映画バックトゥザフューチャーとデロリアン物語 シトロエンDSも出てくるよ

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裏話 バックトゥザフューチャー デロリアンDMC-12 シトロエンDS

デロリアンと、この映画のちょっとした裏話を交えて紹介したい。
さあ、時計をシンクロナイズさせて、旅立とう!

今から35年前の1985年、ドク ブラウンと友人のマーティ マクフライは、タイムマシンに改造されたデロリアンに乗って2015年10月21日に旅した。もう2015年からは5年が経過したが、当時考えられた未来は、現在の私たちにどれだけ近いものなのだろうか?Photo: dpa

今回の案内人はオリバー ウィルツだ。

オリバーは学生時代にアルバイトとして、この映画に使用されたデロリアンのオリジナルモデルを撮影用のタイムマシンに変換する作業に携わった経験を持つ。その際に、彼は映画の小道具担当のボスから、数多くの秘密を受け取ったため、現在この映画に関して、詳細にそれを検証・報告することのできる世界で唯一の人物と称されている。

あなたがすでに普通のデロリアンを所有している場合には、タイムマシンへの改造の楽しみは約20,000ユーロ(約250万円)もあれば十分。
やらなければならないことは、ドリルで穴をあけたり、ネジを埋め込んだりすることではなく、主に接着剤を使った作業であり、不要になったあとは残留物を残さずに完全に除去し元に戻すこともできる。さらに内装など、より本物に近づけるような「完全な改造」には、約50,000ユーロ(約625万円)の費用がかかるという。
Photo: Christoph Boerries

3部作の第1部では、試験的に犬のアインシュタインを1人(1匹)乗せ、遠隔操作でタイムトラベルをしていたのをおぼえている方も多いと思う。ドク(ドク ブラウン)は、このリモコン(プロポ)を介してマシンをコントロールしていた。今ならスマホかもしれない。プロポの上の後付け数字カウンターは、スピードメーターだったはず。
Photo: Christoph Boerries

その進歩性と未来性を映像で表現するために、80年代にはできるだけ多くのフラッシュライトを使用することが重要だった。むろん当時は、このような、照らされたブロックグラフィックスイッチが主流だった。手書きではあるが、きちんと様々な使用法(?)が書かれたスイッチや、カルバン クラインの空き箱を使用したボックスにも注意。(カルバン クラインは当時、最先端のおしゃれだったのである)。
Photo: Christoph Boerries

最初のタイムマシンの燃料は、プルトニウムだったが、映画のラストシーンでは、空き缶やゴミを再利用するためにコーヒー グラインダーで挽いた有機廃棄物によって供給された。なお、それにより生みだす、必要な電圧は 1,21ギガワット。それがどれだけ強いエネルギーなのか、凡人には想像もつかない。
Photo: Christoph Boerries

メーターパネルなどはオリジナルだが、センターコンソールに積み重ねられた次元転移コントロールパネルや、その上の様々なスイッチや計器、目覚まし時計などが、それっぽさを演出する。ダミーとはいえワイヤーハーネスの束ねられ方や、手前のコントローラーのつくりなどは、なかなか上質な仕上げである。
改めて見て思い出したが、そう、このデロリアンはMTだった!!
Photo: Christoph Boerries

長い歳月を経て、復元されたデロリアンのタイムマシンとオランダ人のミッチェル サブローレ氏が所有する、DSをベースにしたオリジナルの未来タクシーが合流した。どちらもミニカーが存在するほどの人気者である。
Photo: Christoph Boerries

映画の中では、DSはほんの少しだけしか登場しない。しかし、それにもかかわらず細部にまでどれだけの愛情と時間が費やされたのか、感心させられる作りのよさだ。糊付けされたヘッドライトの縁取りは、他の映画用コンポーネンツと同様、非常に壊れやすいものだし、他の部分ももちろん悪天候や、通常走行に耐えられるものでないことは言うまでもない。
Photo: Christoph Boerries

「トランペット」と呼ばれるオリジナルのDSターンシグナルは、膨らんだ赤いプラスチックのルーフの下に消えてしまったため、クラシックなテールフィンのキャデラック用葉巻(テールライト)に置き換えられた。上のFRP(?)部分のアップで、だいたいの質感が理解できる。
Photo: Christoph Boerries

映画の中では映らなかったが、こんな内装の部分まで作られていた。「着陸前に使う」装備らしい。部分的に剥ぎ取られたステアリングホイールにも注目。

内装は、アメリカンダイナーのようにおしゃれ。フットレスト?などもちゃんと用意されていた(さすがにシートベルトはないけれど)。

リヤビューも、DSの面影は残ってはいるが、様々な装備で満載。こういうのを作るデザイナーは、さぞ楽しんで作ったのだろうなと思わせるような楽しさだ
Photo: Christoph Boerries

タクシーの料金メーターにはビフ タネンがチェイスのために支払った元のままの174.50ドルが表示されている。映画の中のちょっとしたドライブには十分な金額だ。 左側のモニターはナビシステム。料金などを操作するスイッチ(?)がなんとも未来的な形だ。
Photo: Christoph Boerries

技術は古そうだが、未来にふさわしい内装。太いホースとタクシーメーターの間のコックピットには巨大なナビゲーションシステムが設置されている。ちなみに、
映画の中で老いたビフは、現金を持たずにタブレットコンピューターで旅費を払っている。時代はとっくにキャッシュレス、だったのである。
さすがに足元だけはオリジナルのペダル配置。シートはどうやらレカロLSあたりをベースにした形状である。
Photo: Christoph Boerries

いうまでもなくオーナーのミッチェル サブローレはこのミライタクシーを公道上で使うことができない。映画用のクルマの場合は当然ながら、あくまでも撮影のための改造をされているにすぎず、走るためのことなどは考慮されていないからだ。
Photo: Christoph Boerries

マーティ マクフライが映画タクシーのハンドルを握っている? 少なくとも、映画の中ではなかったシーンだ。
Photo: Christoph Boerries

次にタイムマシンとなったデロリアンDMC-12は、実際にどこから来たのか?
その由来に迫る。
Photo: Universal Picture

ジョン デロリアンは、自分の名前のついた、オリジナルのスポーツカーを作る夢を持っていた。1975年、彼は北アイルランドのダンメリーにDMC(De Lorean Motor Company)の工場を開設した(本社は米デトロイト)。
そして1981年1月、彼は最初の市販型DMC-12の生産を開始する。
Photo: Götz von Sternenfels

DMC-12の極端なウェッジシェイプは、ジョルジェット ジウジアーロがデザインしたもので、70年代の終わりという時期にはスペシャルなデザインだった。デロリアンと彼のチームが彼らの希望に沿ってデザインしたDMC-12は、ポルシェがデロリアンからの開発依頼を断った後、ロータスがわずか25ヶ月で生産にこぎつけた。
しかし時間がなかったため、当初のアイデアはほとんど実現されなかった。
この図は、映画の資料で、真ん中に次元転移装置(フラックス キャパシター)の絵がかいてある。
Photo: Universal Picture

DMC-12は、ロータス エスプリに近いシャシーで作られた。ミッドエンジンの代わりにリアにエンジンを搭載したことがデロリアンのハンドリングに悪影響を与えた。
また、エンジンのパワー不足は否めなかった。プジョーとルノーとボルボから引き継いだ(PRV)2.8リッターV6の触媒コンバーターバージョンは132馬力しか出なかったためだ。1.3トンのスポーツカーにとっては少なすぎるパワーだった。

それにもかかわらず、DMC-12は今でも非常に特別な存在であり続けている。もちろん映画がその存在に、はかりしれない影響を与えたことは言うまでもないが。
1981年から1982年の間に8583台しか製造されなかったDMC-12は、そのすべてに、ファイバーグラス製ボディワークの上にステンレススチールのボディが載せられた。このことは、今日でも絶対的にユニークなセールスポイントとなっている。
この車の場合、ワックスではなく、きっとジフなどのクレンザーで磨くのが一番なのだろう。

スタイルで特徴的なのは、ガルウイングドアだったが、これがしばしばトラブルを引き起こした。DMC-12は、当初の需要が高かったため、多くのデロリアンが突貫工事で製造され、かなりの数の低品質のものが市場に出回った。そしてその出来映えの低さには、所有者の多くに苦労を強いた。

これにより、顧客の不満が高まっていった。そして80年代初頭の経済危機が致命傷となり、1982年12月、すべては終わってしまう。DMCは破産を申請しなければならないほどに売れなかった。
Photo: Götz von Sternenfels

脚本家で監督のロバート ゼメキスの作った、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作は、デロリアンDMC-12の記念碑となった。
原子炉とフラックスコンデンサーのおかげで、デロリアンはタイムマシンに変身する。そしてこのことによって、デロリアンを特別な自動車として、世界中の多くの人の記憶に刻むことができたといえる。
Photo: dpa

時速88マイル(141.6km/h)で、タイムマシンデロリアンは、あっという間に30年前の過去に飛び、納屋の真ん中に着地する。そこから先は、タイムパラドックスさえも満載の話の始まり、だ。
Photo: Universal Picture

(VTRの機械を見て)「ロナルド レーガン??あんなへぼ役者が大統領になるなんて…、こんな機械があれば故だな」
Photo: Universal Picture

Photo: dpa

納屋に不時着した後、車の後部にある原子炉が破損した。しかし、1985年まで遡るのに1.21ギガワットの電力を必要とする。1955年の時代にあり得ないエネルギー量だ。そこで落雷のエネルギーを使用してその電流を得ようとする、というのが、ものすごく大雑把に解説したストーリー。
Photo: Universal Picture

未来へ。バックトゥザフューチャー第2部より。
未来仕様のデロリアンはタイアを90度回転させることにより、空を自由に飛ぶことが可能になった。それっぽい婦人警官も未来仕様の制服。
Photo: Universal Picture

過去へ。バックトゥザフューチャー第3部より。あるいは、バックトゥザパースト?
幌馬車時代には、ちゃんとホワイトリボンタイアを履き、SUVのような車高となっている。
Photo: Universal Picture

映画用に作られたミニチュアモデル。細かい部分までかなり精巧に、凝って作られている。ドクとマーティの洋服もめちゃくちゃリアル。
なお撮影には本物のデロリアン7台に加え、この写真のような5分の1スケールのモデルも作られ、タイムマシンの最終的な破壊シーンには、このモデルが使用されている。
Photo: Universal Picture

これは、最終シーン用の空を飛ぶデロリアンの模型。カラーリングなども大変リアル。
「車のアクロバティックな技と花火のような、派手な演出が必要なスペシャルショットはすべてこのモデルを使用した」と監督は振り返る。ジョージ ルーカスの特撮部門「インダストリアル ライト アンド マジック」(ILM)がトリックを担当した。
 
Photo: Universal Picture

第3部での、デロリアン号を蒸気機関車が88マイルまでプッシュするシーンの撮影風景。あれは精巧なミニチュアだったのだ!!
うしろのいかしたカメラカーがとても気になる。
ロバート ゼメキス監督(中央)が、すべての特殊効果を入念にチェックしている。
Photo: Universal Picture

Photo: Universal Picture

3部作には合計で7台のDMC-12が使用されたという。
「最も難しかったのは、タイムマシンを使って、できるだけ自作の印象を与えることだった」とゼメキス監督はインタビューで語っている。脚本家のボブ ゲイル氏(写真)は、車からリアパーツとリアウィンドウが取り外され、インストルメントパネルが作り直された。タンクの内部は移動されたと教えてくれた。
Photo: Universal Picture

「バックトゥザフューチャー」の3つ作品は、合計で1000億円以上の興行収益を上げた。著者で脚本家であるボブ ゲイル(写真)とロバート ゼメキス監督にとって、デロリアンDMC-12は、おそらく彼らの映画シリーズの大成功のもっとも大きな要因だったともいえる。
Photo: Universal Picture

これは映画で一躍大人気となった空飛ぶスケート(ホバー)ボード(マテル社製)。もちろん映画のように作動するわけではないが、洒落として大変いい感じである。
Photo: Christoph Boerries

映画に登場したナイキのスニーカーも限定発売された。ファンの中には偽のパワータブ(もちろん飾り)が付いたナイキのシューズ限定初回版に、1万ドル(約110万円)も払っていた人がいたが、むろん映画のようにセルフクロージング(自閉)としては機能しない。
Photo: Christoph Boerries

しゃべって、自己調整して、必要に応じて乾燥さえも自分でおこなう自動のジャケットはまだまだ実用化には程遠い。だが映画の中では魅力的で、未来へ向けてのいかしたジョークだった。
なお、この洋服の正式名は「バックトゥザフューチャー・ジュニア・マレーネシーマス・マーティンマクフライ・コスプレジャケット・オレンジコート」と超長い。
Photo: Christoph Boerries

モデルカーだけでなく、ゲームやアクションフィギュアなどが無数に作られた。
この写真はドクとマーティのフィギュアと彼らが乗った未来タクシーのノレブ製1:24モデルだ(世界 500台限定)。屋根が外れて内装が見えるのがミソ
Photo: Christoph Boerries

Text: Stephanie Kriebel、大林晃平