【未来の車】CCV?クーペ?ピックアップ? アウディ アクティブスフィアの実車に触れる
2023年2月17日
ボタン一つでピックアップに変身するアウトドア用アウディ。オフロード車?クーペ?ピックアップ?アウディ アクティブスフィア コンセプトは、あらゆるものを備え、そして何よりも「壮観」である。我々は、そのスタディモデルに密着取材した!
PPE電動プラットフォーム、オフロードタイヤ、「A7スポーツバック」を彷彿とさせるライン、そして全く新しい操作コンセプトを加えた「アウディ アクティブスフィア コンセプト」が完成した。アウトドア派に最適なクルマ。今回の取材中、我々は、早速この華やかなコックピットのシートにも座らせてもらった!
【ハイライト】
● 第4の「スフィア(Sphere)」スタディモデルは、アウトドア派に最適なクルマ
● ハーフSUV、ハーフ4ドアクーペ
● ボタン一つでピックアップに変身
● PPE電動プラットフォームベース
● 電動モーターを2基搭載し合計325kW(442馬力)の出力
● 100kWhのバッテリーで600km以上の航続距離を実現
● 新操作コンセプト「アウディ ディメンションズ(Audi dimensions)」は、自律走行レベル4
トリオがカルテットに
トリオがカルテットになる。もともとアウディは、現在までに、いわゆる「スフィア」と呼ばれる3つのスタディモデルを発表していた。最初は2021年8月のスポーティなロードスター「スカイスフィア」、次いで将来の「A8」を垣間見せるシェイプアップされたセダン「グランスフィア」が登場し、数々のデザイン賞を受賞している。そして2022年4月には、中国市場向けの巨大なクロスオーバー「アーバンスフィア」が公開された。
これでスフィアトリオが完成したのだった。しかし、それはガエル ブジン(マリブにあるアウディのデザインスタジオの責任者)と彼のチームが、「アクティブスフィア」のコンセプトをデザインするまでのことだったのだ。アウトドア好きを自認するアウディのデザインチーフ、マーク リヒテは、すぐにコンセプトを納得し、プロジェクトにゴーサインを出した。
ミュンヘンでは、車好きのリヒテが「まさに私の車です!」と出迎えてくれた。全長4.98m、全幅2.07mという圧倒的な存在感を放つ、クラス分けのできないスタディモデル、「アクティブスフィア コンセプト」を前にして。アウディは公式には、クロスオーバーと呼んでいるが、実際には何でもありの多様性を備えたモデルだ。リヒテは、「エレクトリック アクティブスフィアのコンセプトは、オンロードでもオフロードでも同じように活躍するはずだ」と説明してくれた。
SUV、オフローダー、クーペ、ピックアップ?
22インチのホイールに装着された285/55サイズの巨大なオフロードタイヤと21cm(オフロードモードではプラス4cm)の地上高は、明らかにオフロード車のためのものだが、ドアが反対方向に開くエレガントなラインは、むしろエレガントなセダンを連想させ、スタイリッシュなスポーツバックのリアで完了している。4ドアのオフロードクーペと言っていいだろう。
そして、ボタンを押すと、先細りのリアエンドが荷台に変身するのだ。「アクテスフィア コンセプト」は、たちまちピックアップに変異する。ガラスパネルが上昇し、テールゲートが開くと、室内と荷室がパネルで仕切られ、eマウンテンバイクなどのスポーツ用品を2台搭載することができるようになっている。また、スキーラックもルーフに見えないように組み込まれている。そのコックピットは、どんなアウトドアアドベンチャーにも対応できるような設備が整っており、自由時間の多くを自然の中で過ごすリヒテの熱意もうなずける。
アウディは、ハンドルを握ると自然を身近に感じられるような、もうひとつのものを考え出した。ドア下部にはガラスのインサートがあり、シングルフレームは電動スポーツカーPB18以来、初めて透明なガラスを採用している。
ラウンジのようなインテリアに座ると、ガラスの挿入口からスタジオの床を真下に見下ろすことができるのだ。シートやドアパネルなどは「ラバレッド」で仕上げられ、暗くなりがちなコックピットとのコントラストが美しく、素晴らしい。
しかし、4つの個性的なシートを除けば、書斎のインテリアは一見すると普通のクルマとは似ても似つかぬものだ。というのも、「アクティブスフィア コンセプト」は、他の3台の「スフィア」スタディモデル同様、自律走行レベル4に向けて準備されているからだ。自動運転モードでは、「アクティブスフィア」がすべてを受け持ち、ステアリングを含むダッシュボードは隠れたままとなり、非常に風通しのよい空間が実現されている。
近未来的な操作コンセプトは「アウディ ディメンションズ(Audi dimensions)」と呼ばれ、物理的な現実とデジタルな領域を融合させたものだ。そして、その仕組みは次のようなものだ。居住者全員が複合現実感メガネを装着し、さまざまなコンテンツが室内に立体的に投影される。個々のコンテンツに注目すると、自動的に新しいレベルが構築され、ジェスチャーで選択することができるようになっている。
最初のアニメーションのスタジオテストでは、未来のような音と感触。正直なところ、10年後にこのような形でクルマを操作することは今のところ想像できないものの、インゴルシュタットのエンジニアは「アウディ ディメンションズ」が未来だと確信しているようだ。ちなみに、そのころにはこのビッグサイズのメガネはサングラスサイズに縮んでいるはずだ。
未来の夢とは別に、「アクティブスフィア コンセプト」は、ごく普通に運転することも可能だ。ボタンを押すと、ステアリングを含むダッシュボードが現れて前方に伸び、ドライバーは自らの手で運転することができるのだ。特にオフロードでは、これは理にかなっている。
440馬力以上のパワーと600kmの航続距離
2基の電気モーター(フロントおよびリアアクスルに各1基)は、合計で325kW(442馬力)、720Nmを発揮する。このスタディモデルのベースとなるのは、「アウディQ6 e-tron」や「ポルシェ マカン」で量産が始まろうとしている新しいプラットフォーム「PPE(Premium Platform Electric)」である。800V技術や最大270kWの急速充電機能は、この分野ではもはや当たり前になっている。100kWhのバッテリーを搭載することで、少なくとも600kmの航続距離を実現することができるはずだ。
量産化の目処は?
果たして、この「アクティブスフィア コンセプト」は、量産化される可能性があるのだろうか?このままのかたちでという可能性は高くないと思われる。しかし、PPE電動プラットフォームを採用した最初のシリーズモデルが登場するのは、そう先の話ではないだろう。「アウディ ディメンションズ」のような技術は、最終的に量産できるようになるまで、まだ数年かかるが、アウディによれば、必ずやってくるという。
リヒテによれば、次の、しかし1つのアウディモデル世代で、再び飾り気のないデザイン言語が見られるかもしれないとのことである。そのころにアウディが「アクティブスフィア」のようなアウトドア用オールラウンダーをラインナップしているかどうかは、まだわからない。
アウディ アクティブスフィア コンセプト
結論:
デザイン面では、4つの「スフィア」研究の中で、「アクティブスフィア コンセプト」が最も美しいと思える。しかし、ピックアップの荷台を持つ高貴なアウトドアビークルを、果たして世界が待っているのか、私は疑問だ。それよりも、内蔵されている技術の進歩がとても気になるところだ。
Text: Jan Götze
Photo: Audi AG