初テスト はたして新型メルセデスGLEクーペの実力は?
2020年5月4日
メルセデスGLEクーペ: テスト、エンジン、価格、ディーゼル
GLEクーペはこのクラスのSUVのボスになれるだろうか?
新型メルセデスGLEクーペの初の試乗テストはディーゼルモデルの400dでおこなった。果たして、330馬力の直列6気筒ディーゼルのインプレッションやいかに?
2015年に発売された初代メルセデスGLEクーペは、内容はかなりの旧式なものだった。前のモデルであるC292は、2011年からすでに製造されていたW166をベースにしており、当時はまだMクラスと呼ばれていたからだ。
しかし、今度の新型の大型SUVクーペは非常にリフレッシュして見え、われわれは最初のテストを試みるべく、大きな期待とともに乗り込んだのだが……。
ボンネットの下で直列6気筒エンジンが火を灯す
400dはボディが数センチ長くなったので、特にリアシート部分が少しだけ楽になった。ただし、身長175センチ以上の乗客は、傾斜したルーフラインのため、リアシートに乗り込むためには、GLEのデザイナー諸氏に敬意を表して、頭を下げたまま乗り込むことが求められる。しかし乗り込んでしまえば、後部座席の特にヘッドルームが、旧モデルのようにタイトではなくなっていることは事実だ。
旧型の350dの時には、当時はまだ258馬力だったV6ディーゼルがボンネットの下でゴロゴロと鳴っており、ヘビーなクルマのウェイトによって苦戦を強いられた。その古いV6ディーゼルエンジンは廃止され、代わりに直列6気筒ディーゼルエンジンが採用された(新しいエンジンの形式はOM 656という。メルセデスファンなら覚えておこう)。
ツインターボディーゼルエンジンは、そのたくみな設計により、振動が少なく(アイドリング時にはすでにそれを感じることができる)、かなり強力なパンチを提供する。
運転性能は適切かつ主導的
標準モデルのGLE 400dクーペは、330馬力と700Nmという最高出力とトルク値を有し、0から100km/hを6秒というタイムでこなす。
メーカーは、旧型に比してさらに重くなったSUVクーペは、2.3トン以下と述べているが、われわれのテストしたモデルは数々のオプションの加わり、実測の重量は2.5トンを超えていた。
これは狂気の沙汰だ。「普通の」メルセデスEクラスよりも500kg~700kgは重いということであるし、その重さのマイナス分は運転していてもはっきりと感じる。さらにタイヤやブレーキなどにも負荷がかかっていることも言うまでもないため、高価なタイヤも(21インチなので最低でも4本で20万円以上の価格は覚悟するべき)、ブレーキパッドももりもり減るだろう。
だがEアクティブボディコントロール(E-Active Body Control)と呼ばれるシャシーのおかげで、多くの状況でGLEは巧みに(なんとか)その重さを隠すことが可能となっている。48ボルトの電動システムと連動して、アクティブサスペンションがあらゆる種類の動きも習得し、カーブモード(3段階調整可能)ではコーナーに傾いたり、体の動きにほとんど気づかないほどの段差を感知して追い越したりできるようになっている。
実際に操縦してみると、自分がどのモードで大型SUVを動かしているのかがはっきりとわかる。
そういう意味ではきちんとアクティブサスペンションが機能していることは確かではあるが、であるならば最初から「これが一番のセッティングだ」というべきモードに設定しておくべきなのではないかとも思う。
ターニングサークルは12メートル未満で、この手のSUVの中ではまあまあ小さいのは嬉しいところだが、ステアリングの角度がフルになると、ベンツは前輪を衝動的に震わしてしまうが、2.5トンも重量があるのだからしかたあるまい。
ステアリングの硬化は、方向の急激な変化によって引き起こされることもある。
テストカーは10万ユーロの大台超え
そしてGLEクーペを試乗している間にも、私たちをイライラさせることのいくつかにさらに気づく。
例えば、巨大な混合タイヤは明らかに快適性を低下させている。21インチホイールは、アスファルトの路面のわずかな凹凸さえも伝えてきて、身体のあちこちを震わせてしまう。21インチは明らかに過剰だし、コストも大変高い。19インチくらいでも十分以上だろう。
われわれは通常、メルセデスの9段オートマチックを最高評価している。しかし、このGLEクーペに備わったものは、ファーストギアのパワーが少し過大すぎて、気を使うことが多い。それについては疑いなく、われわれは最高レベルで不満を表明しておきたい。
さらにオプションを加えると、約10万ユーロ(約1200万円)にも達する価格に関しても、素直に高い、と感じたことも確かである。
結論:
自信に満ちた外観とは裏腹に、大きくて重いGLEクーペは、究極の快適性を提供するものとは言えない。
とはいえ、技術的に高度な装備を備えたベンツの実力は見事なものだ。だが2.5トンの重さと、21インチものサイズのホイールには賛成できない。
大きく重いSUVそのものを否定する気はないが、これ以上に大きく重くなることには疑問を抱いてしまう。いくらプラグインハイブリッドや、効率の良いディーゼルエンジンを搭載したところで、結局は骨折り損のくたびれ儲けではないのだろうか。基本的にもう少し軽く、そして過剰になりすぎないタイヤサイズなどを設定して欲しいと思う。
AUTO BILDテストスコア: 3+
Text: Stefan Novitski, Dennis Heinemann
Photo: Toni Bader
加筆修正: 大林晃平