アモーレ! 超スタイリッシュなスポーツカー対決 マセラティMC20にマクラーレンGTが挑む 両車はどこがどう違うのか?
2023年2月16日
マクラーレンGT対マセラティMC20: それは“That’s Amore(ザッツ アモーレ)”以外のなにものでもない。しかし、常にスタイリッシュで、十分すぎるほどのパワーを備えている。新型MC20で、マセラティは臆面もなくマクラーレンGTのテリトリーを奪いに来た。まずは両車を比較してみた。
“That’s Amore(ザッツ アモーレ)”。1953年にディーン マーティンが、母国語の英語とルーツのイタリア語を巧みに結びつけ、そのタイトルとなったこの曲は、長い間音楽史に深く根ざしてきたエヴァーグリーンである。
自動車でいえば、ミッドエンジンの「GT」もイタリア語圏が発祥の地だが、最近になってこのジャンルに再び注目が集まっているのは、アングロサクソンの「マクラーレンGT」のせいである。「マクラーレンGT」の精神的な祖先は、1970年代初頭の「マセラティ ボーラ(コンパクト、2シーター、ミッドエンジン、V8)」にあるというのが、同僚たちの簡単な調査結果であった。
そのため、マセラティが新型「MC20」で、まさにこの領域に食い込もうとするのは、もっともなことだ。イタリアンは「GT」のツーリングの才能には勝てないが、2020年の発表会でも、マセラティはあえて「スーパースポーツカー」ではなく、「ウルトラスポーティなGT」を語った。
当時、我々は、ドイツ人チーフデザイナー、クラウス ブッセの筆による美しいMC20が、レーストラックでの初期テストで約束した性能を、達成できないのではないかという心配をしていた。しかし、本誌のスーパーテスト(2022年8月号)で、マセラティはあえて「MC20」を持ち込み、その疑念を一気に払拭したのである。そして、その性能はとても高く、なによりも限界まで運転しやすかったのだ。
マクラーレンのせいで厳しい比較になった
ラウジッツリンクサーキットでのラップタイム、1分31秒41は、2019年にこのサーキットを周回したアウディR8 V10パフォーマンスよりも、コンマ7秒速いタイムとなった。しかし、その一方で、当時の同じテストの「マクラーレン600LT」より2秒も遅いのだ。
ちなみに今回は、マクラーレンがコンセプト上の理由で、「GT」をレース場でのラップタイムや計測値を認めず、本当の意味での比較はできなかった。私たちのインプレッションでは、「GT」は「MC20」と同じレベルにあるのだが、実に残念だ。レース感覚とまではいかないかもしれないが、少なくとも純粋な数字の上では・・・。
一方は630馬力、もう一方は620馬力と、武器は均等に配置され、イタリア製の方が小さなエンジンにもかかわらず100Nmも多くのトルクを発揮するのだ。F1に登場した3リッターの排気量と革新的なプレチャンバー式点火装置を備えた最新のV6エンジンは、まさに傑出したエンジンとなった。ツインターボのコンセプトにもかかわらず、すぐに反応し、そのパワーデリバリーはきめ細かく、コントロール可能だ。
一方、マクラーレンのV8は、もちろん悪いエンジンではなく、まったく逆のエンジンだ。その基本設計が、ここではより慎重に味付けされているだけなのだ。しかし、幸いなことに、ソルト&ペッパー シェーカーには、ボタンや走行モードのロータリーコントロールが用意されており、ドライバーの好みに合わせて辛さの度合いを調合することができるようになっている。ほとんど抑制された快適さ、または釘のように硬い超反応と、ある時点までは、すべてが可能なのだ。
【車両データ】
モデル名 | マクラーレンGT | マセラティMC20 |
エンジン | V8ツインターボ | V6ツインターボ |
排気量 | 3994cc | 2991cc |
最高出力 | 620PS@7500rpm | 463PS@7500rpm |
最大トルク | 630Nm@5500-6500rpm | 730Nm@3000-5500rpm |
駆動方式 | 後輪駆動、7速デュアルクラッチ | 後輪駆動、8速デュアルクラッチ |
0-100km/h加速 | 3.2秒 | 2.9秒 |
0-200km/h加速 | 9.0秒 | 8.8秒 |
全長/全幅/全高 | 4683/2095/1223mm | 4669/2178/1224mm |
乾燥重量 | 1530kg | 1475kg |
最高速度 | 326km/h | 326km/h |
価格 | 198,000ユーロ(約2,800万円)より | 230,000ユーロ(約3,250万円)より |
2速で0から100まで
マクラーレンGTの7速デュアルクラッチのギアのつながりはよく、0から100km/hは2速で簡単に達成できるが、マセラティも8速DCGでギリギリだがこれを実現している。
そのシフトゲートには、巨大なカーボン製のパドルが設置されているが、このパドルはステアリングコラムに固定されているため回転することはない。しかし、その大きさゆえに、他のスーパースポーツカーほどには気にならない。
スペックについてはすでに説明したので、次に走行性能について説明しよう。マクラーレンは、静止状態から100km/hまで3.2秒、200km/hまで9秒というスムーズな加速を謳っている。一方で、マセラティは2.9秒&8.8秒と、よりアグレッシブなアプローチをとっており、これは基本コンセプトに合致している。
ちなみに、「MC20」は我々の計測器でも3秒以下を達成し、時速200kmまでは9.0秒を計測した。これは英国車と同等であるが、ファクトリーの数値は確認する必要がある。
マクラーレンをよりラグジュアリーに、より快適に
しかし、スーパースポーツカーの比較という、通常ではありえないトピックに移ろう。インテリア、いわば「ルック&フィール」だ。その点、マクラーレンは、英ウォーキングのメーカーの曲線的なロゴを身にまとったインテリアとしては、間違いなく過去最高の豪華さと快適さを備えている。
レザーとアルカンターラの組み合わせ、快適なシート、Bowers & Wilkins製のハイエンドサウンドシステムの標準装備、ドアの小物入れ、ネット、カップホルダー、スマートフォン置き場など、ドライブを快適にするためのあらゆる機能が搭載されている。
さらに、”Abyss Black”にペイントされた今回のテスト車では、エレクトロクロミックスイッチャブルガラスルーフ(8,500ユーロ=約120万円)を装備していた。その日の気分で、空がよく見える「GT」と、閉じた屋根の「GT」が存在した。
しかし、このセグメントで真にユニークなのは、トランク、つまり断熱性の高いエンジンカバーの上にあるスペースだ。大型の電動開閉式テールゲートをスイングさせると、まずルーフライン構造のカーボンフレームが露出しているのがよく見える。
マクラーレンが使用するカーボンファイバーは、ただのカーボンファイバーではなく、フォージドコンポジットでなければならないのだ。これを開発したランボルギーニは、このためにおびただしい追加料金を徴収している。仕様によると、420リットルのラゲッジスペースがあり、ゴルフバッグやスノーボード、スキーなどがすっぽり収まるはずだ。さらに、フロントには150リットルのトランクがある。リアのラゲッジルームは少ないように見えるが、長さがあるため実用的な使い勝手は相当なものだ。
MC20 30,000ユーロ(約425万円)高
これは、マセラティでは限られた範囲でしかできないことだ。リアには100リットルの収納スペースがあり、さらに50リットルのミニトランクがある。週末の小旅行ならこれで十分だが、パートナーがあまりに贅沢な荷造りをすると、「クアトロポルテ」のアシスタントがスーツケースを積んで追いかけなければならないことになる。
600馬力超のクーペで収納やトランクルームをこれほどまでに絶賛したことはないが、最後の最後に値段の話をしよう。
マセラティは、「MC20」の発売時の価格を23万ユーロ(約3,250万円)とした。これは、マクラーレンのベース価格、198,000ユーロ(約2,800万円)をちょうど3万ユーロ(約425万円)上回ることになる。使い勝手はウォーキング製スーパースポーツカーに軍配が上がるが、それ以上にエモーショナルで魅力的なのがモデナ製のスーパースポーツカーだ。
結論:
「MC20」が日常の散歩に重きを置いているとしても、2台のGTが似ていることに驚いた。マクラーレンにも魅力がある。570リットルのトランクを持つスーパースポーツカーは、そうそう見つかるものではないだろう。
Text: Alexander Bernt
Photo: autobild.de