【ひねもすのたりワゴン生活】ちょいとひねくれ。軽井沢の秋物語  その2

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上信越道で出会った御年88歳の激ウマ弁当

 ルートは外環道路経由で、関越自動車道へ。藤岡I.C.から上信越道に入り、碓氷軽井沢I.C.で降りて軽井沢…というコースをとった。
 上信越道に入ったあたりでさすがに空腹を覚え、トイレ休憩も兼ねて、横川のサービスエリアに寄ることにした。いつもの行き当たりばったりの旅だから、どこに入ればどんなものが食べられる…なんて調べてもいない。晩にはホテルの洋食が待っているから、蕎麦やうどん等で軽く済ませようと、クルマを停めたのだが、トイレに向かうと妙なものが目に入った。ゴミ箱のような大きなワゴンに、丼ぶりがたくさん入っている。近寄ってみると、「峠の釜飯」の容器の回収箱だった。

横川のサービスエリアに入ると、釜飯の回収ワゴンが目に入った

 関東周辺の方ならご存じだろうが、峠の釜飯といえば人気の駅弁。昭和33年に信越線横川駅で発売され、今なお絶大な支持を集める。益子焼で有名な栃木県の益子で焼かれた素朴な容器が旅情をかきたて、累計は1億7000万個にのぼるという。
 素焼きの土釜は米1合を炊くのにちょうどよいサイズ。家に持ち帰って、炊飯や調理を楽しむ方も多く、この窯を使ったレシピがネットを賑わせている。使用済みの容器は回収して再利用したり、益子に運んで粉砕し陶土に混ぜ込んでいるらしい。
 そんな峠の釜飯だが、ここで食べられるとは思っていなかったので、異論なくお食事タイムに…。売り切れのことも多いらしいが、平日と言うこともあって今回は難なく買えた。
すると、売り場でちょっと気になる弁当を発見。

この装い…たまりませんよねぇ。異様なオーラを発しておりました

 包み紙が妙にレトロで郷愁を誘う。鶏めし弁当と書いてあって心が疼いた。調べてみれば、なんと発売は昭和9年!88年もの間、売り続けられてきたことになるが、まったく知らなかった。ちなみに、鶏料理の伝統がある九州出身の先代主人が発案したのだという。
 茶飯、鶏そぼろ、鶏の照り焼き、コールドチキン、海苔、赤こんにゃく、舞茸入り肉団子、栗甘露煮、かりかり梅、わさび風味野沢菜漬け…あまりの完成度に驚かされた。主菜である鶏肉の活かし方から、おかずの種類、バランスまで文句のつけようがない。なんと鶏は、そぼろ、コールドチキン、照り焼きと、調理法を変え、茶飯の上に乗っている。家に持ち帰ったら、これだけで酒が楽しめる陣容だ。さらに、照り焼きは海苔を敷いた上に乗せるという凝りようで、作り手の弁当愛に胸を打たれる。
 茶飯の味は鶏たちをじゃましない絶妙な加減。すべてが計算され尽くした逸品で、いやぁ、これで1100円とはおそれいりました。
 88年前から変わらぬ味なのか…時代に合わせて変容して今の姿があるのか…気になるところだけど、崎陽軒のシウマイ弁当と肩を並べると言っても過言ではない。どうやら、このサービスエリアと高崎駅、製造元の本社のみで販売らしいが、都内でも売ってくれればいいのに…。
 そんなわけで、峠の釜めしの影が薄くなってしまったけれど、共に心を温める老舗弁当。このふたつを同じ場所で楽しめたのだから、この旅は幸先がいい。

おなじみ、峠の釜めしも健在。変わらぬ姿に癒される
ふたを開けるといつもの顔ぶれが…ほっこりする瞬間

Text&Photo:三浦 修

【筆者の紹介】
三浦 修
BXやXMのワゴンを乗り継いで、現在はEクラスのワゴンをパートナーに、晴耕雨読なぐうたら生活。月刊誌編集長を経て、編集執筆や企画で糊口をしのぐ典型的活字中毒者。

【ひねもすのたりワゴン生活】
旅、キャンプ、釣り、果樹園…相棒のステーションワゴンとのんびり暮らすあれやこれやを綴ったエッセイ。