アウトー! 納車後1ヵ月でステアリングがはずれる… テスラ モデル3の悲劇
2020年5月21日
昔の○○○○車か、君は? 信じられないトラブルというか信じがたい欠陥
こういう欠陥、久しく見聞きしていない。非常にあぶないところだった。運転中にステアリングホイールが外れたのだ! 21世紀に! イギリス人オーナーがTwitterに写真とともにレポートをアップしている。そしてこのEVはほぼ新車だ。
英国のブラックプールにいるテスラ モデル3のオーナーは、不愉快な驚きを経験した。買い物の後、私道に乗りいれようとすると、運転中に突然、パカッとハンドルが外れたのだった。
オーナーはテスラのボス、Twitter上で、イーロン マスク氏にあてて、「今日、ハンドルが外れた! 残りの車もバラバラになるのではないかと心配だ!」というメッセージを送った。そして、「世界で最も安全な車であるはずのテスラに、起きうるはずのない出来事では?!」とその衝撃を投稿した。
モデル3は1か月前に納車されたばかりのものだった…
車は約1か月前に納車されたばかりの新品同様であるので、原因が疲弊による理由である可能性は低い(というかそもそも、あってはならない)。1ヶ月前にモデル3を受け取って以降、オーナーは過度に運転したことすらなかった。走行距離もたったの550キロに過ぎない。1回か2回の充電で走ることのできる距離である。
ステアリングホイールがステアリングコラムから外れた理由はまだ不明だ。Twitterユーザーは、ステアリングホイールとコラムを接続するナットが製造プロセス中に忘れられていたのではと疑っている。
もしそうであるとしたら、最新テクノロジーを謳うシリコンバレーのIT自動車メーカーとして、あるまじき所業だ。
リコールに発展するおそれがある。
実は今までも、「テスラは他の車に比べて安全基準が低いのではないか」とは常々言われ続けてきたことではある。他のメーカーであれば絶対に出すことのできない基準の自動車、だからこそ世界で最初の自動運転も、大容量のバッテリーによる長い航続距離も、驚くほどの加速性能も達成し、他のメーカーに先んじて世の中に売り出すことができたという声が業界内にはあることも事実だ。
もちろんテスラのエンジニアの中には今まで他のメーカーで活躍していた、大変有能で才能のあるエンジニアも多く(彼らはかなりの金額でヘッドハンティングされたと伝えられている)、素人がちょいちょいと作ったクルマであると断言することも間違いだ。
だが言うまでもなくクルマとは他の自動車と混走して公道を走るものであり、人の命を預かるものだ。その中で走行することの基準が著しく低く、信頼性が十分でないクルマが、ほかのクルマよりも圧倒的に速い加速性能をもって爆走していたとしたら、想像するだに恐ろしい。
テスラをそのものの存在を否定する気はないし、テスラならではの魅力や革新的な考え方を認めないわけではない。だが、他のデジタル機器と違い、なんらかのトラブルやちょっとしたコンピューターバクが人の命を一瞬にして奪う可能性があることだけは忘れてはならない。それこそがPCともタブレットとも異なる点だ。車とはそういうものなのだ。
もう忘れられつつあるのかもしれないが、自動運転で衝突してしまった死亡事故や、バッテリーが原因とされる発火事故をテスラはきちんと説明したことはあったのだろうか? 少なくとも私の記憶上ではそれらの問題をイーロン マスクが謝罪しながら十分に説明したことなどなかったように思う。
まだまだこれからもテスラ製の不気味な姿のトラックや、より一層パワーのあるEVなどが世の中の公道を走るようになるだろう。どうかそれまでに十分な走行テストを行い、安全基準を考え直してほしい。
そういえば公道テストのスパイ写真とか、ニュルブルクリンクでのテスト風景など、見かけたことがないように思う。そもそもテスラはどこのテストコースを使って試乗テストをおこなっているのだろうか??
世界一安全なクルマを標榜するテスラよ、イーロン マスクよ、この件での公式なコメントや対応は? どうかネット上だけで一方的に配信コメントするだけではなく、実際に応えて欲しい。車はネット上だけで走るのではないのだから。
Text: Katherina Berndt
加筆:大林晃平