高速度は200km/hまでと控えめだ。

セットアップにもよるが、コンペティションバージョンでは250~400馬力を発揮した。ジャン ラニョッティのような名ドライバーでなければ、この猛毒の小人をコントロールすることはできなかった。

コンテンポラリーなシックさ: ルノー5ターボのインテリアはシンプルだ。

ブルートなR5ターボには、経験豊富なドライバーが必要となる

すべての「R5ターボ」は、強烈なドライビングエクスペリエンスを提供し、知識と経験豊富なドライバーを必要とする。前輪駆動から後輪駆動への切り替えには慣れが必要で、獰猛なターボパンチは言うまでもない。

ラリーやワンメイクカップレースによって、車両ストックはスタート直後から容赦なく間引かれた。オリジナルに興味があるなら、現場を知る人に協力を仰ぐべきだろう。複雑なターボ技術は影響を受けやすく、メンテナンスにも手間がかかる。

加えて、スペアパーツの供給が十分でないため、レアパーツに高額な費用がかかる可能性もある。とはいえ、「R5ターボ」はとても楽しい。ちょっとした忍耐が必要なだけだ。

大林晃平: ルノー サンク ターボは言うまでもないことだが、ラリーに参戦し勝つためにホモロゲーション車輛として発表・生産された、ということはいまさらな話であるが、意外なのはその生産台数である。魅力あふれる内装のサンク ターボⅠは約1,700台、今回取り上げられているサンク ターボⅡに至っては、約3,000台、つまり合計で4,700台ほどルノー サンク ターボが生産され発売されている。そしてもちろんこれだけの台数を生産することにより、ルノー サンクそのもののイメージアップにも貢献しているはずである。

これは何の役にも立たない(と思う)ミッドシップの、エアコンもろくすっぽ効かず、荷物も積めない異形の自動車としては驚くほどの台数なのではないだろうか。それだけ魅力的な自動車であったということは間違いないが、冷静に考えてみれば決して安くない(日本にキャピタルモータースが輸入した時、ルノー サンク ターボⅡには729万円の正札がつけられていた。当時の物価水準を考えれば高いと言えば、高いようにも思えるが、今となってはなんだか割安にも思える数字である)価格の、室内にエンジンが乗っていて灼熱地獄になるような実用性に乏しい自動車の生産台数としては、とっても多いと思う。

個人的にはルノー サンク ターボと言えば、Ⅰのマリオベリーニの内装の魅力にとどめを刺されたから、万が一購入するとしたら、圧倒的にルノー サンク ターボⅠを選びたいが、あの内装は劣化も激しく、維持はかなり難しいと所有者から近年聞いたことがある。それからするとFWDのルノー サンク アルピーヌと共用パーツのダッシュボードを持つルノー サンク ターボⅡはなんだか地味で、つまらないなぁと愛好者からは張り倒されそうなセリフをつぶやいてしまうが、シートそのものはデザインも素晴らしいし、きっとⅡのほうが素材などから推測するに、きっと負けず劣らず快適そうなので、文句を言ってはバチが当たろう。

話のオマケに、ルノー サンク ターボⅠとⅡでは、マリオベリーニの超絶内装のほかには、Ⅰではフロントサスペンションのダブルウィッシュボーンのアームが鋼管だったものの、Ⅱでは鋼板プレスに代わっていることと、アルミで作られていたルーフやドアがスチールに変更されていることが差異で、これはきっとコストのため、ということが理由なのだと思う。あの内装は確かにものすごくコストがかかっていそうだが、サスペンションやドアの素材も量産コストには大きく影響するのだろうか?今度、鉄の専門家の友人に計算してもらって、この鋼管から鋼板プレスへの変更でどれぐらい安くなると考えられるのか教えてもらおうと思う。

とにかくあの内装、自動車のメーカーが量産した作品としては圧倒的に魅了的で、今でもあれを超えるものは出てきていないと思う(その後、ルノーらしい内装と言えば、ルノー セニックの最初期に設定されていた5色別々の色のシートのモデルか、トゥインゴの最初期のポップな内装くらいで、他は地味でつまらない、というのがルノーの内装の相場である)。

そんなルノー サンク ターボのパワーは160馬力で、最高速度はちょうど200km/hをマークするくらい、今のアルピーヌA110の252馬力(最高速度も250くらいと覚えやすい)や、メガーヌRSの300馬力と比べると、なんとも控えめに感じられえる数値である。とはいってももちろん車は数値ではないし、ルノー サンク ターボのような車は、乗って楽しいかどうか、それがすべてであろう。そして1.4リッターのエンジンをギャレットT3のターボユニットで加給し、ボッシュKジェトロニックとインタークーラーも採用・・・。という言葉そのものにも、この頃、魅了されたのであった。そしてこのスタイリングは今でも決して古くないばかりか、魅力を増すばかりに思えてならない。

本当に、ルノーというメーカーは、この車のように何にも似ていないばかりか、まるで想像もつかないような奇抜で魅力的な車種を生産車として発表することがある。ルノー サンク ターボの後継車とも呼べる、クリオV6もそうだが、2ドアのモノスペースでありながらクーペボディのアヴァンタイム、いったい誰がどういう目的で使うのかわからないけれど、楽しさ満点なカングー ビーポップ、今のミニバン(モノスペース)の始祖ともいえるエスパス・・・。それらを見ると一番フランスらしい尖ったメーカーは、実はルノーなのではないか、とさえ思えてしまう。基本はしっかり骨太ながら、革新的でフランスのエスプリ(笑)さえ感じられるメーカー、それを如実に感じさせてくれる一台がサンク ターボである。

Text: Lars Hänsch-Petersen / Sebastian Friemel
Photo: Angelika Emmerling / AUTO BILD