【これ手放すんですか!?】後編 AMG 300CE 3.4-4V Wide Version 日本に5台だけ輸入されたホンモノを我々は見た!
2023年4月2日

「AMG 300CE 3.4-4V Wide Version(ワイドバージョン)」を直に見るのは実は初めてだった。AMGジャパンが正規輸入したのが5台というのだから無理はない。易々とお目に掛かれる代物ではないのだ。“アマーゲー”とまことしやかに呼ばれていた時代の、伝説の「ハンマー」と同じボディを有する超希少車が売りに出される。
さて、「AMG 300CE 3.4 -4V Wide Version(C124)」のディティールを見ていこう。
この「AMG 300CE 3.4 -4V Wide Version(C124)」は19911990年から1992年に渡って50台ほど作られたいわゆる「前期モデル」だ。92年後半以降は「6.0ハンマー」含めてノーマルボディに後付けのオーバーフェンダーが付くだけで「ワイドバージョン」は存在しない。繰り返すが「ワイドバージョン」は超希少なのだ。フロントはフェンダーパネルを外して叩けばいいが、リアフェンダーはCピラーからAピラーまでつながった大きなパネルだから楽な仕事ではないはず。まさにAMG渾身の作品である。2年足らずでやめてしまったということは、ワイドボディ化がいかに割に合わない作業であったかがうかがえる。

オーナーの好みでオーダーメイドされた
過去に取引されたクルマを見ると、かなりコンディションの良くないものが中古車市場に出ていたのが見受けられる。中にはフロント周りを後期型にコンバージョンしちゃったり。一方この個体は適度に走らせながら、定期的なメンテナンスを行い、コンディションをキープしているクルマだということが記録簿からもわかる。ただし、30年を経過するクルマゆえに、塗装面が荒れているところも見受けられるため、現オーナーはキレイに仕上げて次のオーナーに引き渡したいと考えている。

クルマというものは、“つるし”のもの、つまり在庫を買うのが今では常識的になっているが、基本的には豊富なオプションから欲しいものを選んで、本国にオーダーして、おおよそ半年後に納車されるというものだった。特にAMGのような特殊で高価なクルマは、輸入元も在庫するのはリスクでもあるため受注、発注が基本であった。そして、そのカスタマイズの幅は非常に広かった。
このクルマは、初代のオーナーが、仰々しいAMGルックを好まなかったようで、ラジエーターグリルは敢えてAMGならではのボディ同色に塗られたものではない。オプションの中にはレカロCクラシック(2脚で120万円!)やハンマー用ブレーキシステム、メタリックペイント、サンルーフなどがあり、ブラックのメーター文字盤も選べて、車内のAMGサインなどレスオプションもあったというのが確認できた。

インテリアはレストアされている
このクルマのようなヒストリックカーにおいては、オリジナルであることが重要視されるのは周知の通りである。その意味では、この個体はインテリアがレストアされているためオリジナル至上主義者には不向きかもしれしれない。大胆にもブラックの内装がレッドになっているのだから。ただし、クルマの楽しみ方には色々あって、このクルマの場合は投機目的ではない、純粋に好きなクルマを“快適に走らせるために買われたのだ。「今や世界に50台とない希少車を日常使いする贅沢」とも言えるのではないだろうか。

とは言え、安心なこともある。現オーナーは関西でヒストリックカーのレストア、カーディテイリングサービスを行う会社の代表ということもあり、職業柄インテリアのレストアは得意中の得意で、シート表皮、ウッドなどの素材も特殊な仕入れルートを持っている。従って、新オーナーは好みに合わせてレストアの相談ができるという心強いおまけがついてくるのだ。




やはり、クルマはキチンと走ってこそナンボである。この「AMG 300CE 3.4-4V Wide Version」は5速ATにシフトショックもないし、これだけ太いタイヤを履かせているのに、アライメントも取れていて、ハンドルの癖もなく実に快適至極。クルマである以上、機関が良好であることが重要であることを実感した。
海外のオークションに出たら面白いことになりそうだが、できれば日本に残しておきたいところだ。
Text:アウトビルトジャパン
Photo:アウトビルトジャパン