【夢のSUV対決】アストンマーティン DBX707対ポルシェ カイエン ターボGT SUVガチンコ勝負 アストンはポルシェに勝てるか?
2022年12月4日
SUVの超絶技巧対決。最高出力707馬力、最高速度310km/h – アストンマーティンDBX707は、このカテゴリーのあらゆる分野でSUVの最高峰を打ち立てた。ドライビングダイナミクスでクラスをリードしているのは、ポルシェ カイエン ターボGTだ。両車をサーキットに招待し、試し、評価してみた。
数年前、ノルトシュライフェ(ニュルブルクリンクサーキット北コース)で、「シビック タイプR」と「メガーヌRS」が性能と記録を競い合ったのと同じようなものである。最もパワフルで最速のSUVはどちらだろうか?
かつては、「ベントレー ベンテイガ スピード」がその座を占め、その後「ランボルギーニ ウルス」がその性能でポールポジションを獲得した。その合間に、720馬力の「ダッジ デュランゴ ヘルキャット」が、ニッチな立場から、”待って、私もここにいるよ”と声を上げたが、ほぼスルーされてしまった。そして、我々は2023年を迎えようとしている。
紛らわしい?ご安心あれ、我々も同じくだ。そして、この狂気のパフォーマンスのど真ん中に、今日の候補である「ポルシェ カイエン ターボGT」と「アストンマーティンDBX707」の2台が、テストのためにサーキットで思い切りダッシュする。
ポルシェのSUVのトップモデル、「カイエン ターボGT」は、最大限の性能を求めるのではなく、むしろドライビングダイナミクスのカテゴリーにその切り札を見いだすのだ。640馬力と決してパワー不足ではなく、最高速度300km/hもカルテット車の中では立派なものだが、さらに筋肉をパンプアップさせたものもある。
DBX707とカイエンターボGTがザクセンリンクサーキットで決戦
707馬力と310km/hの最高速度を誇る史上最速のSUV、「アストンマーティンDBX707」は、少なくともストレートでは最強だ。しかし、コーナリングになると、67馬力弱い「カイエン」が究極の敵になる。ここラウジッツリンクサーキットでは、まだ計測していないが、私たちのホームコースであるザクセンリンクサーキットでは、「ウルス」より1周あたり1.89秒も速いという驚異的なタイムを記録している。
あえて言うなら、超強力な「DBX」でも、ドライビングダイナミクスという面ではその大きさがネックになる。5メートルものSUVでラップタイムを出すのは、いつも厄介な仕事だ。
それでも現代のタイヤやシャシー技術が物理的にSUVのサーキット走行を可能にしたという点では、「力を発揮した」と言えるかもしれないが、レーストラックで2.2トンのというのはやはり重すぎる。
そういうことを前提として、素直にこの2台にアプローチしよう。やはり、第一印象が大事なのだ。そして「DBX」は、極端な話、さまざまなバラエティに富んでいる。ノーマルモデルですら、すでに抑制の効いたデザインではなかったが、「707」ではそのエレガントさの大部分を捨て、アグレッシブなデザイン言語を採用している。
フロントには、悪評高いアウディのシングルフレームが真っ青になるような、巨大な口の開いたグリルがある。そしてその下には、さらにもうひとつのエアインテークを設置した。二重あごを笑う人はいるが、我々にはバットマン映画のジョーカーを思わせるようなニヤニヤした顔をしているように映る。
707はビッグボーイのすべて
リアも、「DBX707」は限りなくファットな印象だ。エアダクトユニットは3層で構成されている。上部には、ルーフの曲線とエレガントに一体化したおなじみのスポイラーがあり、ここでもカーボン製のエレメントがリアまで伸びている。
リアウィンドウの下には、ノーマルの「DBX」でおなじみのお尻があり、これがリアライトの形状を決めている。獣のような音を立てる4本のパイプシステムの下には、カメラマンの中には自転車ラックと勘違いする人もいるほどの大きさでリアから突き出たディフューザーが装着されている。
一方の「ポルシェ カイエン」だが、我々はすでに「ターボGT」が贅沢な味わいであると非難していたが、今度はこのアストンがそれに相当する。それに比べると、ツッフェンハウザーのモデル中、最もパワフルな内燃機関モデルである「カイエン」は、ほとんど目立たない存在に見える。もちろん、こちらにもこだわりはある。まず目を引くのは、特別色「ネオンダイム(Neodyme)」の22インチホイールだ。加えて、ルーフスポイラーの2枚のカーボンファイバー製エンドプレートもそうと言える。
ターボGTはほとんど目立たなくなった
また、リアのリトラクタブルウイングには、ティアオフエッジが追加されている。底面のディフューザーは、よりテクニカルで控えめなものとなり、チタン製のきらめくブルーのツインチューブシステムが前面に押し出されている – そしてそれは音響面だけではなく実際にパワーアップにも有効である。
「ターボGT」はカイエンの中では圧倒的に目立つ存在だが、「DBX707」と比較すると、ほとんど目立たない印象だ。インテリアも、アストンが贅沢なレザーを使っているのに対して、ポルシェのインテリアは技術的なものだ。直線的なライン、大量のレーステクノロジー、ステアリングホイールのセンターマーカー、優れたインフォテイメント – 「ターボGT」はあらゆる場面でその本領を発揮する。
【車両データ】
モデル名 | ポルシェ カイエン ターボGT | アストンマーティンDBX707 |
エンジン | V8ツインターボ、フロント縦置き | V8ツインターボ、フロント縦置き |
排気量 | 3996cc | 3982cc |
最高出力 | 640PS@6000rpm | 707PS@6000rpm |
最大トルク | 850Nm@2300~4500rpm | 900Nm@2750~4500rpm |
駆動方式 | 全輪駆動、8速AT | 全輪駆動、9速AT |
0-100km/h加速 | 3.3秒 | 3.3秒 |
最高速度 | 300km/h | 310km/h |
全長/全幅/全高 | 4942/1995/1636mm | 5039/1998/1680mm |
乾燥重量 | 2220kg | 2245kg |
価格 | 205,003ユーロ(約3,000円)より | 238,500ユーロ(約3,500万円)より |
【車両データ】
モデル名 ポルシェ カイエン ターボGT アストンマーティンDBX707
エンジン V8ツインターボ、フロント縦置き V8ツインターボ、フロント縦置き
排気量 3996cc 3982cc
最高出力 640PS@6000rpm 707PS@6000rpm
最大トルク 850Nm@2300~4500rpm 900Nm@2750~4500rpm
駆動方式 全輪駆動、8速AT 全輪駆動、9速AT
0-100km/h加速 3.3秒 3.3秒
最高速度 300km/h 310km/h
全長/全幅/全高 4942/1995/1636mm 5039/1998/1680mm
乾燥重量 2220kg 2245kg
価格 205,003ユーロ(約3,000円)より 238,500ユーロ(約3,500万円)より
「ポルシェ カイエン」のライバルである「DBX」では、あなたが大胆にアクセルを踏んだ時にいつもその加速の大きさに気づく。「DBX」のリアクションは、スポーツシートに飲み込まれるような感覚で、腕が長く伸び、目が大きく見開かれる。だが、今回の「DBX」はまだその性能を証明できていないし、その性能を証明する必要がある。
レーストラックでは確かに、特に中速コーナーおいては、どちらも重量を隠すことはできないが、「カイエン」は常に、より拘束力があり、没入感が少なく、アスファルトとより直感的につながっているように感じる。「707」でクイック ラップすると、その差がより理解できる。
「カイエン」のスーパーテストでは、100km/h到達時間3.3秒をコンマ1秒更新したがギド ナウマンも「このポルシェ カイエン ターボGTは、データだけではなく単純に走りがそのものも良い」とテストドライブの最後にまとめて、感心していた。
そんなポルシェの「カイエン ターボGT」の価格は、205,003ユーロ(約3,000万円)だ。だが、その価格には、PASM(ポルシェアクティブサスペンションマネジメント)付きアダプティブエアサスペンション、極めて効率的なロールスタビライゼーション、リアアクスルステアリング、セラミックブレーキ、チタン製スポーツエグゾーストシステムが標準装備されている。
707は3万ユーロ(約440万円)以上高い
アストンマーティンでは、ほとんど無限のカスタマイズ手段とは別に、「フルキャビン」が提供される。それはロール補正機能を備えたアダプティブエアサスペンションで、22インチのアルミホイールの後ろに420mmのフロントセラミックブレーキシステムと同様に標準装備されている。
装備の面では、コンフォートエクストラはほぼ同等ではあるが、もちろんアストンマーティンは、これに見合った対価を支払っているのだ。ゲイドンの紳士たちは、市場で最もパワフルなSUVに対し、少なくとも238,500ユーロ(約3,500万円)の対価を求めている。
そして、今回の対決はこれからどこへ向かうのか?「ランボルギーニ ウルス」をこの戦いに加えることもできる。心の中に悪魔のようなものを持っている666馬力の「ペルフォルマンテ」は、100km/hまでの加速は3.3秒だが、最高速度は306km/hにとどまる。だから、この運転比較は、単純に三つ巴の戦いになってしまうのだ。それなら?フェラーリからの新型高性能SUVの到来を待ちたいと素直に思う。
結論:
第一印象は、「707」は縦方向のダイナミクスを重視し、「ポルシェ カイエン ターボGT」はコーナリングの才能でその名に恥じないようにしたい、というものだ。しかし今回の車両の「DBX」では、まだ素晴らしいタイムを出せることを証明していない。
【ABJのコメント】
アストンマーティンとポルシェのオプション装備を加えると4,000万円近くになる大型SUVの対決。もちろんここまでのクラスの自動車になれば、好きなブランドを選べばいい、というごく当たり前の結論になってしまう。おそらくハードウエアとしての完成度を真剣に比較検討して選ぶ人はいないだろうし、絶対的な数値で決めるような話ではない。あくまでも自分が好きなブランド、希少性、あるいは好きな形(!)で選ばれる商品であって、あくまでも結果は結果、こういう超高性能高級SUVをサーキットにもちこむ、というエンターテインメントな話題として読むべきコンテンツである。
実際問題として、ここにも記されている通り、これだけの高性能で重い車をサーキットで走らせていったいどうするのか、という矛盾は最後まで残るわけだし、おそらくそういう使い方をするオーナーはほとんどいないであろう(高価なタイヤはあっという間に丸坊主状態だ)。
そういう意味では、自動車そのものも矛盾に満ちたエンターテインメントな自動車だし、テストも同じこと。だがこういう自動車の比較テストが面白いのも事実だし、いったいどっちのほうが良いのかを聞いてみたいのも本音である。結論としては、どうやら「ポルシェ カイエン」の勝ちらしいが、その結果に意外と多くの人は「やっぱり」と思ったかもしれない。アストンマーティンは数値的な性能ではない自動車・・・。昔からそういう立ち位置だし、おそらくアストンマーティンが大好きな人からしてみたら、「ポルシェ カイエン」なんて街にあふれている、と言われて話はおしまいになってしまうような気がする。(KO)
Text: Alexander Bernt
加筆: 大林晃平
Photo: autobild.de