【このクルマなんぼ?】エキサイティングなアルファ6エンジン搭載 プライベートコレクションからの美しく豪華な「アルファロメオ 164」のお値段は?
2023年7月26日
この美しい豪華なアルファは、コレクションからのものだ。このアルファロメオ164 3.0スーパー24Vは現在eBayに出品されており、素晴らしいコンディションのようだ。アルファのエンジンほどエキサイティングなものはないのだが、このクルマがお勧めの一台となり得るのか?
エンスージアストに言わせれば、アルファロメオに勝るものはない。アルファロメオのクルマは技術的にいろいろと難点が多いという評判もあるが、彼らはドライビングの感動を知り尽くしており、世界中のどんなクルマよりもエキサイティングなエンジンを作っている。熱狂的なファンの例: テレビ番組のアイコン、ジェレミー クラークソン。このイギリスのカルト司会者は、アルファやランチアなどのイタリア車に目が無いことで有名だ。
もしあなたがクラークソンと同じように感じるなら、ebayを見てみるといいかもしれない。なぜかって?1994年製のアルファロメオ164 3.0 スーパー24Vが、売りに出されているからだ。しかも少額で。イタリア車はたったの4,900ユーロ(約75万円)だそうだ。
広告に掲載されたアルファについては、次のように書かれている
注目すべき点: 広告に掲載されている写真では、アルファは絵に描いたように完璧に見えるだけでなく、状態も実に良いと言われている。具体的にはどういう意味だろう?売り手は、この車が過去10年間、彼のコレクションとして所蔵してあったと書いている。これは、アルファが雨ざらしではなく、乾燥したガレージに保管されていたことを示している。
2010年5月に登録が抹消されたが、その時点ではまだ1年半の車検が残っていた。これだけ長い間放置されていれば、点検などの作業は確かに必要だと売主は言う。しかし、アルファの6気筒エンジンはよく回り、ギアボックスのシフトチェンジも「アルファらしい」ものだという。加えて、美しいペイントワークもあり、売り手から見れば美しい外観である。
アルファの弱点がひとつ浮き彫りになった。どうやらコックピットのエアコンディスプレイがピクセルエラーに悩まされているようだ。これについてはパーツが付属しており、交換することができる。さらに、リモコン付き純正キー、整備手帳と取扱説明書が入った車載フォルダー、車検証が入った純正レターが付属する。
アルファの装備リストも印象的だ。オートエアコン、パワーステアリング、電動シート、ブルーベロアのインテリア、スペアホイールを含む5本のアロイホイール、電動ウィンドウなどである。
アルファロメオ164について知っておくべきこと
イタリア流の走りに魅了され、アルファの新しいオーナーになる可能性のある人は、購入前にいくつかの難しい事実をはっきりさせておく必要がある。
V6は、実際に問題なく走る限り、歓びを与えてくれる。タイミングベルトは6万から8万kmごとに交換する必要がある。慎重な暖機運転は絶対に必要で、オイル漏れはコンディションに関係なく起こりうる。
車内の電気系統は、あらゆる種類の驚きを秘めている可能性がある。ウィンドウレギュレーターの故障に始まり、インジケーターランプの点滅による混乱に終わる可能性もある。
ブレーキシステムは、スポーティなドライビングが得意な分、酷使される傾向にあるため、注意を払う必要がある。V6が心ゆくまで雄叫びを上げるこのスポーティなサルーンで、誰が抑制の効いた運転ができるだろうか?
アルファロメオ164は、サスペンションの支柱プレートに錆がある可能性がある。そのあたりを注意深く見てほしい!
大林浩平: アウト ビルト ジャパンをご覧になっているようなエンスージャストに方々には釈迦に説法かもしれないが、アルファロメオ164は、ランチア テーマ、フィアット クロマ、そしてサーブ9000という兄弟車を持ち、ティーポ4プロジェクトと呼ばれた共同開発から生まれたクルマである。そもそもこのプロジェクトは、フィアットがアルジェンタの後継車を開発するときに、主にエアコン(空調)部分をサーブに任せ、一緒に開発しようと話しかけたことが発端になり、そのあとにそれじゃあせっかくだから、フィアットグループのアルファロメオ(164)とランチア(テーマ)も開発して、4兄弟にしちゃえば開発費も削減出来て効率いいじゃん、という理由で進んだプロジェクトであった。
そりゃあ楽天的なイタリア人がカンツォーネをうたいながらエアコンシステム(空調関係)を開発するよりは、エアコンの不調が人命の鍵を握るような気候のスウェーデンのエンジニアが担当した方がいいだろうねぇ・・・とは、余計なおせっかいかもしれないが、ともかくそういうプロジェクトから生まれた4兄弟の中で、もし一台を選ぶとしたらどれをチョイスするか、というのがこのころの自動車エンスージャストの口プロレスバトル(酒の肴)であった。
たいていはアルファロメオ164かランチア テーマ、というのが大方の意見で、牛乳瓶の底のような眼鏡をかけたまじめな友人がサーブ9000を選ぶことがあったが、最後まで絶対に私はクロマを選ぶ!みたいな人には残念ながら当時出会うことができなかった。かくいう私も、この4台の中から選ぶとしたらアルファロメオ164かランチア テーマのどちらかで、悩みに悩んだ挙句、やはり端正で黄金比のような美しさを持ったランチア テーマの紺色を選ぶ、というのが夢想の結末で、アルファロメオ164は申し訳ないけれど次点だった。
なんでアルファロメオ164が次点かというと、ジョルジェット ジウジアーロのデザインしたランチア テーマは、今でも世界最高の4ドアセダンデザインと思うほど美しく端正であったからで、ピニンファリーナとエンリコ フミアには申し訳ないけれど、ちょっと派手で、地味で堅実(自己評価)な私には似合わないと勝手に思っていたからである。内装なども同じ印象で、ゼニアの生地が用いられ、落ち着いた印象のメーターパネルを持つテーマに対し、アルファロメオ164はスポーティで、とびぬけて運動オンチの私には、所詮アルファロメオのようなスポーティさとは相いれないと感じてしまっていたことも大きい。でも今改めて見ると、あんなに派手で幅が大きいと思っていた164なのに、そのデザインは内外装ともシンプルだし、全幅など1760mmにすぎないことに驚く。そして164も今でも通じるデザインを持っていることは認めざるを得ない。2023年の街で見かけても決して古ぼけてはみえないからである。
そんな164に私の周りの人が乗っていた時代があり、私も運転させてもらったことがある。そのモデルはクアドロフォリオという高性能モデルで、5速のマニュアルミッションを持つ一台だった。今になっては結構パワフルで乗り心地も良かったことと、首都高速の上でトラブルを生じ走行不能になったことが記憶に残っている。そして最も印象に残っているのは最小回転半径の大きいことで、他の自動車なら切り返しなど不要で一発で曲がれるはずの場所でも、必ず複数回切り返さなくては無理なほど、164の回転半径は大きかった。カーグラフィック誌の長期テストで、アルファロメオ164の長期テストを担当されていた故小林彰太郎氏も、毎回のようにこの部分を指摘していたのを記憶していたから、これが小林さんが繰り返し説法している部分か、と妙に嬉しくなるほどステアリングは切れなかった。
なお、どうでもいいハナシではあるが、この頃フィアットグループの会長、ジャンニ アニエッリは、このイタリア車3兄弟の中から、フィアット クロマを自分の会長車として使用していた。スポーティな164でなかったことは納得がいくが、ランチア テーマでなかったことは意外だし、納得がいまいちいかない。さらにアニエリはわざわざエンジンだけ164用のV6にかえて乗っていたともいわれている。ますますよくわからないが、あえて目立たずテロなどを防止しながらも、エンジン音だけでもアルファロメオを堪能したかった、ということだろうか・・・。
Text: Lars Hänsch-Petersen
Photo: eBay/widu67