アウディはA8を戦車化! スペシャルアウディA8 ロシア向け特殊装備バージョン

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アウディA8 Lセキュリティ(2020年): データ、重量、価格、ロシア

アウディはA8を戦車化! アウディは現在、ロシアではS8エンジンを搭載した装甲車バージョンのA8ロングホイールベースを(正式モデルとして)提供している。当然、このサルーンにはかなりのコストがかかる。全情報!

ドア部分の窓の処理(黒い縁取り)が異様に太いことに注目。防弾のための処理である。

このアウディの装甲バージョンA8は、現時点ではロシアでのみ利用可能なモデルだ。
技術的には、ロングバージョンとしてのみ提供されている防弾セダンA8の助手席セルは、防弾クラスVR9に対応し、ガラス面は抵抗クラス10に適合している。
その数字の意味とは?
10ヤード離れた場所からアサルトライフルを撃っても、乗客を傷つけることはできないということだ。
アウディは、この車がロシア保安当局によってテストされ、認証されたと宣伝している。
彼らはセダンをスナイパー、手榴弾、速射砲などの兵器を使ってテストしたとされる。
さすがは元KGB、プーチンの取り仕切っている国ではないか。

A8のほぼ2倍の重さ

A8 Lセキュリティの車重は3,875キロで、1,955キロのレギュラーモデルの約2倍の重さに相当する。もちろん重いのは防弾のボディフロア、そしてガラスだと思われる。
膨大な重量の増加のために、アクスル、コントロールアーム、ダンパー、ブレーキは再開発され、新開発されなければならなかったものもあった。
余分な重量の増加は、装甲用だけでなく、車に搭載されている追加の保護装置によるものでもある。
これには消火システムが含まれている。消火システムのノズルは、アンダーボディ、ホイールアーチ、タンク、ボンネット下に設置されている。
インターホンシステム用の電子機器と追加のバッテリーは、トランク内の装甲ボックス内に収納されている。

インテリアには、もちろん2列目にセパレートのシートが採用されている。この写真からは一見普通のA8に見えるが…。

三輪でも走行可能

もちろん、特別な技術も組み込まれている。
緊急走行システムのおかげで、A8はたとえタイヤの1つがパンクしても、時速80kmで、さらに80km走行可能となっている。
ドアが開けられなくなった場合には、ヒンジを爆発させて脱出できる、火工技術システムが備わっている。
さらに、別途、新鮮な空気を取り込めるシステムも装着されている。環境が汚染物質(ガス攻撃などに対応して)で汚染されると、エアフラップが自動的に閉じる。それでも一定時間は新鮮な空気を供給してくれるようにできている。

防弾A8用にS8エンジン

装甲型セダンは「A8」として販売されているが、スポーティな「S8」のエンジンがボンネットの下には搭載されている。ツインターボV8は571馬力、800Nmのパワーを発揮する。
しかし、その4トン近い車重のせいで、A8 Lセキュリティは100km/hまでの加速タイムが、S8よりも2.5秒遅い6.3秒かかる。だが、たったの6.3秒ともいえる。
また、最高速度も電子制御で210km/hに規制されている。これまた4トンのクルマで時速210kmだ。

リヤの窓にも太い縁が…(防弾のため)。6ライトの3つ目はガラスではなく、はめ殺しの模様。ルーフの青いライトは「エマジェシー」を外部に教えるためのライトだろうか。

セキュリティの代償

ノーマルバージョンのA8を装甲用にアップグレードするには、400時間の追加作業が必要とされる。納車までに3~6ヶ月かかるのも頷ける。
価格?
アウディA8 Lセキュリティの値段は約70万ユーロ(約8,400万円)だ。
たかがマスクを2枚だけ配るだけで数百億円かかることを考えれば(さらにその不具合を再検査するだけで8億円!!)、人の命を守る装備満載のA8が1億円しないのは、意外と安いかもしれない。
それにしてもわが国ではここまでの装備の車が(まだ)必要ではないことは、ちょっと誇れることかもしれない。もちろんここまでの装備の防弾ではない車輛はすでに複数わが国にも存在していることは言うまでもない。
トヨタ センチュリーなども開発当初から、「そういう装備」を想定してシャシーもボディも設計されていると聞くし、わが国の首脳が使用している車も防弾加工であると言われている。だがカタログモデルまで用意されるような治安ではないし、これからもこういった車が用意されなくとも大丈夫なような日本であって欲しい。

なお、アウディだけではなく、BMW(7シリーズ)も、メルセデスSクラス(マイバッハ)にも同様の仕様の車が存在しているが、詳細は明らかにされていないし、おそらく一台一台のスペックは異なるはずである。全部同じ仕様であったならば欠点を見つけられやすく、そこを急所として狙い撃ちにされてしまうのは必至だからである。
ともあれ、こういうクルマはさすがに自分で欲しいと思わないし、こういうクルマに乗らなくてすむような、平凡な一般人で本当に良かったと心底思う。

Text: Katharina Berndt
加筆:大林晃平