【このクルマなんぼ?】メルセデスで最もパワフルな市販モデル 15年前のSL 65 AMGブラックシリーズがほぼ新車状態で販売中!
2022年12月30日
メルセデスSL 65 AMGブラックシリーズ、新品状態で販売中。670馬力と1000Nmの強力な6リッターV12ツインターボ。メルセデスSL 65 AMG ブラックシリーズは、長い間、市販のメルセデスで最もパワフルなモデルだった。
「ブラックシリーズ」。メルセデスの中でもごくわずかのモデルにしか与えられない呼称だ。2006年以降、「Black Series」のロゴを搭載したモデルは全部で6シリーズのみだ。2006年、先祖返りで軽視されがちな「SLK 55 AMG」から、すべては始まった。これは、単純に後継機の方が知名度や人気が高いからかもしれない。メルセデス史上、最も残忍なモデルのひとつが、2008年末に発表された「SL 65 AMGブラックシリーズ」である。現在、非常に特別な個体が売りに出されている!
現在、メルセデスのスペシャリストである「メカトロニック(Mechatronik)」は、たった350台の限定生産モデル「メルセデスSL 65 AMGブラックシリーズ」を販売している。特に、極めて希少なカラーである「ファイア オパール」(590U)塗装の「SL 65」は華やかさを放っている。さらに、2008年モデルの670馬力の「SL」は走行距離が500kmと短く、実質的に新車同然だ。
2008年末に登場した「SL 65 AMG ブラックシリーズ」は、先代の「SLK 55 AMG ブラックシリーズ」や「CLK 63 AMG ブラックシリーズ」と同様、アファルターバッハの超限定生産シリーズモデルに注ぎ込まれた労力は大変なものだった。「R230」世代の「メルセデスSLをベース」に、AMGで本物のモンスターを作り上げたのだ。
最大の変更点は、金属製の折りたたみ式ルーフが廃止されたことだ。いわゆるバリオルーフではなく、ロールバー一体型でCピラーを延長した、よりフラットなCFRP製ルーフが搭載された。こうして、ロードスターはクーペとなった。
ノーマルのメルセデスSLとほとんど同じ部品はない
さらに、とにかく小柄ではなかった「SL」は、横幅がかなり大きくなった。フロントフェンダーは14cm広がり、ボンネット、フロントエプロン、トランクリッドと同様、カーボン製だ。120km/hからはリアウイングが12cm伸び、200km/hでは最大50kgのダウンフォースを発生させる。
サイドエアバッグのないスポーツバケットシートや直径15mm小さくなったステアリングホイールと同様に、専用エキゾーストシステムを備えたリアディフューザーや19/20インチの専用鍛造ホイールも、ブラックシリーズの一部となっているのだ。アルミニウム製のドアや内装の個々のディテールだけが、通常の「SL」から受け継がれている。
第3のブラックシリーズの心臓部は、もちろんエンジンだ。ノーマルの「SL 65」に搭載された6.0リッターV12ツインターボ(M275)をベースに、ブラックシリーズでは612馬力では不十分と判断し、ターボチャージャー(スパイラル断面を12%拡大)、インタークーラー(30%パワーアップ)、吸気ダクトを新開発することにしたのだった。
その結果、最高出力は670馬力、最大トルクは1200Nmとなり、5速オートマチック(AMGスピードシフト)ではパワーに圧倒されてしまうため、電子制御で1000Nmに制限する必要があった。
これにより「SL 65ブラックシリーズ」は、長い間、シリーズプロダクションAMGの中で最もパワフルな車となり、静止状態から100km/hまで3.8秒で到達し、最高速度は320km/hという性能も目を見張るものがあった。
「SL 65 AMG」は1,870kgと比較的軽量で、標準の「SL」よりも250kg軽い。パワーウエイトレシオは2.79kg/馬力だ。「ブラックシリーズ」は327,250ユーロ(約4,700万円)から販売されていた。
当初、「SL 65 AMG ブラックシリーズ」は必ずしも投資価値が高いとは言えず、当初は25万ユーロ(約3,600万円)以下で販売されている個体も散見された。しかし、その後、「ブラックシリーズ」の全モデルが価値を高め、現在、ドイツでは「SL 65 AMGブラックシリーズ」は375,000ユーロ(約5,400万円)を下回る価格で販売されていない。
ブラックシリーズは65万ユーロ超の見込み
しかし、メカトロニックが新車として提供するブラックシリーズは、654,500ユーロ(約9,500万円)というから、かなり高価である。希少なカラーはもちろんのこと、走行距離が500kmと極めて少ないことが主な理由だ。
歴史については、これだけしかわかっていない。この車はプライベートコレクションの1台で、実質的に一度も運転されたことがない。装備表を見ると、もともとクウェートに在った車であることがわかり、アラビア語の標識がその事実を物語っている。
「SL 65 AMG ブラックシリーズ」は、今もメルセデスの中でも最も残虐な部類に入ることも事実だ。
Text: Jan Götze
Photo: Mechatronik