【初テスト】ヘビー級SUV ベントレー ベンテイガとBMW X7フェイスリフトをアメリカで初試乗 そのドライビングレポート
2022年10月2日
XXLサイズSUV: ベントレーとBMWにさらなる厚みを持たせる。ベントレーのベンテイガやBMWのX7は、どちらもまさにヘビー級で、両メーカーにとっては大きなビジネスになっている。1台はロングホイールベース、もう1台はフェイスリフトモデルだ。
あなたは痩身マニア?まさか!?自動車の高級クラスでは、大きなかたまりこそが重視される。最近、菓子屋で見つけた「A little fat is not so slim」というモットーに忠実に、ベントレーは最近SUVの「ベンテイガ」のLWBモデルを追加し、BMWはSUVのX7をリフレッシュさせた。
我々は、このクラスのクルマでさえまだ可憐な印象のあるアメリカで、両モデルを初めて試乗してみた。
しかし、新型「ベンテイガEWB」は決して可憐ではない。この3文字は「Extended Wheel Base(延長されたホイールベース)」の略で、イギリス車の全長を18cm伸ばしたことを意味している。
ロサンゼルスのホテル近くのドライブウェイには、XXLサイズのベントレーが、従来の兄弟車とともに試乗のために待機しており、特大のリアドアですぐにそれと区別できるようになっている。
Bピラー裏の余分なスペースはすべて後席乗員のためのものだ。「EWB」では、いわゆる航空会社のファーストクラスのシートに座っているようなものだ。明らかに、ベントレーは休日の飛行機のエコノミー席の真ん中を意識したのではなく、カーテンの前のトラベルクラスを指向している。
ベントレーは快適な場所
シートは電動で22段階に調節でき、折りたたみ式のフットレスト、リクライニング機能、オートエアコンも装備されている。体温と表面湿度を検知し、シートヒーターとベンチレーションを自動調整する。
そう、この空間はとても居心地がいいのだ。自分たちでハンドルを握らないなら、シャンパンをごちそうになりながら楽しむこともありだ。しかし、このままでは、柔らかいクッションに頭を乗せ、足を組み(身長1.97mの筆者でも上手に組める)、なぜベントレーがこのような苦労をしたのか、考える。
しかし、それこそが、ベントレーが高級ライナー「ミュルサンヌ」の生産を終了し、当分の間、後継車の目処が立たないという理由でもあるのだ。「ベンテイガ」はブランドのフラッグシップとしての役割を担っており、「EWB」はリムジンの代わりとして、特に後ろに座ることがマナーであるアジアのお客さまなどにふさわしい車を提供したいと考えている。
前席は? ドライバーの仕事場はショートバージョンのモデルと同じで、ロングバージョンも標準車と同じように機敏に動く。重量2.5トン、全長5.13mまたは5.31mの「ベンテイガ」は、パワフルで、ダイナミックさは失われていない、といえるだろう。
4リッターの排気量と550馬力の出力
ボンネットの下には、フォルクスワーゲングループ全体で使用されている、排気量4リッター、最高出力550馬力のV8が搭載されている。「ベンテイガEWB」を5秒以内に0から100km/hに到達させ、最高速度を290km/hにするのに十分なパワーだ。別途、12気筒エンジンは、アメリカとアジアの顧客のために用意される。
さて次は「X7」に試乗しよう。ベントレーのエアラインシートから、本物の飛行機のシートに移動して、東へ東へ、たっぷり5時間。BMWが巨大な工場を持ち、主に「X3」以降の「Xモデル」を製造しているスパルタンバーグへとたどり着いた。
ここ、そしてもちろんミュンヘンでも、彼らはこの数ヶ月間、「X7」のフェイスリフトバージョンに熱心に取り組んできた。そして、通常のモデルアップデート以上のものをもたらした。新型「X7」は、電動SUVの「iX」をより指向した、新しいフロントエンドを与えられ、細いデイタイムランニングライトでシャープに前を向いたのだ。
インテリアも大きく刷新され、新たにフェイクレザーを採用した他(ただし、ドイツでは希望者のみ)、コックピットにメータークラスターとインフォテインメント画面を曲面ガラスパネルで一体化した「カーブドディスプレイ」を追加している。
X7に搭載された最新のエンターテインメント機能とアシストシステム
さらに、最新のエンターテインメント機能やアシスタンスシステムも搭載している。X7は、走行距離50mを200mまで自動で逆走することができるようになり、狭い路地で立ち往生したときに便利だ。
また「X7」が自ら自立走行することさえ可能となっている。車庫入れから自分の駐車スペースまでの道を一度教えておけば、将来、ゲートの前に立ったとき、保存した操作を選択するだけで、「X7」はまるで魔法にかかったように駐車スペースまで移動してくれる。
もうひとつの新機能は、少なくともBMWにとっては、トレーラーでの操縦をより容易にする「トレーラーアシスタント」だ。iDriveのノブで方向を設定すると、BMWが自動的にトレーラーを後方に移動させてくれるようになっている。
BMWは、6気筒と8気筒のエンジンをほぼゼロから開発し、駆動の多様性と内燃機関への明確なコミットメントを表明している。
「X7 40i」に搭載された3リッター直列6気筒は、ミラー燃焼プロセスを採用し、新しいバルブ制御システムなどが与えられ、48ボルトのマイルドハイブリッドシステムを搭載するまでに拡張された。
12馬力のエレクトリックスタート
12馬力の電動モーターはクランクシャフトに直接取り付けられており、例えば「X7」を電動でスタートさせることができるようになっている。加速時には、電動モーターが最大200ニュートンメートルで押し出し、ローリングやブレーキ時には、エネルギーが回収される仕組みとなっている。内燃機関の出力は40馬力アップの380馬力、平均燃費は10.4km/ℓにまで改善している。
ブルーリッジ山脈の麓で行ったツアーでは、クリーミーな6気筒エンジンは以前よりもさらにスムーズで、スロットル操作にダイレクト感があり、スイス時計のように滑らかにパワーを発揮した。唯一目立った遅れは、突然パワーが必要になったときに、ギアボックスがギアチェンジするのに少し時間がかかることがあることだった。
しかし、それは最高レベルの不満であり、「X7」が森の中をゆったりとクルージングし、その質量にもかかわらずコーナーでスムーズにステアリングを切ることができると、すぐに忘れ去られてしまう。
BMWは、4.4リッター V8については、「M50i」ではなく「M60i」と呼ばれるようになり、最適化されたターボチャージャー、強化されたクランクシャフト駆動、シリンダーバンク全体に広がるエキゾーストマニホールド、さらにマイルドハイブリッドシステムなどの改良により、レスポンスとパワーデリバリーが向上している。パワー面では、先代から知られる530馬力を維持しながら、Eブーストが巧みにサポートすることで力強い走りを見せる。
V8は直6に比べ、滑らかさでは決して劣らず、さらに強調された、のど越しの良いサウンドを奏でる。しかし、その音は、ヨーロッパでは今やほとんど聴くことができないものだ。352馬力の6気筒ディーゼルは、今後も最も重要な役割を果たし、マイルドハイブリッドとしても利用できる。
アメリカの東海岸と西海岸は約4,000km離れているからというだけでなく、2台のクルマ、2つの世界。両者が訴求するターゲット層は全く異なる。
7人乗りの「X7」は、サッカーの練習に息子や友人を送り出すサッカーママの家族の味方であるのに対し、「ベンテイガ」は決勝戦まで送ってもらいたい選手の奥さんの味方と言えそうだ。
「X7」が97,700ユーロ(約1,380万円)からなのに対して、「ベンテイガ」は200,000ユーロ(約2,800万円)ほど。しかし、両者に共通しているのは、数kgの体重増とホイールベース延長で実にセクシーな車に仕立て上げていることだ。
【ABJのコメント】
先日、家の近くの粗大ごみ集積場に、いつも愛用している軽自動車で処分品を運んでいたら、私の次の人が「ロールス・ロイス カリナン」で大きな家具を捨てにきていておったまげた。白い内装の「ロールス・ロイス カリナン」に積まれた家具はかなり大きなものだったが、白いその内装が汚れちゃうじゃんよとも思ったし、そもそも粗大ゴミ集積場に、ロールス・ロイスが来るなんて、係の人にとっても空前絶後のことだっただろう。まあファントムで捨てにこなかっただけほっとした(?)が、フライグレディにとって初めて見るはずの横浜市ゴミ集積場はどう映ったのだろう。
それほど今はSUV全盛ではあるが、今回の2台はヘビー級のSUVであり、本文にもあるように、ショーファードリブンとしても使える2台である。ショーファードリブンとしても使えるSUV・・・。それはそれで、なんだか違う気もするし、正直そういう使い方ならもっと他に車種はあるでしょうに、とも思うが、とにかくこういうSUVを一種の「ハズシ」で運転手付きで使う人もいる、そういう世の中なのではあろう(と思うことにしたい)。
「ベンテイガ」も「X7」もおそらく乗って快適、乗せられて快適な自動車だから、どちらを選んでも間違いはないし、あなたのお好きな使い方で、運転席でもリアシートでも座る位置は自由に選んでいいと思う。まあ今回の2台は価格で2倍以上もの開きがあるから、比較テストにはならないし、どちらも比較テストなど望んではいないだろう。安いとは言ってもなんだかんだで、1,500万円以上もする「X7」が悪いはずもないし、そもそも「ベンテイガ」をハード面だけで評価してどうするのよ、とも思ってしまう。お好きなブランドのお好きなほうをどうぞ、と言いたいところだが、粗大ゴミ集積場にはどちらも行って欲しくないとも思う。せっかくだから大型ヨットの停泊するマリーナとか、大きな別荘に向かってほしい。(KO)
Text: Michael Gebhardt
加筆: 大林晃平
Photo: BMW Group