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ドイツの充電事情を垣間見る アウディがベルリンに急速充電ができる「Audi charging hub(アウディ チャージング ハブ)」を開設

2023年4月9日

アウディは、ニュルンベルクとチューリッヒに続く、3番目のAudi charging hub(アウディ チャージング ハブ)をベルリンに開設する。再利用バッテリーが蓄電装置として機能するというのが特徴で、都市部など充電ステーションの設置が困難な場所でも設置が可能となる。

Audi charging hubは、解体されたアウディのテスト車両の使用済みバッテリーを再利用したもので、都市部など、充電ステーションの設置が困難な場所でも、持続可能な方法で最大320kWの出力を備えた4つの急速充電(HPC)ポイントを設置することができる。

Audi charging hubは、既存の電力網を有効に活用することができる。

充電の待ち時間に、ショッピングや食事を楽しむことができる

蓄電装置のない急速充電ステーションを開設する場合、必要な変圧器を設置するまでに長い時間がかかる場合があるが、Audi charging hubは、既存の電力網を有効に活用することができる。協力パートナーとなるドイツのスーパーマーケットFrischeparadies(フリッシュパラディース)は、再利用バッテリーを搭載したこの充電ステーションで、Frischeparadiesの消費電力が少ないときにのみ蓄電用のバッテリーを充電する。将来的には、FrischeparadiesとAudi charging hubは、充電ニーズと負荷に基づき、共用の送電線から電力が供給する予定としている。

ベルリンのAudi charging hubは、ショッピングモールやレストランが併設されたスーパーマーケットFrischeparadies(フリッシュパラディース)に隣接している。

急速充電ステーションの数が不足している

Audi charging hubエネルギーシステム統合およびベルリン導入統括マネージャー エリアス ハンマーとベルリン在住のAudi Q4 e-tronユーザーであるイェルク ハウケにアウディが3者インタビューをおこなった。

イェルク ハウケ(左)とエリアス ハンマー。

Q:ベルリンに設置したAudi charging hubに、コンパクトバージョンを選択した理由を教えてください。

エリアス ハンマー(以下、ハンマー):プレンツラウアーベルクの拠点は、住宅が密集する「east-west B1 highway」の近くに位置しています。ここは、Audi charging hubのコンパクトバージョンを設置するには理想的な場所です。多くのドライバーは、自宅に充電設備を持っていないため、都市の中心部において便利で信頼性の高い急速充電ステーションを利用したいと思っています。一般的に都市部では、通勤者が帰宅する際に、充電する需要が高いと私たちは考えています。蓄電装置を使用することで、各充電ポイントでは、320kWの安定した出力で車両を充電することができます。特に、プレンツラウアーベルクの拠点は、頻繁に利用されると見込んでいます。今回のケースに代表されるように、私たちは、お客様が日常生活の中で、30~40分で充電することが可能なAudi charging hubを設置しています。この目的のために社内のデータを分析、現地の需要を調査し、適切な場所に設置することを計画しています。2つの電源キューブに4つのカバー付き充電ポイントを備えたコンパクトバージョンは、協力パートナーであるFrischeparadiesに隣接する場所に設置されています。

Q:e-tronドライバーとして、Audi charging hubをどのように使用しますか?

イェルク ハウケ(以下、ハウケ):私はしばらくの間、自分のマンションの地下の駐車場に、充電ステーションを設置することを強く求めてきましたが、それには多くの困難が伴います。マンションから数分のところに公共充電ステーションがあるため、時々それを利用しています。Audi charging hubは、そこよりも間違いなく便利で、価格も安いことが分かりました。少し前にニュルンベルクにAudi charging hubが開設されたと聞いたときは、羨ましいと思っていました。公共充電ステーションは、必要なときにいつでも無料で利用できるわけではありません。Audi charging hubは、ベルリンの充電インフラに追加するのには理想的な施設だと思います。

Q:アウディは、潜在的なお客様の急増にどのように備えていますか?

ハンマー:アウディのドライバーは、予約システムの恩恵を得ることができるでしょう。また理論的には、十分な需要があれば、別の電源キューブを比較的簡単に追加することも可能です。そして、モジュラーコンセプトにより、現在4つの充電ポイントを、すぐに6つに増やすことができます。これは、より高い需要が発生した場合に、その場で対応できることを意味します。

ハウケ:Audi Q4 e-tronのドライバーとして、これを聞いて嬉しく思います。将来的には、myAudiアプリで充電スポットを予約したり、無料の充電スポットがあるかどうかを確認したりできるようになります。もう1つの実用的な機能は、新しいAudi charging service(アウディ チャージング サービス)です。これにより、ヨーロッパのほぼ全域で、充電が便利で信頼できるものになります。

Q:ベルリンのAudi charging hubのパートナーを教えてください。

ハンマー:ベルリンでは、魅力的なショッピングの機会やグルメレストランを展開するFrischeparadiesと協力しています。高い品質基準を持つFrischeparadiesは、アウディにとって最適なパートナーです。

Q:お客様は、充電中の時間をどのように使いますか?

ハウケ:Audi charging hubは、私の勤務先のすぐ近くにあります。私は退職していますが、研修生のスーパーバイザーをしており、研修生とのミーティングの間に車を充電することができます。コーヒーを飲んだり、買い物をしたり、ちょっとした休憩を取ることもできると思います。Audi charging hubはレクリエーションの場ではありませんが、充電中に様々な楽しみが提供されます。充電ステーションの周りにはビストロがあり、ウィンドウショッピングを楽しむこともできます。

Q:ニュルンベルクとチューリッヒのAudi charging hubと比較して、どのような技術的な違いがありますか?

ハンマー:ベルリンでは、Audi charging hubは二次利用者としてFrischeparadiesから電力の供給を受けています。それが主な違いです。アウディが独自に開発した高度なダイナミック ロード コントロール(動的負荷管理システム)は、Frischeparadiesの電力消費量を常に測定しています。そして、電力網に対するパートナーのエネルギー需要が低い場合にのみ、Audi charging hubのバッテリーを充電します。そのため、ベルリンのサイトでは独自の電源を用意して接続する必要がありません。この電力は既存のグリーンエネルギーで、Audi charging hubの電力需要をカバーできることも意味しています。このアプローチにより、既存の電力網を最適に利用することが可能になります。つまり車両は、Audi charging hubに設置されている1.05MWhの容量を備えたバッテリー蓄電システムから安定的に電力が供給されます。

解体されたアウディのテスト車両の使用済みバッテリーを再利用している。

ハウケ:バッテリー蓄電システムはどのように構成されていますか?

ハンマー:Audi charging hubのバッテリー蓄電システムは、Audi e-tron開発テスト車両の使用済みバッテリーを再利用しています。この使用済みのバッテリーでも、大容量の電力を蓄えることができるため、それらを有効に活用したいと思っています。Audi charging hubは、使用済みバッテリーに再利用の機会を提供します。ニュルンベグのハブには、それぞれ198のモジュールを搭載した3つの電源キューブと、330のモジュールを搭載した蓄電キューブが設置されています。これらを合計すると924のモジュールになります。ベルリンには、1.05MWhの容量を備えた合計396のモジュールを使用しています。これは、Audi Q4 e-tronの14台分に相当します。

Q:e-tronの顧客は、Audi charging hubを定期的に使用しますか?

ハウケ:そう思います。なにより、Audi charging serviceの1kWhあたり0.35ユーロという価格設定は非常に魅力的です。ベルリンの他の急速充電ステーションの価格は平均してほぼ2倍です。アウディのコンセプトにより、日常生活に充電を簡単に組み込むことができます。予約システムも利用できるため、普段は待ち時間が多い充電を有効に活用することができます。

Q:今回はベルリンに開設しましたが、次のAudi charging hubは、どこに設置しますか?

ハンマー:2023年5月末にザルツブルクに別のコンパクトなAudi charging hubを開設し、続いてミュンヘンにも開設する予定です。最初の段階では、ラウンジのないバージョンを展開し、パートナー企業と提携してサービス施設を提供し、さらにノウハウを蓄積して、より多くのデータを収集する予定です。コンパクトバージョンで可能な限り最高のサービスを提供できるように、お客様の利用状況を理解したいと考えています。2024年からは、様々なサイズのラウンジを備えたバージョンも提供します。このため、新たなパートナー企業と適切な設置場所を探しています。

Q:e-tronの顧客は、充電に関して一般的にどのようなことを望みますか?
ハウケ:私は1991年からアウディを所有しており、現在のAudi Q4 e-tronは12台目のアウディで、初めての電気自動車でもあります。一般的には、公共充電ステーションの数が増えることを望みます。その面で、やるべきことはまだ数多く残っていると思います。アウディは、ブランドロイヤルティの構築にも役立つ都市型充電コンセプトで、その道を切り開いています。

ニュルンベルクとチューリッヒ拠点で肯定的な反応

既存のニュルンベルクニュルンベルクでは、2021年12月以降、1階に6つの充電ポイント、2階にラウンジを備えた大型のAudi charging hubを運用しており、このサイトにおける利用者のリピート率は70%で、1日あたり最大62回の充電が行われた。初めてAudi charging hubが設置されたこの場所では、1日平均36回の充電が行われているという。利用者の約半数は、アウディの電動モデルでこの場所を訪れており、Audi charging hubを日常生活の一部として利用しているとアウディは認識している。2023年1月末までに、ニュルンベルク拠点を利用した人は、既に1万人を超えていて、チューリッヒでも、同様に高い需要が見られているようだ。これらのことは「自宅での充電ではなく、都市部での充電」というアウディの、Audi charging hubのコンセプトが正しいものであることを裏付けている。

Text:アウトビルトジャパン
Photo:AUDI AG