【初テスト】高性能プラグインハイブリッドモデル 新型マクラーレン アルトゥーラに初試乗 そのドライビングインプレッションと評価

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アルトゥーラは、マクラーレンとっての未来への道である。マクラーレンは、ハイブリッド技術で未来へと走り出す。マクラーレンにとってe-powerは省燃費技術であると同時に、より高いパフォーマンスを発揮するチャンスでもあるのだ。

メーカーが新しいプラグインスポーツカーを発表すると、最初は懐疑的になるものだ。プラグインハイブリッドモデルであっても思うように俊敏に走れるのか? 重くなりすぎてはいないか?

マラガ近郊のアスカリサーキットで、マクラーレンが新型プラグインハイブリッドスーパースポーツカー、「アルトゥーラ」の初めての試乗会を催した際には、我々はかなり好奇心をそそられた。スポーツの観点から賢明なアプローチをするメーカーを信頼するならば、英ウォーキングを本拠地とするマクラーレンの開発者たちは間違いなく信頼することができる。そして乾燥重量1498kgの「アルトゥーラ」は、スリムなボディが魅力だ。

カーブを曲がるとき、ちょっと野心的なスロットル操作をするだけでリアエンドが踊ってしまう。

名前について簡単に余談を。「アルトゥーラ」とは「Art」と「Futura」のミックス、つまりアートとフューチャーの融合を目指して名づけられたものだ。

新しいカーボンファイバー製モノコックは他のモデルのベースにもなる

「アルトゥーラ」のコンセプトは? MCLA(マクラーレン カーボンファイバー ライトウェイト アーキテクチャー)と呼ばれる全く新しいカーボンファイバー製モノコックで、将来的には他のモデルのベースにもなる予定だ。ハイブリッドでないモデルとかなり似ているが、ただ1世代進んでいる。フロントとリアには、モノコックにボルトで接合されたアルミニウム製フレーム構造があり、その上にサスペンションが搭載されている。フロントはダブルウィッシュボーン構造、リアはマルチリンクアクスルである。

ハイブリッドドライブの高い重量を補うためには、まず重量を取り除かなければならなかった。シャーシの重量は数kg減るものの、電動コンポーネントの130kgを補うにはもちろん足らない。

電動油圧式ステアリングはやはり素晴らしいハンドリングをもたらしてくれる。

95馬力電動モーター

3リッターエンジンは、バンク角120度(V8は90度)、ツインターボを搭載した完全新開発のエンジンだ。これにより、エンジンは平坦になり、2台のスーパーチャージャーは、エンジン下面の外側ではなく、シリンダーバンク間のブロック上部の「ホットV」内に配置されるようになった。

これはデザイン的なメリットもあるが、経路が短くなるため、より自発的なレスポンスが確保できる。当然、このようなV6はV8よりも4分の1ほど短く、その分、内燃機関とトランスミッションの間に挟まれた95馬力の電動モーターを搭載するスペースが生まれた。後者には物理的なリバースギアはなく、すべて電動モーターが担っているが、8つのフォワードギアを備えている。V6自体の重量はわずか160kgで、旧来のV8よりも50kgも軽い。

マクラーレンの実績あるドアショー: アルトゥーラでは、ドアが少し車体寄りに開くようになった。

パワー面では、3リッターV6は585馬力でスタートし、システム最高出力は680馬力となる。最近3リッターエンジンを開発したマセラティ(630馬力)やフェラーリ(663馬力)のことを考慮すれば、まだまだ上のモデルの可能性があるはずだ。

純電動航続距離31km

しかし、現在でも3秒で0から100km/hまで加速し、最高速度は330km/hで走るという。0から200km/h、0から300km/hにはそれぞれ8.3秒、21.5秒で到達する。

マクラーレンは、88kWのバッテリーパックで31kmの純電動航続距離が可能だとする。7.4kWhは、朝の楽しいブーストスタートとご近所への配慮のためのウィスパースタートのどちらにも使用可能だ。そして、最高時速130km/hで静かに滑走することができる。でも、そのためにここにいるわけではない。横方向のダイナミクスを体感したい。そのために、マクラーレンはピレリ社と共同で、走行データを内蔵チップで車載電子機器に直接送信する特別なP-ZEROタイヤを開発したのだった。

その結果、「アルトゥーラ」は一般用タイヤ、冬用タイヤ、スティッキーなコルサコンパウンドのいずれを装着しているかを即座に認識することができるのだ。

ハンドリングモードとドライブトレインの調整を、計器上部の2つのウィングナット形状のスイッチで行う不思議なスタイル。

もう一つの利点。測定はバルブではなく、トレッドで直接行われる。つまり、ブレーキの廃熱やリムによる誤差を最小限に抑えることができるのだ。コルサを装着して、上り坂と下り坂のある高速コースを走ってみると、まるでコルサはステアリングを握っているようだ。

俊敏なフロントエンド、レスポンスの良いダイレクトな電動油圧式ステアリング、それがマクラーレンの得意とするところであり、ハイブリッドシステムであってもそれを変えることはない。

極めて調和のとれた、本能的な

加速が早すぎて前車軸の重量が軽くなると、コーナーの立ち上がりでアンダーステアになる。しかし、ドライブのコンビネーションが全開になると、リアエンドは抑制された回転を始め、アルトゥーラは淫らに背中を突き出す。

電子デバイスの運転補助装置を完全にオフにすることはできないが、きめ細かくコントロールでき、簡単に調整できる。すべてが極めて調和的かつ本能的に機能している。ブレーキも同様で、耐噛み付き性のあるカーボンセラミック製で、プレッシャーポイントを細かく調整でき、何度も高速ラップをしても故障の兆候はない。そして、ステアリングホイールは、これ以上ないほど良いものだ。

新しいハイブリッドマクラーレンは、クリーンなラインを完璧にマスターする。グリップの効いたフロントアクスルに驚き、軽快なハンドリングに驚く。

室内はほぼ完璧なエルゴノミクスであり、特にリアルなシフトパドルは素晴らしい。ちなみに、操作のクセも最適化されているそうだ。例えば、かつてはシートの内側に隠れていた調整ノブ。従来は外側に配置されていた。そして、インテリアの話もついでに。バケットシートは遠心力に頑強に抵抗するが、陸路の旅でも腰が痛くなることはない。

マクラーレンは、従来通り斜め上方に開くドアでアクセスするが、狭い駐車スペースでの実用性を考慮し、ドア位置が若干車体に近くなっている。「アルトゥーラ」は以前から注文を受け付けており、最初の顧客車は7月に納車される予定だ。ドイツでの販売価格は230,500(約3,227万円)ユーロからとなっていて、その部分だけは購入を考慮する際にちょっと気おくれするかもしれない。

テクニカルデータ&価格: マクラーレン アルトゥーラ
• エンジン: V6ツインターボ、ミッドリア縦置き
• 排気量: 2993cc
• 最高出力: 500kW(680PS)@7500rpm
• 最大トルク: 720Nm@2250rpm
• 駆動方式: 後輪駆動/8速ダブルクラッチ
• 全長/全幅/全高: 4539/2080/1193mm
• 乾燥重量: 1498kg
• トランク容量: 150リットル
• 0-100km/h加速: 3.0秒
• 最高速度: 330km/h
• 平均燃費: 21.7km/ℓ
• 価格: 230,500ユーロ(約3,230万円)より

結論:
マクラーレンがドライバーの感覚でプラグインテーマを実践して良かった。電力を追加して性能を向上させたが、その他は気持ちよく昔のままだ。相変わらず個性的で俊敏なレーサーだといえる。

【ABJのコメント】
なんとも申し訳ないのだが、マクラーレンのラインナップをソラで言うことはできないばかりか、今までどんなモデルがあったのか書いてみろと言われても、紙に書く自信はまったくない。「あの高価な限定車はセナでいいんだよね」とか、「012で数字あってたっけ?」くらいな記憶であって、なんともお恥ずかしいが今売っているモデルも覚えきれない。

自分の頭の劣化をマクラーレンにあてこすりしてはいけないが、そのわかりにくさの原因のひとつに、ネーミングのわかりにくさと理解しにくさがあるのではないか、と思っているが、今回の「アルトゥーラ」はまあまあわかりやすいように思える(でもちゃんと覚える自信はやっぱりない)。そんな「アルトゥーラ」の成り立ちはV6ツインターボをミッドシップに搭載した高性能なプラグインハイブリッドモデルで、駆動するのはリアタイヤのみで、ダブルクラッチシステムの自動変速機に組み合わされる、というものだ。びっくりするのはその燃費で、もちろんプラグインハイブリッドモデルだからプラグインハイブリッドの「電池の部分」が完全に切れたら燃費は急速に悪化するとは考えられるものの、それでもこの燃費は驚くほど良い。

そしてもう一点、この車重はAUTO BILDでレポートされていたマセラティの「MC20」となんとドンピシャ互角の1.5トン切り、なのであった。相手はコンベンショナルな純粋内燃にハイテク電子デバイスを持たないV6ツインターボ後輪駆動モデル、一方こちらはプラグインハイブリッドにV6ツインターボを組み合わせたスーパースポーツ、とその成立方法は異なる。にもかかわらずドンピシャ似通った重さになっていることはなんとも興味深い。価格は3,000万円以上と、なんとも高価な世界の自動車ではあるけれど、今の世の中、1億、2億も当たり前のようなウルトラスーパースポーツカーの怪しい世界からすれば適当価格といえるのかもしれない。そしてブランドだけに頼らず、できるだけ軽く、ハイテクな路線を歩むことこそ、マクラーレンの進むべき方向なのではないかと思う。(KO)

Text: Alexander Bernt
加筆: 大林晃平
Photo: McLaren