名車ランドローバー ディフェンダーTd5 ランディを購入する際に重要なこととは?
2020年5月2日
アイコンモデル ランドローバー ディフェンダーTd5テスト: 購入時のヒントと価格
ランドローバーの名車であるディフェンダーはアイコンだ。今や絶版モデルとなってしまった旧型ディフェンダーに関心のある方々へ、中古ディフェンダーTd5の強みと弱みをお教えしよう!
68年の歳月を経て、200万台以上が生産された名車ランドローバー ディフェンダーは、2016年1月29日についに生産終了となった。しかしそれでも現在でも製造されたランディの約4分の3もの車輛が生存している。2019年には、完全に新しい後継モデルであるディフェンダーL663が登場した。旧バージョンのドライバーの多くは、自分の車に深い思い入れがあるため、新しいバージョンに乗り換えようかどうか苦悩しているに違いない。まさにアイコン的存在のオリジナルのディフェンダーは、個性があり、紛れもない優れた性能と高い耐久性を兼ね備えている。森の中から木の幹を引っ張り出したり、湖の中から救命ボートを引っ張り出したり、救急車として地球上で最も人里離れた場所で人々を救ったりと、他に類を見ない働きを見せてきた。
ディフェンダーとは基本設計が68年も前の車であり、その内容は他の車と大きく異なる。しかし、もしあなたがその本質をあまり知らずに、単に象徴的(アイコニック)だからといって買いたいと思っているのなら、買う前に少なくとも1時間は試乗してみることをお勧めする。そうして初めて、自分自身がローリングアドベンチャーに慣れることができるかどうかが分かるだろう。安全性はほとんどなく、快適性は全くないといってもいいからだ。ランディは、ドライバーを機械のオペレーターに変えてしまう。ディーゼルが稼働し始めるとすぐに、飾り気も何もない不毛のボックスが振動し始める。クラッチを蹴り、ギアを入れる。すべては注意深く、しかし全力で行われなければならない。
ランディの運転はタフな作業だ
ギアの噛み合い、シャフトの回転、ディーゼルの轟音を全身で感じる。市街地を超えた先では、粗いトレッドタイヤとの競争でデフが咆哮を上げ、激しい風切り音が騒音を引き立てる。数キロ走ると、ハンドルを握ったままの窮屈な姿勢からドライバーは腰が痛くなってくるだろう。まるで段ボールでできているかのように感じるドアに非常に近いため、ガタガタと揺れる箱の中で、ドライバーはがらくたの入った箱の中のイワシ缶のように窮屈な座り方を強いられるためだ。
機械的にディフェンダーは頑丈だが、錆びる
耐荷重性に優れたスチール製のスケルトンは、へこみに敏感なリベット加工されたアルミニウム製の外皮の下に鎮座している。この2種類の金属の混合構造は、その2種類の金属を慎重に隔絶する必要があるが、これがまさにディフェンダーに欠けている部分だ。つまり錆に弱い部分が大変多いのである。スプラッシュボード、Aピラー、ウィンドーディフレクター、ダッシュボード、フットウェルは錆に弱いスチール製だ。隣接するマッドガードやフロアプレートなどのアルミ板もガルバニック接触腐食によって腐りやすい。ほぼすべてのランディが、巨大なリアクロスビームにサビが発生している。地形の中で奴隷のように移動しなければならなかった車では、フレームは汚れで満たされ、内側から錆びてしまうこともある。
またランディは、工場を出たときに防水性を備えているとは限らず、年月が経てば防水性が向上するというわけでももちろんない。エンジン、トランスミッション、デフにも普通にオイル漏れが見られる。これはそういうクルマなのだし、オイルが入っていることの証明、と考えて欲しい。
シームレスなスペアパーツ供給
初期のランディは希少価値が高く、コレクターズアイテムとして人気がある。しかしそれはクラシックカーとしての価値であり実用車としての価値では決してない。一方、1998年以降の入手可能なバリエーションは、より現代的なディーゼルや基本的なアシスタンスシステムを備え、日常の使用にも(なんとか)使えるレベルの適合性を持っている。また、1999年以降は、ABSがオプションとして用意され、生産の最後の年である2015年にのみESPも用意されていた。しかしエアバッグは68年間、一度も(!)装備されなかった。フィルターレス5気筒ディーゼルは2007年までラインナップに残り、フォード トランジットから、静かでパワフルな2.4リッターコモンレール4気筒ディーゼルが転用された。2012年以降は2.2リッターとなったが、どのエンジンもうるさい代わりに燃費はどれもまあまあ良い。
なお日本にもV8エンジンのモデルがショートホイールベースと4ATとの組み合わせで正規輸入されたが、その後に輸入されたディーゼルエンジン+ロングホイールベースの組み合わせの車とはまったく別物と考えた方がいいだろう。V8+4ATのモデルは、古いレンジローバーと基本的に同じ組み合わせではあるが、基本的にアメリカ向けにつくられた車であり、タイアなども太く、さらにフォグランプやガードバーなどいくつかの(余計な)装備がつけられていた。
この頃はスティングなどのミュージシャンなどが乗る場合もあったが、おそらくかなりやせ我慢しながらおしゃれを楽しんでいたはずである。もっともおしゃれとは本来やせ我慢と紙一重ではあるから、それを否定する気は毛頭ないが、ディフェンダーの持っている質実剛健で、合目的的な存在意義とはかけ離れたものであったことも事実である。まあそんなカタイことを言ってしまえば、ゲレンデヴァーゲンだって、ジープだって、それらしく乗っている人など1%もいないだろうし、そういう世界への憧れや、ミスマッチ感を楽しむ行為を否定する気は毛頭ない。
ディフェンダーのオフロードでのコンスタントな使用は、結果としてシャシーとラダーフレームに影響を及ぼす。したがって、ドリームカー購入の決め手となるのはその個体の歴史(修理&整備記録)だ。走行距離100,000キロ以下のよく整備された5ドアTd5sの価格は約20,000ユーロ(約240万円)からとなっているが、とにかく程度の少しでも良いものを選ぶことと、買った後も様々な整備をしながら乗らなければいけないことだけは、重ねて言っておきたい。
これは今流行しているSUVなどでは決してなく、必要な人のための道具、あるいは機械という類の車であり、運転にもそれなりの技術とコツを要する。単にファッションだけで購入した場合、後悔することもあるだろう。しかし、この車が大好きで、心からその整備を楽しみながら乗るのであれば、今こそ買っておくべき車であることも事実である。信頼できる整備工場と、いくつかの交換パーツを準備できるのであれば、だれが何を言おうとも迷わずに購入するべきだ。一番欲しいものを購入することが、一番正しいのだから。
Text: Lars Busemann
加筆: 大林晃平
Photo: Thomas Ruddies / AUTO BILD