一番楽しいミッドエンジンスポーツカーはどれか?アウディR8?コルベット スティングレー?フェラーリ296?それともポルシェ ケイマン?
2023年2月6日
走る歓びを追求: 後輪駆動、400~830馬力のミッドエンジンスポーツカー4車種の比較。果たしてどれが一番楽しいか?
ドライバーの真後ろにあるパワープラントは、特別なクルマに乗っていることを明確に伝えてくれる。そして、後輪駆動とクラシカルな自然吸気エンジンの組み合わせは、伝統的なスポーツカーを愛する者の夢をかなえてくれる。今回は多くの自動車愛好家が大好きな4台のミッドエンジンスポーツカーを楽しんでみた。
ポルシェ718ケイマンGTS 4.0
まずは400馬力の「ポルシェ718ケイマンGTS 4.0」をドライブする。リアに素晴らしいサウンドと回転数を誇る4リッター6気筒のボクサーエンジンを搭載するケイマンは、86,241ユーロ(約1,200万円)から楽しめるミッドエンジンスポーツカーだ。しかし、ポルシェの常として、「ケイマン」も多くのオプションが用意されているので、追加費用を必要とするのが悩みの種だ。
ほとんど必須と言えるセラミックブレーキは、7,319ユーロ(約104万円)のオプションとして用意されている。また、試乗車に装着されたカーボンファイバー製バケットシートは5,355ユーロ(約76万円)するが、これもあった方がいい。そして、デュアルクラッチは3,255ユーロ(約46万円)の追加料金となる。一方、ブルメスター(Burmester)製のハイエンドサラウンドサウンドシステム(3,915ユーロ=約55万円)やポルシェコネクトナビゲーション(2,261ユーロ=約32万円)といったインフォテインメントガジェットは、一応考慮しておきたいと思う程度のオプションだ。
うっかりオーダープロセスですべての項目にチェックを入れると、「GTS 4.0」はすぐに11万ユーロ(約1,500万円)に近づいてしまう。つまり、この4台の中で最も安価で最も性能が低いのは、ケンタッキー州のボウリンググリーン(コルベットC8スティングレー)となってしまい、価格性能比の王座を明け渡すことになるのだ。
シボレー コルベット C8スティングレー
米国では新型「C8コルベット」が製造され、64,500ドル(約870万円)で販売されているが、欧州では、89,900ユーロ(約1,280万円)からとなっている。欧州仕様の場合、6.2リッターV8は米国仕様より20馬力低い482馬力を発揮する。その理由は、排ガス規制の強化にある。
シボレーヨーロッパは、特徴的なサウンドをどうにかして残しているのが美点だ。アルミのスタートボタンを押せば、昼夜を問わず、ご近所さんをヒヤッとさせること請け合いだ。
アウディR8 V10
もちろん、「R8」もその素晴らしいV10自然吸気エンジンで楽しむことができる。インゴルシュタットでは、後輪駆動で570馬力のミッドエンジンのクラシックカーが、少なくとも149,000ユーロ(約2,100万円)で販売されている。これは、「V10パフォーマンス クワトロ」の212,000ユーロ(約3,010万円)に比べれば、まさにバーゲンである。
「クワトロ」は全輪駆動のため、0から100km/h加速をそつなく速いタイムを出すが、FRならではの足回りの軽さは「クワトロ」にはない。
フェラーリ296GTB
フェラーリは、この4台のグループの中で、コールドスタートのキャバリアだ。ステアリングホイールにあるデジタルスタートボタンを押すと、優しいささやき声が聞こえるだけだ。イタリア車はハイブリッド、正確にはプラグインハイブリッド車だ。7.45kWhのバッテリーで、25kmの電気航続距離を確保している。早朝、町の看板の向こうで2.9リッターV6に火を入れる前に、気づかれずにこっそりと出てくるには十分だ。
グランツーリスモベルリネッタは音響的にはV8に劣る。そしてイタリア人は、「フェラーリ296GTB」の価格について語りたがらない。もちろん、価格は最も高く、266,701ユーロ(約3,800万円)からだ。しかし、「F8トリブート」より4万ユーロ(約570万円)も高いとは思えない。
そして、「296(排気量と気筒数を組み合わせた古典的な名称)」がフェラーリの構造の中でどのような位置づけにあるのか、という問題に行き着く。720馬力の3.9リッターV8を搭載したフラッグシップスポーツカーの代わりにはなりたくないが、「SF90ストラダーレ」の弟分にもなりたくないというのが本音だ。
そして、フェラーリは「ローマ」、「296GTB」、「F8トリブート」、「812スーパーファスト」、「SF90ストラダーレ」の5台のハイパフォーマンス2ドアカーを並列にラインナップしているわけだ。エンジンをフロントに搭載したものが2台、真ん中に搭載したものが3台、そのうち2台はハイブリッド化されている。他のどのメーカーもそれを真似ることはできない。
排気量6.2リッターのコルベットは最後の恐竜だ
自然吸気エンジンは、「コルベット」の6.2リッタースモールブロックを筆頭に、排気量は様々で、バラエティに富んでいる。このクルマは、これまでと同じように刷新された「C8」の中に残された最後の遺物なのだ。フラットプレーンクランクシャフトと4基のオーバーヘッドカムシャフトを備えた新型5.5リッターV8を搭載した「Z06」が登場する2023年まで、コルベットの伝統主義者が持ち続けることができる藁のような存在だ。
それまでは、オーバーヘッドバルブトレインとセンターボトムマウントのカムシャフトを持つメカニカルモンスターを楽しむことにしよう。ターボチャージャーを必要としないのに、きめ細かいレスポンスとリニアな特性で報いてくれるのは、他の3台の特徴でもあるのだ。そう、120度の高温のV字路に2つのターボチャージャーを持つスーパーチャージャー搭載のフェラーリでさえも。しかし、それについては後で詳しく説明する。
GTS 4.0によってポルシェは718シリーズに6気筒ボクサーを復活させた
車から車へ少し乱暴にジャンプして、ポルシェを詳しく見てみよう。ツッフェンハウゼンに本社を置くメーカーは、スポーツドライビング界のエンスージアストたちからの懇願に応え、「718」シリーズに6気筒ボクサーを復活させ、「GTS 4.0」を発表したのだった。
「ケイマン」は2016年に「718」の名を与えられて以来、ターボ付き4気筒ボクサー、排気量2.0リッターまたは2.5リッターと共存しなければならず、決して貧弱ではないものの、まったく異なるキャラクターを持っている。しかし、スポーツバージョンでは、ファンが工場の門に鎖でつないで絶望する前に、ようやくポルシェが理解を示してくれた。
6つのポットを持つ4リッターボクサー。これは「GT3」のエンジンではなく、400馬力、後に「GT4」で420馬力となるための似たようなバージョンだ。最初はカタカタとした音だが、高回転域になるにつれ、最高回転の7800rpmまで細かい鋸のような音に変化していく。
V10アウディは、ランボルギーニ・ウラカンよりも静か
V10にしては、アウディは意外とハマっている。もちろん、コルベットのような粗いゴロゴロ感からは程遠いが、兄弟車の「ランボルギーニ ウラカン」のような絶叫系の音色はない。「アウディ スポーツ」のサウンドデザイナーは、イタリア人の外向的なポーズを際立たせるために、より落ち着いたアプローチを採用した。もちろん、これも相対的なものだが。
フェラーリのコックピットは必要なものだけに絞られている
もう1台はイタリア製ミッドシップだ。フェラーリは、2つの世界の長所を兼ね備えている。必要なときはスペースシップ、可能なときはエモーション。インテリアもそうだ。新しいフェラーリのコックピットは、驚くほどデジタルで、必要なものだけに絞られている。中央のディスプレイはない。ドライバーはインストルメントパネルですべてを見ることができ、必要に応じてリアビューカメラも表示される。
また、助手席の真正面には、重要な情報を表示するための小型ディスプレイが設置されている。それ以外の操作系は、完全にドライバーに合わせたものになっている。3時、9時という完璧な位置から手を動かさずに操作できるものが多いのだ。ステアリングホイール自体は、機械的なボタン(ライト、ワイパー、ウインカー、マネッティーノ)とタッチサーフェスが混在している。後者には、スタートボタンも搭載されている。
ポルシェやアウディのコックピットはもっとクラシックな感じだ
イタリアのデジタルピンボールと完全に対をなしているのは、ドイツの2車である。なにしろ「ケイマン」は6年、ベーシックモデルは3年長く続いているのだから。
「アウディR8」の現行モデルは発売から7年が経過している。かつてインゴルシュタットの彼は、ドライバーに焦点を当てたコックピットデザインのパイオニアである。センターディスプレイはなく、すべて中央のインストルメントコントロールユニットを介してコントロールされ、クラシックなボタンだけが今も使われている。我々は、個人的には、この方が道路に目を向けたまま操作でき、快適だと感じている。
一方、ポルシェは、先代の「911」のスタイルで非常にクラシックなコックピットを備えている。もちろん、ここでもインフォテインメントは近代化されているが、「718」は明らかにピュアリストにとってベストチョイスである。何一つ気を散らすものがなく、すべてが本能的なのだ。
コルベットに搭載された無数のメカニカルボタン
珍品は「コルベット」だ。無数のメカニカルなボタン、ドライバーを中心にデザインされたインスツールメントパネルは、まるで宇宙船のようだ。慣れるまで少し時間がかかるが、最高にカッコイイ。そしてなによりも、シボレーはついに先代までの、時に杜撰な仕上がりに終止符を打ったのだった。特に最高級のLT3やフル装備のローンチエディションは、ほとんど他に何も望むものはないほどだ。
特に、試乗車にはコンペティションスポーツシートが装着されていて、シボレーはそのシートに3,200ユーロ(約45万円)の追加料金を課している。
高価なバケットシートパッケージはアウディでほぼ12,000ユーロ(約170万円)かかる
しかし、これは「C8」だけではない。「R8」にバケットシートを追加すると、その費用は合計11,740ユーロ(約165万円)となる。しかし、シート自体の価格は3,770ユーロ(約53万円)に過ぎない。残りは、パフォーマンスデザインパッケージやカーボンデコレーションインレイなどの強制装備によるものだ。
ポルシェにフルカーボンシェル、フェラーリにハーフシェル
「ケイマン」には、おなじみのカーボン製フルバケットシートが付属し、価格は5,355ユーロ(約76万円)。そして、フェラーリにはカーボンファイバー製のハーフシェルで、すべてのパッセンジャーのために横方向の力学に適した形となっている。
最終テーマ:ミッドエンジンマジックを持つ全車を比べることはできるか?
でも、一番楽しいのはどのモデルなのだろうか?この4台は価格や車格が異なるため、比較することはできないし、我々は比較する気もない。どれもそれなりに楽しいし、それぞれの良さがある。
アウディ R8: 後輪駆動でより印象的なコーナリングプレイを実現
例えば、「アウディR8」は、後輪駆動であっても、無理をしない限り、基本的に大きな自信を与えてくれる。なぜなら、ここでは、まるでレールに乗っているかのように頂点からコーナーを抜けていく「クワトロ」との違いを知ることができるという利点があるからだ。そのステアリングは駆動の影響がないため、フィードバックが顕著に増し、じりじりと曲がっていくのだ。オプションのダイナミックステアリングの可変レシオは非常にうまく実装されており、滑らかさとタイトさの間の広がりが直感的にフィットする。
コルベット: 日常的な才能を十分に発揮する本物のサラブレッドスポーツカー
コルベットが、日常的な才能にあふれた本物のサラブレッドスポーツカーであることは、明らかだ。さらに、価格性能の面でも簡単に王座を奪取している。ドライビングダイナミクスの面でも、フロントエンジン搭載の先代モデルとはまったく別の次元にある。フロントアクスルからのダイレクトなフィードバック、ヤンキーとしてはかなり意欲的に回転するリニアなエンジン、そして何よりもリアのトラクションが大幅に向上している。「C8」はサーキット走行に尻込みすることなく、日常ではリッターあたり9kmという好燃費でかなりリラックスして走ることができる。
ターゲット層が異なる。ケイマンとコルベットは9万ユーロ(約1,200万円)超、フェラーリはその3倍だ。
フェラーリ296GTB: 天文学的なドライビングパフォーマンスと高いエモーショナルさの融合
「フェラーリ296GTB」は、ごく少数の顧客を相手にしたモデルだ。つまり、カントリーロードでダイナミックに、そしてマンマシンインタラクションにこだわって。ちなみに、この点については、現在追加されている電動アシストでも、誰も騙すことはできない。多くのオーナーにとっては、数ある跳ね馬の中の一頭として、特別な日にしか出番がないのが残念なところだ。でも、やろうと思えばできるというのは、いいことだと思う。特にアセットフィオラノパッケージ(カーボンファイバーの多用、ダウンフォースの増加、サスペンションの再チューニング)をオーダーした場合は、なおさらだ。しかし、それを抜きにしても、その性能は天文学的であり、その感動は別次元のものである。
ポルシェ718ケイマンGTS 4.0: この分野では最も弱いが最も俊敏でもある
そして、今回の出番で一番感性に訴えかけたのは?「718ケイマン」だ。それは、そのボクサーのガラガラ音が素晴らしく魅力的で、「ケイマン」に6気筒を復活させたからにほかならない。ドライビングダイナミクスの面では、「ポルシェ718ケイマンGTS 4.0」は、ここで組み立てられたすべてのミッドエンジン搭載スポーツカーの中で最も俊敏だ。コンパクトで軽く、上質なフィードバックがあり、ポルシェの2台のクーペの中で、最もドライビングに魅力的なモデルだ。確かに「911」は速いが、純粋にフィーリングという点では、弟分の後ろに並ばなければならないのだ。そこには、エンジンレイアウトが大きく関わっているのでは?
結論:
比較?そんなことではない。何しろ、フェラーリはポルシェの2倍以上のパワーを持っているのだから。ここでは、ドライバーの真後ろで咆哮するミッドエンジンだけが魅力だ。欲望の対象としてのパワーハウス。
Text: Alexander Bernt
Photo: autobild.de