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【これ手放すんですか!?】AMG 300CE 3.4-4V Wide Version 日本に5台だけ輸入されたホンモノを我々は見た! 前編

2023年3月14日

「AMG 300CE 3.4-4V Wide Version(ワイドバージョン)」を直に見るのは実は初めてだった。AMGジャパンが正規輸入したのが5台というのだから無理はない。易々とお目に掛かれる代物ではないのだ。アマーゲーとまことしやかに呼ばれていた時代の、伝説の「ハンマー」と同じボディを有する超希少車が売りに出される。

まずは「AMG 300CE 3.4 -4V Wide Version(C124)」のおさらいからしていこう。ベースとなるC124は、1984年にセダン(W124)がデビューした後の1987年にクーペの300CE-24(C124)としてデビュー。AMGはこの300CE-24をベースに、エンジンを3314ccにボアアップして出力を225psから272psに向上。足回り、エクステリア、インテリアを大幅にモディファイした。さらに「ワイドバージョン」は前後のフェンダーを広げて全幅が100mmもワイド化されている。日本正規輸入された際のAMGジャパンのカタログを見るとC124ベースのAMGは3種類、伝説のハンマー「AMG 300CE 6.0 Wide Version:HMMER」とハンマーと同じボディの「AMG 300CE 3.4-4V Wide Version」そして標準ボディの「AMG 300CE 3.4-4V」というラインナップだった。価格はおよそ1800万円くらいだったと記憶している。

このあとリリースされた500E(W124)よりも迫力あるワイドボディは圧巻。当然前後のエアロバンパーも「ワイドボディバージョン」専用となる。

当時「カーグラフィック」を出版していた出版社に籍を置いていた筆者は、並行輸入のAMGをたくさん見たものだが、正規輸入車ではAMGジャパンが試験的に輸入したW124をベースにしたコンプリートカー1台だけだったし、今検索しても「AMG 300CE 3.4-4V Wide Version」の正規輸入車は中古車市場では見つからなかった。

ワイド化されたボディパネルは叩き出し

このAMGは1991年モデルは、前期モデルにあたるのだが、この「Wide Version」ボディは極めて少ないのだ。その数、恐らく世界で50台程度だ。AMGのエンブレムが示すように、ドイツののどかな地方にあるチューナーに過ぎなかったAMGにボディパネルをプレス加工して組み立てることは不可能であった。つまり、この獰猛かつセクシーなボディは叩き出しによるものなのだ!因みに、13台だけ作られたという伝説の「ハンマー」はボディを叩き出しで作られた故に「ハンマー」と呼ぶというのは間違いで「ハンマーで叩かれたかのような加速」をするというのがその理由だ。この後に生産される「ハンマー」はエアロボディキットをAMGがフィッティングしただけの標準ボディになってしまうので「ワイドボディ」は超希少なAMG渾身の作品なのだ。

あの「ハンマー」と同じワイドボディの迫力はハンパない。叩き出しによるセクシーな曲線を描くリアフェンダーのフレアが素晴らしい。AMG3ピースホイールはOZレーシング製。リアスポイラーは当時のAMGを象徴する「ダックテール3分割タイプ」
C124がスリムなことがよくわかる。空力を優先して前モデルのW123よりも40mm車幅が狭められた。

さあ、舐めるように、そして重箱の隅をほじるようにじっくりと見たあとは、ちょっとした緊張感漂う中テストドライブにでかけよう。サッシュレスのクーペボディにもかかわらず、剛性感の高さがドアの開け閉めですぐに感じ取れる。我々が所有する250CE(1970年)から続くミドルクラスクーペのボディ剛性の高さは特筆ものだ。「最善か無か」を謳っていたメルセデス・ベンツの基本設計の良さが光る部分でもある。

普通に乗れる、もちろん速い

慎重に走り出すと、意外にもノーマルのC124と変わらず、ちょっと拍子抜け。こんなに大人しかったっけ?チューニングエンジンなのに、アイドリングは安定している。ATということもあり、街中での操作性は何ら余計な気を遣う必要はないほど優しい。郊外の高速道路へと移動する。これこれ!合流のための小ダッシュで思い出した。これぞリアルAMG!「豹変する」とはこのことだ。中間加速の速さ、気持ちよさは半端ない。エンジンチューニングにより出力が向上されたとはいえ、272psと最新のV8の半分にも満たないが、スロットルレスポンスが良いのと、何より車重が1610kgしかないため掛け値なしに速い!

リアのタイヤサイズは265/40ZR17という当時は極太サイズだ。標準は195/65R15。バンパーの広がり具合からも、いかにワイドになっているかがわかる。

蜜月の約10年

現オーナーは関西でボディコーティングサービスを行う会社の代表で、AMGの3オーナー目(前オーナーは購入したプロショップ)となる。これまでの約10年はあっという間だというオーナー氏。信頼と実績のあるプロショップで定期的に点検をしていることもあり、良好なコンディションをキープできているようだ。それにしても、製造後30年が過ぎるが、ハンドクラフトによるエンジンに故障はないというから驚きだ。

この超希少なワイドボディは、グッドコンディションで、これまでのオーナーが把握できて、正規輸入車で、といった素性の知れた個体となると軽く2000万円オーバーなんでしょうね。2021年のアメリカのオークションでは15万ドルほどで落札された記録があるし。これは、一度乗ったらまた乗りたくなるクルマの筆頭だ。特別感は別格で、ノーマルの500E、E500(W124)よりも上だと思う。買えるものなら手に入れたい。

当時の輸入元AMGジャパンはヤナセの一部門から分社した会社である。
「エンジン屋」のAMGの手によるエンジン。この時代はエアクリーナー上に「AMG」の文字が控えめに入るのみ。ノーマルにはない追加されたエア吸入ダクトに注目。

この「AMG 300CE 3.4-4V Wide Version」がいかにクオリティの高い希少なマシンであることがお分かりいただけたろうか。後編では、この個体の内外装を見ていこう。

購入をご希望の方はこちらまでご連絡ください。

Text:アウトビルトジャパン
Photo:アウトビルトジャパン、Mercedes-Benz Group