「プラモデルはやっぱり面白い」Vol. 15 スバル360 Part1
2023年3月19日
日本初のマイカーは奇跡のクルマだった
こんな素晴らしいクルマは他に無い
いきなり私事で恐縮であるが、「スバル360」(1969年式 ヤングS)を4年ほど前に入手して現在も愛用中である。スバル360が欲しかった理由は幾つかある。これまでのクルマ所有歴、約40年のうち、直近の28年間はアルファロメオばかりを乗り継いできた。今後の残された人生(時間)を考えると、他のクルマにも乗らなければならないとの考えが浮かんだ。そして同時に頭にひらめいたのは「スバル360に乗ろう」という想いだった。
私は群馬県人であり、地元の富士重工業(株)が開発した名車、スバル360は幼少の頃から馴染み深い(実際に50年以上前に父親がスバル360を所有し、乗せてもらった思い出は忘れられない)。また、運営をお手伝いさせて頂いているクラシックカーイベントに、亡き小林彰太郎氏(自動車雑誌カーグラフィックの創始者)が特別ゲストとして来場されたことがあるが、その際、会場には国産車、外国車合わせて300台程が参加していた中から、気に入られた車種を尋ねると「スバル360です」とのご回答だったのがとても強く印象として残った。私には多少意外な感がしたが、「スバル360のコンセプトは現在でも通じるものです。今こそ乗用車は大幅にダウンサイジングすべきと思います」と続けられた。そして小林彰太郎さんがそうおっしゃるのであれば、何としてでも乗りたくなった。
その後、購入し、現在でも楽しんで乗っているが、素晴らしいクルマである。50年以上前のクルマであるが、問題なく日常的に乗用が出来る。また運転が楽しくて、しかも可愛らしい。なんと、走行していると、小さな子供たちが手を振ってくれる。こんな素晴らしいクルマは私にとっては他に無いのである。
「スバル360 ヤングSS」 ハセガワ製 1/24 1997年6月発売 パーツ総数76
スバル360は1958年にデビューし12年間に渡って約39万2千台が生産された。日本の自動車産業史でもモータリゼーションの礎といわれている。長寿命で大人気の軽自動車であった。しかし他の自動車メーカーもスバル360に対抗すべく新型軽自動車を発表した。特にホンダの「N360」は、高性能で低価格をセールスポイントとして人気を博した為、スバル360にもスポーティーで高性能バージョンが必要と考えられた。
そこで1968年に発売されたのが「スバル360ヤングSS」であった。ツインキャブ仕様として最高出力36PSを絞り出し最高時速120㎞/hを誇った。当時の他グレードは25PSであり、しかも1958年の発売時には16PSであったことを考えると相当なパワーアップである。また、派手なボディストライプを施し、タコメーターを追加するなどスポーティーさも演出した。だが、それらの努力はスバル360の基本コンセプトから外れており、結局1970年にスバル360は生産中止に至った。
肝心のプラモデルキットに話を移すが、ハセガワ製の1/24スケールカーであり、「Historic Car Series」の6番目として1997年6月に発売された。発売後25年以上も経過しているが、現在でも販売中であることから人気の高いことが窺える。また、このキットをベースとして同社は、「スバル360デラックス」、「スバル360コンバーチブル」なども発売した。実車と同様にロングセラーとなった本キットの出来は素晴らしく、愛らしいフォルムも良好に再現されている。また古いキットながらも各パーツにバリも見られないし、パーツ同士の合いも良く、問題なく組み上がる。その点ではプラモデル初心者にもお勧め出来る。ただしエンジンが再現されていないことは非常に残念である。常々思うのだが、スケールカーモデルには必ずエンジンを付属させて欲しい。特にスバル360のエンジンは独特の形状をしており、エンジンレスは残念である。
製作上は特に問題無いものの、ヤングSSの特徴であるボンネット上のストライプのデカール貼りは慎重に行いたい。ずれて貼ってしまうと本当に後悔することとなる。位置決めしてから貼付作業を始めることが肝心である。
「スバル360 デラックス」 ハセガワ製 1/24 1997年10月発売 パーツ総数76
スバル360はデビュー以来モデルチェンジすること無く、12年間生産を継続した。その間にはモデルチェンジを検討したこともあったらしいが、その度に必要なしとの判断であった。それだけデビュー時に完成されたクルマであったといえる。しかし、小変更は数限りなく行われてきた。他車ではモデルチェンジせずとも○○年式と呼ばれるモデルが存在したが、スバル360は年度の中途でも小さな変更があったのである。従って同年式のスバル360であっても比較してみると細かな点の相違がみられこともあった。
さて本キットについては前述の通り、「スバル360 ヤングSS」がベースとなっており、同じく1968年式である。従ってキット内容の大半はヤングSSと同様に優れたものである。それでも敢えて重箱の隅をつつく様な指摘をすると、フェンダーミラーのステー部分のパーツが角ばりすぎている。またワイパーの再現ももう少し細かに再現してもらいたい。
Part2へ続く
Part2ではコンバーチブル、日本グランプリ・クラスウィナー、パトカーなどを紹介し、またスバル360の誕生に関する現地取材を採り上げる。
Text & photo: 桐生 呂目男