公式デビューを果たした新型EV スマート#1に初試乗 ブラバスバージョンは428馬力!
2022年12月11日
スマート#1は、大きくて、電動で・・・。そして、ブラバスは428馬力という驚異的なパワーを持っている。初走行レポート!
「スマート」といえば、全長2.50mのエレファントスケート、「フォーツー」を思い浮かべるが、この「フォーツー」は25年以上前から、最近では電気自動車の「EQフォーツー」として走っている。しかし、新型「スマート」は「スマート#1」と呼ばれ、もはやスモールカーではない。全長4.27メートルと、「VWゴルフ」や「ミニ カントリーマン」のような大きさで、背の高いSUVのフォーマットで登場した。
この点で、「#1」は都市型サブコンパクトの原点と共通するところがある。電気自動車をつくるというアイデアは、すでにスウォッチグループの創業者であるニコラ ハイエックが持っていたものだ。スイスの企業家は、スウォッチの時計を模した電気自動車を街で使いたいと考えていた。VWはこのプロジェクトを望まず、1994年にダイムラー社が買収に参加し、1998年にスマートの権利を完全に引き継いだのだった。
シュトゥットガルトの会社にとって問題だったのは、スマートが長年にわたってカルトカーになったものの、ベストセラーにはならなかったことである。結局、ダイムラー社は中国のパートナーである吉利汽車(Geely)にこのプロジェクトを譲り渡すことになった。今回、スマートは「#1」として復活し、後輪駆動の3つの装備ラインと、スポーティな「Smart #1ブラバス」が用意された。
ブラバス仕様のスマート#1は、なんと428馬力を発生する
そう、スマートとボツロップ(NRW州)のチューナー、ブラバスとの協力関係は続いているのだ。そうすると、デザインだけでなく、性能データもルール地方の方言を話すようになり、より武骨になるのは当然といえば当然だ。フロントとリアのアクスルに搭載された2基の永久磁石モーターにより、ブラバスは全輪駆動のスマートというだけでなく、印象的なパフォーマンスを発揮するマシンとなったのだ。
ブラバスモードで両モーターをフルパワーで稼働させると、428馬力を発揮し、543ニュートンメートルの最大トルクが1.9トンの「#1」を3.9秒で0から100km/hにまで押し上げる。
これは、必要なギアチェンジによって牽引力が中断されることがないため、全くシームレスに行われる。Eペダルを力強くフロアパンの方に押す人は、頭をヘッドレストに押し付けるという予防策を取る必要がある。そうでないと、ロケット発射の際に突然ぶつかる。でも、我々は知っている。後頭部への小さな打撃が、思考力を高めることを。
少ない費用で大きな力を発揮
「#1」のブラバスの加速は、少なくとも価格と同じくらい印象的だ。48,990ユーロ(約730万円)という高さではなく、この価格で同様の性能データを持つ燃焼式自動車が存在しないからだ。
ブラバスのツインモーターは、シングルモーターの兄弟機より速く走れると思っている人は、がっかりするだろう。左右のデジタルスピードメーターには、180(km)という数字が表示されている。
ブラバスがどの程度シャシーに影響を与えているかは、短い初走行では判断できなかった。とはいえ、パワフルな「#1」は路面の凹凸を気持ちよく乗り越え、コーナーを素早く曲がるために十分な引き締めを行うことができるのも事実だ。
高性能電動スマートが限界に達するのは、車軸の間にあるバッテリーの重量が、高速走行で横向きに押し出され始めたときだ。幸いにも、制御システムが巧みに介入し、スマートを安定させる手助けをしてくれる。
スマート#1もモーター1基で本当に速いのだ
もちろん、272馬力を発揮する「スマート#1」は、公道でも速く走ることができる。343ニュートンメートルの最大トルクを後軸にかけると、電気自動車は6.7秒で0から100km/hに到達し、信号待ちでも爽快にスタートできる速さを保っている。特に、どちらの駆動方式も180km/h以上のスピードは出せないので、注意が必要だ。
しかし、スマートのバリエーションは最高速度が似ているだけでなく、66kWhのニッケルコバルトマンガン電池も全車共通だ。最良のケースでは、#1は440km、ブラバス400kmの航続距離を可能にさせる。我々の試乗では、実走行で350km弱であった。
充電には最大150kWが必要で、30分で10%から80%までバッテリーを満たす。22kWのコンセントでは、3時間かかる。41,490ユーロ(約620万円)から購入できる低価格のエントリーモデル「#1 Pro+」のみ、AC充電は7.5kWに制限され、7.5時間が必要となる。
メルセデスがスマートの#1を切り捨てた高級感
外観も内観も、ゴーデン ワグネル率いるメルセデスのデザインチームが仕上げを行った。縁がない、ドアハンドルはポップアップ式。フロントとリアで共通したデザインが印象的で、Cピラーには大きなSmartのロゴがあしらわれている。また、ブラバスはフロントボンネットに2つのエアインテークを設け、スポーティなキャラクターを強調している。
「#1」に乗り込むと、素材選びや作り込みに力が入っていることがわかる。このクラスでは、スマートは高級車である。「VW ID.3」などとは全く違う。
往年の丸型メーターに代わる幅の狭い9.2インチデジタルメータークラスターのグラフィックも文句のつけようがない。見やすく、邪魔にならない色で、とても情報量が多いので、ドライバーは運転に必要なものすべてをしっかりと見ることができる。
また、これらの情報は、要望に応じて、シャープなヘッドアップディスプレイで表示することも可能となっている。センターコンソールのエアベントの上にそびえ立つ12.8インチのタッチスクリーンのグラフィックは、そのソフトウェアがQualcomm 8155チップセットと128GBのメモリを搭載していることもあり、同様に鮮やかで視覚的に成功している。
ナビゲーションシステムの地球儀を回転させたり、AIアシスタントのアバターとしてキツネのアニメーションを表示させたりといった、おちゃめなグラフィックも計算能力があれば可能なのだ。すべてが楽しく、魅力的で、なぜか新しいスマートに似合っている。
スマート フォーツーが新しいプラットフォームで帰ってくる
吉利汽車(Geely)が提供する「Sustainable Experience Architecture」、すなわちSEAプラットフォームもぴったりフィットしている。かつて自動車界でもてはやされたフォルクスワーゲンの「MQB(Modular Transverse Toolkit)」のような柔軟性を備えているのだ。マイクロカー、アッパーミッドレンジ車、3.5~5.5トンの商用車の製造に使用することができるようにできている。また、現在生産中止となっている「スマート フォーツー」のマイクロカーが、新たに電気自動車として発売されることも示唆されている。
結論:
全長4.27mの「スマート#1」は、まさにコンパクトカー。つまり、ブランドがクラスアップしたことを意味している。これは純粋な電気駆動システムにも適用され、267~428馬力の出力範囲となる。今となっては、e-driveのことを考えれば、それほど驚くことではないかもしれない。とはいえ、内燃機関としてこれだけの性能を持つクルマは、42,000ユーロ(約630万円)からという価格で手に入るわけではない。また、「スマート#1」は、コンパクトクラスにはあまりない、良い意味での高級感を持たせることに成功している。これは、シャシーだけでなく、インテリア全体の素材にも言えることで、323リットルのラゲッジルームのフカフカのフェルトにまで及んでいるのだ。
Text: Holger Preiss
Photo: Mercedes Benz AG