シルバーアローの雷鳴 Part2
2020年5月19日
グッドウッド・リバイバル2012 – 18.09.2012
1939年以来、アスファルト上に雷やうねりは出現しなかった。ついにこの年、戦前のドイツのシルバーアローレーシングカー10台が、再びイギリスで雷鳴を放ちながら、センセーショナルなショーを披露したのだった。
歴史的遺産
今日まで、アウディがその歴史的遺産保護のためにどれほど苦労しなければならなかったかは、想像に絶する。第二次世界大戦後、ソビエト連邦はザクセンで発見されたすべてのアウトウニオンシルバーアローを没収し、それらを東欧へ持ち去った。その数十年後、トレジャーハンターたちの献身的な努力によって、ウクライナでばらばらとなった個体を見つけ確保することに成功した。部品を再加工するなど苦心惨憺の末、ようやくレーシングカーを再生してみせた。その他、ゼロから作り直したものもあった。アウディとは対照的に、メルセデスベンツは幸運だった。所有していたシルバーアローは無傷で戦争を生き延びた。そしてそれらは時期が来るまで南ドイツの農場に隠されていたのだった。
シルバーアローの中には、700Nmを超えるトルク、500hpを超える出力を発揮するものがあり、300km/hをはるかに超える速度でレースを行うことも可能だ。むろん、ここグッドウッドでは、著名なパイロットたちは、この貴重な歴史的財産に対してダメージとなるような、そんな無謀なことは試みない。したがって、これまでのような劇的なレースシーンやホイール対ホイールのバトルはおこなわれない。その代わり、シルバーアローの爆音が人々の想像を豊かにしてくれる。
シルバーアローだけがすべてではない。言うまでもなく、グッドウッドには多種多様なマシンが集まってくる。ACコブラやフェラーリ250GTOなどのクラシックGTレーシングカーは、今まさにスタートを切ろうとしている。(Photo: Werk)
グッドウッドの典型的な1シーン。このセントメアリートロフィーは、ミニクーパーのようなスモールアニマルが、ヘビーミサイルのフォード・ギャラクシーと戦うレースだ。(Photo: Werk)
トラディショナルなモーターサイクルが吠える。(Photo: Werk)
壮観なフライトショーも毎年おこなわれる。(Photo: Werk)
人々の乗ってきたクラシックを見に駐車場を訪れるのも楽しみだ。(Photo: dpa)
そうそう、メルセデスレーシングトランスポーター。第三帝国時代のナンバープレートまで、オリジナルに忠実にリビルドされた。当時、人目を惹く青いトラックは、後ろに積まれた貴重なレーシングマシンとほぼ同じくらい人気があった。今日でも充分スタイリッシュかつ非常にファッショナブルだ。(Photo: Werk)
1940年代当時のファッションを我々は白黒写真で見て知っているだけだ。グッドウッドのフレッシュでトレンディな女性たちは、とても素敵で爽やかに映える。(Photo: Werk)
そして1960年代はよりクリアに、当時そのままに表現される。クール!(Photo: Werk)
多彩で魅力的なプログラムとその主役たち
サーキットの外でも多くの楽しい催しがおこなわれた。土曜日にはイギリスのオークションハウス大手、ボンハム(Bonhams)によるクラシックカーオークションがおこなわれたし、クラシックカーの展示もあった。ほかにも航空ショー、ビンテージスーパーマーケット、歴史フェアが開催された。そしてなによりも我々を楽しませてくれたのは、ノスタルジックな衣装を身にまとった参加者や多くのショーガールたちだ。しかし、グッドウッド・リバイバル2012の主役は、明らかに再結集したシルバーアローたちだった。
グッドウッドは古き良き昔を蘇らせる。これほど多くの伝説的なレーシングカーをトラックに引き付けるイベントはほかにはほとんどない。来年がまた楽しみだ!(Photo: Thomas Wirth)
Text: Thomas Wirth