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ベストスポーツカーズオブ2019!

2020年5月26日

毎年恒例、AUTO BILD “Best Sportscar of the Year”

2019年にデビューしたベストなもっとも魅力的なスポーツカー12台を一挙に集結、サーキットで再テスト

ベストオブスポーツカー in 2019

2019年は私たちの心をおどらせた。先行きの見渡せない世の中だが、ハイスピードスポーツカーワールドは今でもカラフルでエキサイティングな時をわれわれにもたらしてくれる。我々は2019年を彩った素敵なスポーツカー12台をザクセンリンク(独ザクセン州ケムニッツ近郊にあるサーキット)に持ち込んで再び存分に楽しんだ。
以下、写真とともにお楽しみください。

トップバッターはホットハッチクラス代表モデル、ルノー メガーヌR.S.トロフィーRとメルセデスAMG A45 4MATIC+の2台だ。

500台限定のファクトリーチューニングモデル、ルノー メガーヌR.S.トロフィーRはベースモデルのメガーヌR.S.からはかけ離れたサーキット用アスリートに仕上がっている。
小型で軽量、それが常に不変のスポーツカーを構築する正しい方法だ。その意味において、トロフィーRには特に感銘を受けた。ルノーは、多くのカーボンを使用して(コンパクトクラスでありながらカーボンセラミックブレーキも導入している)、車重はベースとなったメガーヌR. S.よりも137キロ軽い、1307キロを達成している。
その結果、トロフィーRは「ザクセンリンクで最速のシリーズ前輪駆動」のタイトルを与えられた。
ブレーキング、正確でレスポンスの素晴らしいステアリング、トロフィーRは別の惑星から来たマシンのような走りを見せる。フロントアクスルグリップは常に強く、独創的なオーリンズ製シャシーはフランス車を非常に安定させ、見事なコーナリングを披露する。要約するなら、これ以上のナンバープレート付きツーリングカーを手に入れることは不可能だということだ。
しかし、大量のカーボンを使用した非常に軽量なモデルには悩ましい問題もある。85,740ユーロ(約1071万円)という値段だ。

メルセデスAMG A45 Sは、コンパクトクラスに新しい標準を設定した。そのモットーである「大いに役立つ」を鑑みるなら、A45 Sはルノー メガーヌR.S.トロフィーRの正反対に位置する。500Nmおよび421馬力(わずか2リッターのエンジン)、8速デュアルクラッチトランスミッション、ドリフトモード付きの俊敏な全輪駆動、最先端のマルチメディアシステム。これにより、乾燥重量は1639kgとなる。しかしザクセンリンクでのラップタイムでも、1分35秒と、メガーヌR.S.トロフィーRのラップタイムよりもほぼ2秒速い。特にその4気筒エンジンは間違いなく名器のレベルで称賛に値する。

トヨタGRスープラは潜在的に我々の体内に潜む子供を目覚めさるようなモデルであるなら、ポルシェ911カレラSはドライビングダイナミクスにおける上級生のような存在といえるだろう。

スープラのステアリングは、必ずしも非常に正確だとはいいがたい。それはテクノロジードナーであるBMW Z4の初期モデルを思い起こさせる。
しかし、非常にパワフルな6気筒エンジンが500Nmという豊かなトルクをリアアクスルに送ると同時に、正確かつ非常に迅速に正しいドリフト角度を維持しながら、コーナリングすることは可能だ。
ドライビングする喜びは十分に伝わってくる。

スープラで何度も「東京ドリフト」を繰り返した後、911はそんな楽しみをまったく理解もせず、その巨大なグリップ力によって瞬間的にドライバーに自信を与える。そして誰もがその性能に納得し、911が世界最高のスポーツドライビングマシンであることを思い出す。
コーナーごとにライバルとの距離を縮め、911カレラSはストレート直前のコーナーを光速で駆け抜けていく。

日常の風景ではあまり見かけない取り合わせだ。ランボルギーニ ウルスとBMW M8コンペティションは、少なくともこの写真上では、編隊を組んで仲良く走っている。

もっとも大きなサイズのランボルギーニは、トルクベクタリング、リアアクスルステアリング、エアサスペンション、アダプティブダンピング、アクティブスタビライザーとセラミックブレーキを使用したロール補正など、可変全輪駆動といった技術的サポートで、高い走行性を発揮する。
その結果、この2.3トンのSUVは、0-100km/h加速をたったの3.2秒、そしてこのザクセンリンクを1分37秒以下でラップしてみせる。
ウルスは間違いなく2019年スポーツカーのハイライトの1台だ。

車重1879キロではBMWも軽量とは言い難いものの、オールホイールステアリングシステムを外したりして減量に努めている。他にもいろいろと軽減した結果、M8コンペティションはベースとなったM850iより90キロ軽量化している。
我々にとって新しい体験となったのは、BMWにエンジン、シャシー、ステアリング、そしてパワーディストリビューションのセットアップメニューが備わっていることだ。加えて、ブレーキもコンフォートかスポーツモードを選択できるようになっている。もっともブレーキ性能自体は変わらず、レスポンスの感じが変わるだけだが。

ポルシェのテストドライバーでなくても、あるいはアウディのレーサーでなくても、この2台は運転しようと思えばできる。むろんレーサー免許も要らない。
だが忠告はしておく。この2台は、速くて、速くて、速い。ポルシェ911 GT2 RS MR(マンタイレーシング)はニュルの北コースとここザクセンリンクで絶対的なナンバーワンマシンだし、ABTアウディRS4+は最も速いステーションワゴンだ。

ポルシェが大株主である「マンタイ・レーシング」がポルシェ911 GT2 RSを改造して作り上げたポルシェ911 GT2 RS MRは、1周約20.8kmのニュルブルクリンクの北コース(ノルトシュライフェ=緑の地獄)を6分40.3秒という公道車最速のラップタイムを樹立したモデルだ。ベースとなった911 GT2 RSより7秒も速い記録だ。
そしてここザクセンリンクでは? まるでレールの上を走っているかのようだった。ほほえみを浮かべてコーナーをクリアしていく。ラップタイム? 新記録の1分25秒30だ!

そしてステーションワゴンでも2019年にはサプライズがあった。ABT RS4+だ。
VWとアウディモデルのカスタムスペシャリスト、ABTがアウディRS4アバントをチューニングして作り上げたモデルで、2.9リッターV6ツインターボエンジンは専用ECUとハイパフォーマンスエキゾーストシステムによって530馬力にまでパワーがアップ(ノーマル比+80馬力)。さらには出力だけではなくスポーツスタビライザー、車高調整式サスペンション(KW製)によってコーナリング性能も向上させている。
ザクセンリンクでのラップタイム? 生産モデルのRS4の1分37秒に対し、ABT RS4+は1分33秒を切った。

レーストラックでの優れたパフォーマンス以外、ポルシェ718ケイマンGT4とメルセデスAMG GT R Pro との間に共通点はほとんどない。
ツゥッフェンハウゼンで作られたポルシェは6気筒ボクサーエンジンにマニュアルギアボックスを備える。
一方、ツゥッフェンハウゼンから北東へ20キロちょっとのところに在るアッファルターバッハのAMG工場で作られたGT R Proは4リッターV8テインターボに7速デュアルクラッチトランスミッションを備え持つ。

履いているミシュランカップ2が温まるやいなや、Proは真価を発揮し始める。585馬力エンジンはリアアクスルに猛烈なパワーを送る。
AMG GT R Proには非常に良好に、適切に機能するトラクションコントロールが装着されていて、運転経験の少ないドライバーでも十分に楽しめるクルマだが、一方で繊細なハンドリングとアクセルワークでバランスをとることも要求される。

ケイマンは、AMGとはまったく異なる運転の楽しみを提供する。
4リッターエンジンは、太いパンチで突然パワーを放出するのではなく、快適に、滑らかに駆け上がり、6000rpmを超えた段階で真価を発揮する。そしてそこから激しく、全身を震わせる水平対向の雄叫びを上げ始める。
加えて、正確なステアリングとコーナリング時の見事な挙動、そしてマニュアルコントロールで存分に楽しめる。
テスターの一人はこのクルマをスポーツカーオブザイヤーに推した。

2台はどちらも同時期、2019年の春にデビューした。両メーカーはお互いから35キロしか離れていないところに本拠地を構える。
栄光のV12モデル、812とアヴェンタドールの下に位置する小型でスポーティなモデルの新たな開発は、フェラーリとランボルギーニで驚くほど並行して行われていた。
しかし、フェラーリは新型にF8トリブートに名前を付けることで、先代モデルである488を明確に区別している反面、ランボルギーニは現行ウラカンに「EVO」を追加しただけだ。

EVOのエンジンは最強のウラカン ペルフォルマンテのものを採用し、そこから生み出される640馬力は全輪に効率よく供給され、全輪を駆動する。EVOのV10ユニットは並外れたサウンドと珍しい外観を有する。

488ピスタ同様、F8トリブートは驚異の720馬力を使って、後輪のみを駆動する。

この2台に共通しているのは、彼らに備わったオーラだ。それは美しいフォルムとたくさんのディテールを持つ上品なイタリアならではの外観であり、独特のエンジン音、特にF8の場合はますますパワーアップするV8ツインターボが大きな違いをもたらす。
つまり、毎年恒例のこの行事でも、この2台には所有欲あるいは購入欲を禁じ得ないということだ。

ランボルギーニはより大きなサウンドを発し、フェラーリは怒りを抑えたサウンドを奏でる。
そして怒涛の加速力を発揮する。2台とも0-100km/h加速は3秒以下、0-200km/h加速は10秒以下だ。
しかも、彼らは非常に快適で、パフォーマンスという点から観ても、驚くほど簡単に運転できる。
このことは特に、成熟した非常にニュートラルな全輪駆動を備えたウラカンEVOに当てはまる。
しかし、力強いF8トリブートも、高回転の喜び(最大8000回転!)というすべての人を魅了する完璧な説得を有する。

Photo: Ronald Sassen / AUTO BILD