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ロールス・ロイス スペクターのテスト・プログラムは最終段階へ 走行距離は200万km!

2023年2月14日

ロールス・ロイス初のBEV「スペクター」の250万km以上にわたるテスト・プログラムは継続中だが、200万km近いテスト走行が終了した。現在は、南アフリカで摂氏50度になるという高温な環境でのテストを実施中。

ここまでのテスト

2023年第四半期に予定されている最初の納車に向けて、世界屈指の苛酷な条件下における400年間近い通常使用を再現するための徹底的な試験がスペクターに課せられた。走行距離は合計250万kmを超える予定で、これは地球62周分に等しい距離にあたる。テストがスタートしたのは、2021年冬で、北極圏からわずかに位置するスウェーデンのアリエプローグにある特別な試験施設で、極度の中で行われた。続いて夏、仏コート・ダジュール周辺のオートドローム・ド・ミラマス試験場でテストが実施された。

「スペクターは、ロールス・ロイス史上最も期待されるモデルとして、
すでに地位を確立しています。この驚くべき斬新な車は、このブランドの革新的な
電気自動車の時代の始まりを告げると同時に、スーパー・ラグジュアリー市場における
当社の揺るぎない技術的リーダーシップを示しています。
また、広範囲にわたる意欲的で厳格なテスト・プロセスは、スペクターを
まず間違いなくロールス・ロイスの車にするという当社の約束を物語っています。
この高級ブランドにおける手法のひとつは、根本的には、行うすべてのことにおいて
偉大さを呼び覚ますことです。スペクターは、車の体験を比類ない高みへと引き上げ、
卓越した新しいベンチマークをつくり出します。
この約束を果たすことこそ、ブランドの継続的な成功を支え、また、たえずお客様の
期待に応え、それを上回ろうとする私たちの姿勢の原動力となっています。」

ロールス・ロイス・モーター・カーズ最高経営責任者
トルステン・ミュラー・エトヴェシュ

ミヒヤー・アユービ(左)、トルステン・ミュラー・エトヴェシュ(中央)

「世界中でたゆまず驚異的なテストを実施している理由は単純です。
これまでスペクターのような車は存在していなかったからです。
ロールス・ロイス初の完全電気自動車であるスペクターは、
技術の新しいパラダイムを示すだけでなく、
ブランドの将来の方向性のすべてを示しています。
この驚くべき旅を着想し、実行することができるのは、
ロールス・ロイスのエンジニアだけでしょう。
単に自動車をテストするのではなく、卓越し た自動車のベンチマークを
更なる高みに引き上げることが務めなのです。」

ロールス・ロイス・モーター・カーズ エンジニアリング・ディレクター
ミヒヤー・アユービ

暑い気候の中でのテスト

ロールス・ロイスの完全電気自動車のスーパークーペ、スペクターは、このブランドの118年の歴史において試行された中で最も厳しいと言われるテスト・プログラムの第3段階を終了し、現時点ですでに200万km近くを走破した。

第4段階では、南アフリカの北ケープ州オーグラビーズと、西ケープ州フランシュフックの拠点において、極度に暑い気候のもとでテストが行われている。ここでは、極度に高温で乾燥した北部と地中海性気候で湿度が高めの南部で、最高気温は50度を超えることがあり、路面は南部では砂利、塵埃、泥の多い曲がりくねった田舎道が多く、路面や地形が変化に富んでいる厳しい条件のもとテストが行われている。

外気温40℃

この段階では、200万近い連続テストの間に開発されたあらゆるシステム、ハードウェア・アイテム、ソフトウェア・プロトコルをエンジニアが観察し、改良を重ねていく。こうした丹念な作業を通じてのみ、ロールス・ロイスの技術エキスパートは、お客様に愛される乗り心地を厳密なレベルで実現し、ブランドの代名詞である「マジック・カーペット・ライド」を新しい完全電気自動車のパラダイムにうまく適合させることが可能になる。

ロールス・ロイスの真髄を体験できるよう、スペクターのテストを通じて、2万5000件におよぶ性能関連機能が入念に調整された。現在行われている改良は、「わずかな改善の積み重ね」の原則に沿って行われている。これは、個々の漸進的な調整は非常に小さくても、累積する全体として大幅に改善されるという原則。この理論は、スポーツやハイレベルなビジネス分野では広く用いられ、実証されているもので、社内で「ロールス・ロイス・フィニッシング・スクール」と呼ばれる、さらに広範囲にわたる検証プロセスの一環として行われる。

数値化できないこともある

スペクターのテスト・プロセスの中には、長い経験を積んだ比類のない優秀なエンジニアの判断と直感が反映されるために、数値化は不可能なことがある。たとえば、回生ブレーキに関しては、楽なフィーリングでありながら、しっかりとブレーキが効くよう、精緻化するためにすでに1500時間以上が費やされているという。制動力に伴って生じるセンサー入力をデータ・ロガーで処理することで、どのような走行状況でもスペクター全体の静粛性が損われないように繰り返し調整していく。このロールス・ロイスの体験を高次元で表現することを可能にするのは、エンジニアたちの長年の経験と判断だけなのである。同様に、アンチロール・スタビライゼーションも、ブランドの特徴である「マジック・カーペット・ライド」のクオリティを実現できるように調整が進められている。

南アフリカでは、高温によってゴム製サスペンション部品の硬度が変化するので、このテストは特に重要で、このパラメーターは、さらに極寒地でのテスト結果によって補われることになる。こうした徹底的な手法は、スペクターのコーチドアを開けることで始まる「光の劇場」にふさわしい品質のカラーと明るさを実現するためにも用いらた。外光条件に関係なく車内での調和感を保つには、すべてのインテリア照明(定評あるビスポーク・スターライト・ヘッドライナー、インストルメント・クラスター、インターフェースなど)を完璧に調整する必要があり、スペクターが世界のどこを走っても一貫したカラーの品質を確保できるようにしている。

徹底的なテスト・プログラムの後半にさしかかる頃には、ロールス・ロイスの名高い空力音響性能を実現するために、シーリング材のさらなる調整を実施する。ゴム製シーリング材は温度分布によって異なる性能を示すので、スウェーデンのアリエプローグで行われたスペクターのテスト段階では、氷点下の気温でシーリング材の硬化が観察され、南アフリカでは、高温条件下で軟化したシーリング材の音響性能をロールス・ロイスのエンジニアが評価する。こうして、どのような極端な気候でも車内が遮音されるような、最適なバランスを見出すことが課題となる。

南アフリカをはじめ、残りのプログラムでも、スペクターの17台のスピーカーが響かせるサウンドの品質を少しでも改善するために、オーディオ・システムの調整と精緻化が行われる。実験室での初期テストとキャリブレーションに続き、現在は実際の環境下で徹底的なテストが実施されているところだ。あらゆる音への要求に応えられるよう、特別に編集した幅広いジャンルのプレイリストが使用されている。完璧な音響性能を確保するためのこの取り組みは、車の主要機能にも及んでいる。たとえば、自動開閉式コーチドアが閉まるときは、不快ではない最適なレベルの音が出るよう、閉まる速度までもが細かく調整されているという具合だ。

ロールス・ロイススペクター:驚異的な取り組みが終了間近

南アフリカでのテストと収集されたデータを十分に分析し、関連する作動と対策を盛り込め
ば、スペクターのテスト・プログラムは約80%完成したことになり、最終承認段階に入る。この段階では、北極のような厳寒のアリエプローグと温暖なコート・ダジュールとを往復する「オール・シーズン」テスト・プログラムが実施される。

スペクターの最後の50万kmのテストでは、「ライフスタイル分析」に焦点が絞られる。この独自のテスト・プロセスでは、ロールス・ロイスのお客様の使用ケースを想定してスペクターがテストされるというもの。世界の大都市の中心部でも、新興もしくは歴史ある高級観光地でも、またオーナーのニーズ、習慣、ライフスタイルに見合ったその他の条件下でも、求められる性能を発揮できることが確認されるのだ。

Text:アウトビルトジャパン
Photo:ロールス・ロイス・モーターカーズ