【夢のデート】アストンマーティン最後のV12モデル アストンマーティンV12ヴァンテージをドライブ&テスト その走りとは?

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700馬力のV12は最終モデルとなる。電気自動車やハイブリッドに移行する前に、イギリス人はもう1度、700馬力、V12ツインターボの車を登場させた。322km/hの最高速度で333台が生産されるが、すでにすべて販売済み。社内用のアストンマーティンV12ヴァンテージを運転させてもらった。

アストンマーティンの電気自動車化? 実際、次期「ヴァンテージ」は電動化される気配が濃厚だ。それが純粋な電動レーサーになるのか、ハイブリッドになるのかは、まだ明らかにされていない。

では、さっそく目に見える部分、「アストンマーティンV12ヴァンテージ」という芸術品に迫ってみることにしよう。

1年ほど前、イギリス人がノルトシュライフェ(ニュルブルクリンクサーキット北コース=通称“緑の地獄”)に「アストンマーティンV12ヴァンテージ」のプロトタイプを持ち込んだとき、ファンは大喜びした。大きなウィング、ワイドボディ構造、そしてその魅力的なサウンド。アストンが伝統にのっとって、またV12を発表することはすぐに明らかになった。

サイドビューが素晴らしい。前輪の後ろのサイドフィン、完璧なスタイルのリアウィングなど、すべてのラインが互いにフィットしている。

「ヴァンテージ」にV12という組み合わせは決して目新しいものではない。2007年にはレースカーDBRS9のV12を搭載したコンセプトカーが公開され、2009年にはついに510馬力の「ヴァンテージ」が販売された。

2017年ヴァンテージ新時代の幕開け

2012年には「V12ザガート」、そして「V12ヴァンテージ ロードスター」、2013年には「V12ヴァンテージS」が登場し、我々のスーパーテストにもいち早く登場した。そして、2015年には、「GT3レーサー」の軽量構造やパーツを使用した事実上のロードレーシングカーである「ヴァンテージGT12」が追加された。

モデルの最後には、当時新設されたスポーツ部門アストンマーティンレーシング、略して「AMR」の称号を持つV12ヴァンテージが追加された。

DB11でおなじみの5.2リッターV12ツインターボがエンジンルームを完全に埋め尽くしている。60度V12にはZF製オートマチックのみが組み合わされる。

そして2017年、メルセデスAMGとのコラボレーションが実現し、新しい「ヴァンテージ」の時代が幕を開けた。AMGのテクノロジーと斬新なデザインで、通常のエンスージアストだけでなく、かなりの数の人に届くことを目指したのだ。

その甲斐あって、着工以来、例年より大幅に多くの車を販売することができた。そして、510馬力のAMG V8ツインターボを搭載した新型アストンマーティンは、実に素晴らしい走行性能を発揮した。「AMG GT」のような完璧な速さはなく、内部もややモダンさに欠けるが、全体としては本当に良いスポーツカーといえる。

2時間以内に全333台が販売された

内燃機関の12気筒時代はもう終わったことなのか? 一応この「V12ヴァンテージ」が、少なくとも、その時代に別れを告げる1台となったということにしておこう。そしてこの車は700馬力もあるのだから、本当に速い。

GT3スタイルでファンファーレを! 迫力のテールパイプは、ヒットポテンシャルを秘めたV12のアリアを歌い上げる。

YouTubeにアップされたプロトタイプは、確かに印象的だった。しかし、その後、残念なことに、試乗車は準備されることなく、たったの2時間で333台すべてが売約済みになってしまった。それではドライビングレポートさえもできないのだろうか? 我々からの最初の打診に対して、アストンからの返事は「ノー」だった。

しかし、我々の諦めないリクエストと強い想いはついに実った。念願の呼び出しが来たのだ。アストンマーティン社内ミュージアムに展示される予定だった1台の「V12ヴァンテージ」を、展示品になる直前に運転することが許されたのだ。我々はバーミンガム近郊のゲイドンにあるアストンマーティンの工場の周辺道路を直接走ることを許されたのだった。

DB11に搭載された5.2リッターV12ビターボ

飛行機に乗って、アストンマーティンのラゴンダ本社に赴いた。当初、クラシックなグリーンかグレーの「ヴァンテージ」を想像していた。だがそこにはフェラーリに近い真っ赤な「V12」が待っていた。

オプションの軽量カーボン製バケットシートは、長時間の移動でもぴったりとフィットする。少し残念だったのは、インテリアがボディほど刺激的でなかったことだ。

技術的特徴は簡単に説明するなら、「DB11」に搭載された700馬力の5.2リッターV12ツインターボ、シフトチェンジの速い8速オートマチック、新しいアンチロールバー(フロント5%ハード、リア41%ソフト)、硬めのスプリング、硬めのサポートマウント、硬めのボディワーク、シャープなステアリング、40mm広がったトレッド、広いボディ、204kgのダウンフォースをもたらすリアウィングなど。そしてワイルドな「GT12」へのオマージュとして、馬蹄形のベンチレーション開口部を持つボンネット。

ドライバーズシートに乗り込み、オプションのカーボンシェルをスライドさせエンジンを始動、そして耳をすます。嬉しいことに、音はアストンらしい魅了的なもののままだ。

優れたコーナリング性能

「ランボルギーニ アヴェンタドール」のような音も少し聞こえる。ステアリングは、これまでのアストンマーティンとは比較にならないほど正確で、最初の1メートルから印象的だ。一方、新たにチューニングされたアダプティブサスペンションは、かなり忠実に路面に対応してくれる。

ヴァンテージV8との違い? ニューデザインのエプロン、大型グリル、カーボン製フロントスプリッター、ボンネットのエアアウトレットを採用。

この車はレーシングカーにしか見えない。だからこそ、Dモードでギアがシャッフルされるギアボックスも、時代遅れのナビゲーションも許せるのだ。

トランスミッションは適切に駆動輪にパワーを伝達する。それでもV12の700馬力と考えれば、もっとパワフルである必要がある。

パワーウエイトレシオのクラスでは、もっと速いクルマがある。だが、コーナリング性能は非常に高い優れたものだ。高速カーブではさりげなく、タイトカーブでは自信たっぷりにラインを描いていくことができる。

ザクセンリンクサーキットではどれほどのタイムが可能だろうか。前作のF1エディションの1分34秒16を2秒はおそらく軽く超えるはずだ。

テクニカルデータ&価格: アストンマーティンV12ヴァンテージ
• エンジン: V12、ビターボ、フロント縦置き型
• 排気量: 5204cc
• 最高出力: 700PS@6500rpm
• 最大トルク: 753Nm@5000rpm
• 駆動方式: 後輪駆動/8速オートマチック
• 全長/全幅/全高: 4514/1962/1274mm
• 乾燥重量: 1,795 kg
• 0-100 km/h加速: 3.5秒
• 最高速度: 322km/h
• 平均燃費: 7.4km/ℓ
• ベース価格: 299,500ユーロ(約4,200万円)

結論:
排他的で、セクシーで、邪悪で獰猛。この最後のV12モデルのアストンマーティンは、これまでの「ヴァンテージ」よりもシャープなカーブを描き、よりソリッドに、よりワイルドになった。ほんの短時間だけのデートで、ちゃんとしたテストができないのが残念だったが・・・。

【ABJのコメント】
アストンマーティンからV12が消える、となればもちろん欲しい人は、「これが最後のチャンス」とばかりに購入を希望するだろう。世界的にこういう内燃機関の自動車を取り合うような状況は激化しており、たいていの場合は発表された段階で「完売御礼」の状況となる。今回の「アストンマーティンV12ヴァンテージ」も、もちろんそういう一台で、333台は瞬殺でどこかへと消えていったという。

4,200万円もの自動車があっという間に完売とは、世の中の富裕層の多さには驚くしかないが、アストンマーティンというブランドネームを持ってしてみれば、これだけの数など他愛もないことなのかもしれない。もちろんこの4,200万円はベース価格であって、自分の好みにカスタマイズしたり、オプション装備を追加したりすればあっという間に価格は上昇するが、購入できる人たちにしてみれば、そんなことも関係のない話であり、買えただけで幸せ、という世界なのだ。

さてそんなV12ヴァンテージだが、8速オートマチックトランスミッションという部分と、かなり乗り味がハードという部分がちょっとちぐはぐという感じもするが、それもどうでもいいことなのかもしれない、と思ってしまう。最後の12気筒のアストンマーティン、という部分こそが一番重要であり、それ以外のファクターなどは二の次。アストンマーティンファンにとっては、12気筒エンジンを搭載した、純粋な内燃機関の自動車という部分こそが一番気になるのだから。(KO)

Text: Guido Naumann
加筆: 大林晃平
Photo: Aston Martin Lagonda Ltd.