新型VWゴルフ 買うならどれ? VWゴルフ8 購入ガイド&アドバイス
2020年5月28日
新型VWゴルフ8 購入アドバイス このゴルフを買うべきだ
7種類のエンジン、3種類のデザインライン、19,995ユーロ(約240万円)から、600万円超まで。VWゴルフ8の選択肢は多大だ。そんなドイツのベストセラーモデルの購入ガイドとアドバイス。
いまやゴルフは日常的な光景だ
1974年に発表されたとき、ゴルフがビートルの成功を繰り返すことができるとは、ほとんど誰も信じていなかった。
後輪駆動から前輪駆動とエンジンへ、空冷から水冷へ、丸くてキュートなデザインから角張ったバウハウスデザインへと、その変化はあまりにも過激だった。それにもかかわらず、フォルクスワーゲンはそれ以来、ゴルフを累計3,500万台以上も販売してきた。
ドイツだけでも、毎年、現代自動車や起亜自動車の合計販売台数(2019年は199,116台)よりも多くのVWゴルフが道路上に登場している(2019年は204,550台)。
その頃、VWに痛手となったのは、2019年の多くのメディアのヘッドラインだった。開発中の大規模なソフトウェアの問題が報告され、その後、ゴルフ8は計画よりも遅く完成した。そしてそのために当初は少ない種類のエンジンと装備で登場せざるをえなかったのであるが、徐々にラインナップは増え続け、今や完成したと言える。
ドイツ製ワールドベストセラーの範囲は大きい
そして今、モデルラインナップが充実しつつあるゴルフには、7種類ものエンジンが用意されるまでに至った。
19,995ユーロ(約240万円)の90馬力の小さな3気筒から、32,790ユーロ(約393万円)のダブルクラッチが標準装備された150馬力のディーゼルまで、多彩かつ幅広く用意された中からお好みでチョイスして、注文することができる。さらに、多数のオプションも、デジタル機器も揃っている。果たして、どのゴルフが自分の好みに合っているのか。選択肢は果てしなく多い。
まずは機器や装備のラインナップから始めよう。
ベースモデルは、単にゴルフと呼ばれ、それは2基の最小エンジンでのみ利用可能だ。90馬力1リッターTSIガソリンエンジンバージョンが19,995 ユーロ(約240万円)で、110馬力 バージョンが22,620 ユーロ(約271万円)だ。あるいは、115馬力2リッターTDIディーゼルモデルなら25,630 ユーロ(約307万円)するので
金額的に高いと感じる人もいるかもしれないが、その金額に見合う装備がVWゴルフ8にはスタンダードモデルでもすでに備わっている。LEDヘッドライト、デジタルコックピット、キーレススタートシステム、ラジオ、ナビゲーションシステム、エアコンは標準装備だ。
これは朗報だ。経済的に余裕がなければ、余計なものは追加購入する必要はないのだから。といっても、昨今ラジオやエアコンのない新車にはおめにかかったことなどないが。
ベーシックモデルのゴルフに全てのエキストラが用意されているわけではない
しかし、もしあなたがいくつかのこだわりや具体的な希望を持っている場合は、慎重にチェックしてほしい。なぜなら、いくつかの(部分的に重要な)オプションは、現在、ベーシックゴルフには装着できないからだ。たとえば、それは下記のようなものである。
ガラスサンルーフ(1,080ユーロ=約13万円)、マトリックス-LEDヘッドライト(1,125ユーロ=約13万5千円から)、シャシーコントロールDCC(1,045ユーロ=約12万5千円)、または不可解なことに(それは安全性についてだから、まったくVWらしくない)、後部座席用サイドエアバッグ(530ユーロ=約6万3千円)と距離制御クルーズコントロールACCのようないくつかのドライブアシストシステム、ストップ&ゴーまたはブラインドスポット警告システム「サイドアシスト」(650ユーロ=約7万8千円からのパッケージ)などがベーシックモデルには装着することができない。
したがって、これらのエキストラのいずれかを利用したい場合は、ベーシックなモデルではなく、中級のモデル、少なくとも24,945ユーロ(約299万円)のモデルを選択する必要があり、90馬力の最小ガソリンエンジンバージョンを選ぶこともここでできなくなってしまう。
この他、中級モデルでは基本的な車載装備に加えて、フロントとリアのパーキングビープ音システム、10色のアンビエント照明(これは、はっきり言っていらないが)、フロントのセンターアームレスト、スマートフォンのワイヤレス充電機能、フロントの高さ調整可能なコンフォートシート、16インチのアルミホイールなどが用意されている。
このグレードではエンジンは3気筒でも、90馬力から110馬力に引き上げられている。ベーシックモデルとは異なり、4気筒ガソリンエンジンはすべて130馬力、マイルドハイブリッドシステムを搭載した150馬力、ディーゼルエンジンはいずれも115馬力と150馬力が用意されている。
マイルドハイブリッドなしのガソリンエンジン並びに115馬力の小型ディーゼルは6速マニュアルトランスミッションのみで、1.5リッターeTSIと150馬力の大型ディーゼルには、DSGデュアルクラッチトランスミッションが標準で搭載されている。
大型ディーゼルは経済的で優れている
さて私たちのお勧めのモデルだが、あまり長距離を頻繁に運転しない人は、130馬力のガソリンエンジン(26,460ユーロ=約317万円から)で十分なはずだ。走行性能は十分で、比較的太いトルク(200Nm@1400rpm)のおかげで、パワー不足を感じることもない。リッターあたり約21kmと燃費的にも優れている。これは数年前まではディーゼルだけが達し得た値だ。さらに驚くことに、150馬力の大きな1.5 eTSIとDSGの組み合わせでも、この数値は可能だとされる。通常は、マイルドハイブリッドモデルの領域の数値だ。
ディーゼルモデルは、その一方で、高いパフォーマンスレベルに価値がある。150 馬力エンジンとDSGのグッドコンビネーションで高級感を味わうことができる。高速道路上でトップバージョンのTDIは223km/hに達するが、日常生活では、リッターあたり27km以上の優れた燃費だという。しかし、このモデルを手に入れるには、32,790ユーロ(約393万円)以上が必要となる。
eTSIによりDSGは当初の弱点を克服している
Eモジュールは、驚くほど頻繁に燃焼エンジンを一時停止状態にする(例えば、信号機までの間コースティングする時など)。TSIとDSGの組み合わせの弱点として知られている始動の弱さを巧みに滑らかにするだけでなく、加速時のトルクとしても寄与する。まるで実際の排気量よりも多くの排気量を備えているかのようだ。
その始動の弱さに関して言うならば、VWはゴルフ8で、ちょっとしたトリックを考え出した。ゴルフは前の車の始動を認識すると、ブレーキから足を離す数ミリ秒前にエンジンを始動させるになっているのだ。
最高の装備を備えた「Style」の話題に移ろう。それは大変シックなバージョンだ。価格は最低28,735ユーロ(約344万円)からとなっているが、17インチアルミホイール、アレルゲンフィルター付き3ゾーン自動クライメートコントロールシステム、そして(非常にお勧めの)電動調節可能なドライバーズシートを含むエルゴアクティブ(ergoActive)シートとACC自動距離制御と多機能カメラを含む「トラベルアシスト」と「レーンアシスト」アシスタントパッケージが装備されている。
たくさんの贅沢、たくさんのお金
大きなディーゼルは、すでに35,065ユーロ(約420万円)の費用がかかるが、それは50,050ユーロ(約600万円)にまでアップグレードすることができる(すべてのエキストラを含む)。
これはゴルフIの時代には280あたりの、Sクラス(!)が購入できた金額だ。
結論:
VWゴルフは、コンパクトカーのベンチマークだ。それはいつの時代も変わらない。
今こうしている間にも、世界中のメーカーがゴルフを購入し、綿密に測ったり、エンジニアがかわるがわるテストコースで乗り回したり、分解したり、切り刻んだりして徹底的にライバルを調査研究していることだろう。
ゴルフというのは、もはやそういう、世界の規範となるべき車になったし、今でも自動車のメートル原器といえる。だが、それはどのエンジンの、どの装備の、どのタイヤを履いたモデルをメートル原器と考えたらよいのか、という命題に突き当たるし、ユーザーにとっても問題となる。
もちろん究極のモデルを購入したいのであればゴルフRがあるし、昔のイメージを頭に描きながら(今や中間グレードではあるが)GTIを選んでも決して後悔はしない。完成度は間違いなく高いし、速く、快適であることもいうまでもない。だが、それらはクルマ好きの選ぶチョイスであって、街の普通の人が選ぶゴルフではないだろう。
あまり車に詳しくない、普通の人が普通に選ぶゴルフは何を買ったらいいのか?これはなんとも難しい問題だ。
お金があれば上級モデルを購入すればよいし、満を持して投入されたゴルフ7のディーゼルエンジンと違い、今度のディーゼルエンジンは本当に素晴らしいらしい。だから最上級のゴルフを買えばすべて解決かというと、それは今や600万円という価格であり、普通のゴルフの2台分もする事実がそこにある。一般の生活をする人に600万円のゴルフ…。余計なおせっかいかもしれないが、それだけのお金をゴルフに費やそうとする人がいたら、私は羽交い絞めにしてでも止めるかもしれない。美味しいものや、旅行にも、もう少し安い金額でゴルフ買って行ってみたらどうかとアドバイスするかもしれない。
では昔のヨーロッパ車のように、一番ベーシックなモデルが一番お得、と太鼓判で推薦できるかというと、これもちょっと悩ましい。昔のフォルクスワーゲンの哲学とは違うとしか言えないが、最廉価グレードには圧倒的に効果的な安全装備のいくつかがオプションでも用意されていないし、ベーシックなゴルフに、ソコソコ快適な装備を付けていくと、一つ上のモデルとほぼ同じ金額になってしまう。であるならば、一つ上のグレードを購入した方が結局お得なのではないかという考えが頭をよぎる。
まあ車を購入する時などというのは、常にこんな感じで展開するのだが、ゴルフの場合はエンジンバリエーションも、グレードも複雑に展開しているから一層悩ましい。もちろん日本においては、どのゴルフ8が正式に発売されるのか、それから考えれば良いのだが、それでも複数のバリエーションからどれを選ぶべきか必ず頭を悩ますことになるだろう。
老婆心ながら、ゴルフ7の場合は、圧倒的に1.2が(とびぬけて)優れた車であった、という評価が確立している。なぜとびぬけて1.2が優れていたのか、それは憶測の域を過ぎないが、メーカーであるVWが一番力を入れて開発し、一番熟成に力を入れ、一番自分たち(つまりメーカーの開発者が)が買いたかった、お得なゴルフが1,2だったのではないか。いくら大メーカーであっても、これだけの数のエンジンとサスペンションと駆動システムと、複数のサイズのタイヤとの組み合わせをすべて丹念にテストし熟成することは、どう考えても不可能であろう。
だが、そんな中でも、これは(!)というグレードが必ず存在することも事実である。そしてそれこそが、一番お得で、一番購入するべき車種なのである。ゴルフ8の場合、それはどのモデルなのだろうか。日本に導入されたら、そのモデルを探し当ててみたいと考えている。
Text: Stefan Voswinkel
加筆:大林晃平
Photo: Christoph Börries / AUTO BILD, Volkswagen AG
【フォトギャラリーと結論】