【ニュルでの新記録達成時の動画付き】市販車最速のEV「ポルシェ タイカン」アップデート情報を含むすべての情報!

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ポルシェ タイカンは800ボルトのテクノロジーと最高出力761馬力を誇る市販車最速のe-carだ。そして、ポルシェはタイカンでニュルブルクリンクでの市販電気自動車として最速を記録した。

発表と価格: タイカンは90,000ユーロ(約1,260万円)以下から

ポルシェは「タイカン」で、システム電圧800ボルトで作動する電動スポーツカーを、2019年に初めて発表した。5分で100km分の電力を充電可能で、22分後には5%から80%までの充電が可能となっている。ただしそれ専用の充電システムが必要ではあるが・・・。今回、ニュルブルクリンクの北コース、ノルトシュライフェ(通称‘緑の地獄’)で、電気自動車のラップレコードを更新した。興味深いことに、ポルシェは初の電気自動車でもおなじみのネーミングを踏襲しており、ここでも最もパワフルな車種は「ターボ」と「ターボS」と呼ばれている。

「タイカン」には、スポーツサルーンに加え、シューティングブレークにより、リアとトランクのスペースが広くなった別のボディスタイルも用意されている。当初は、レイズドサスペンションやオールラウンドパネリングなど、オフロードの要素を標準装備した「クロスツーリスモ」のみの設定だった。一方、同じ形で、バッドロード装備を持たない「スポーツツーリスモ」もある。「ポルシェ タイカン」の価格は、300kW(408馬力)のベースモデルで88,399ユーロ(約1,235万円)からとなっている。

駆動、バッテリー、航続距離: タイカンは最高出力761馬力

タイカンには2種類のバッテリーサイズがあり、弱い方はグロス容量79.2kWh(ネット71kWh)、強い方はグロス容量93.4kWh(ネット83.7kWh)となっている。ポルシェでは、この電池を「パフォーマンスバッテリー」、「パフォーマンスバッテリープラス」と呼んでいる。ただし、小型バッテリーは「タイカン4S」までの下位モデルにしか設定されていない。バッテリー、駆動方式、性能によって異なるが、ポルシェの航続距離は358km~512kmとなっている。

761馬力のタイカン ターボ Sは、電気自動車ポルシェの中で最もパワフルなバージョンだ。完全停止状態から時速100kmまでのスプリントは2.8秒だ。

2019年に発表されたスポーツカーは、市販モデルとし800ボルトの充電技術を採用した。これにより、その急速充電器では5~80%までのバッテリーを22分の好タイムで充填することができるようになっている。ほぼすべてのモデルで、各車軸(アクスル)に1基ずつ、計2基の電動モーターが搭載され、推進力を担っている。

エントリーモデルのみ電動モーターが1基しかないため後輪駆動となり、それ以外の「タイカン」はすべて全輪駆動となっている。パワーは408馬力から最強の「ターボS」では761馬力まで揃っている。これにより、トップモデルでは0-100km/h加速が2.8秒となる。

ノルトシュライフェ: パフォーマンスキットを装着したタイカン ターボSが記録更新(アップデート情報!)

ポルシェは「ターボS」によって、「タイカン対テスラ」という永遠の決戦のための完璧な相手をノルトシュライフェに送り込んだ。テスラが前回20.832kmのコースのラップレコードを出したのは、2021年9月9日、「モデルSプレイド」で7分35秒579を記録した時である。

そして今回、「タイカン」はパフォーマンスキットを装着し、レーシングドライバーのラース カーンがステアリングを握り、スタートラインに帰ってきたのだった。結果は、7分33秒350で、ポルシェが「テスラ モデルSプレイド」に2秒の大差をつけて記録を更新した。つまり、「緑の地獄」における市販電気自動車の記録は、再びポルシェが保持することになったのだ。

記録達成のために、ポルシェは「タイカン ターボS」にオプションの「PDCC(ポルシェダイナミックシャーシコントロール)とパフォーマンスキットを与えた。21インチの大径ホイールとピレリPゼロ コルサ スポーツタイヤを装備していた。ただし現在、このキットを注文できるのは、セダンの「ターボSモデル」の2023年モデルのみではあるが、2022年末には、他の「タイカン」のバリエーションも後付けできるようになるはずだ。パフォーマンスキットの価格は13,377ユーロ(約187万円)となっている。

タイカンの全モデルにソフトウェアアップデートを実施

2019年以降、ポルシェは合計で75,000台以上の「タイカン」を販売しただけでなく、常にアップデートを続けている。数回のマイナーチェンジを経て、電気自動車のフラッグシップモデルに包括的なソフトウェアアップデートが行われている。ハイライト: このソフトウェアアップデートは、新規の購入者だけでなく、年式、走行距離、モデルバリエーションに関係なく、すべての「タイカン」モデルで利用できるようになっている。特に、製造初期の「タイカン」は、2023年モデルのソフトウェアレベルにまで性能を引き上げられるため、アップデートの恩恵を受けることができる。

最大50kmの航続距離延長

最も重要なイノベーションのひとつは、全輪駆動モデルの効率性の向上だ。ここでは、「ノーマル」と「レンジ」の走行モードにおいて、電動モーターはフロントアクスルで事実上切り離される(GTSモデルでおなじみのソフトウェアソリューション)。これは機械的なものではなく、電子的なアップデートをも意味する。低温時などのバッテリーのコンディショニングを改善することで、モデルによっては、航続距離を最大50km(WLTP基準)伸ばせる見込みだ。

さらに、インフォテインメントシステム「PCM」の新機能が追加された。カラーアイコンに加え、最適化されたボイスコントロール、Spotifyとの連携、ワイヤレスのAndroid Autoが搭載されている。また、パーキングセンサーが今後より広範囲に対応するなど、アシストシステムも改善されている。

追加機能はすべて無料となっている。ただし、アップデートのためには、「タイカン」をワークショップに持ち込む必要がある(つまり作業費は必要ということ)。データのアップロードに必要な時間は、各車両のソフトウェアのバージョンに依存する。ただし、1日以上かかることはないはずだ。また、すべてのコントロールユニットがOTAに対応しているわけではない。ただし、将来的にはタイカンを通信によってアップデートできるようにすることを目指しているそうだ。

デザインとディメンション: 一目でポルシェとわかるタイカン

ビジュアル的には、「タイカン」はいかにもポルシェであり、2015年に初めて公開された「ミッションE」スタディモデルの要素も多く採用されている。フロントビューでは、電気自動車はワイドでフラットな印象を受ける。ヘッドライトは丸みを帯びた長方形で、ポルシェらしい4ポイントグラフィックのデイタイムランニングライトを搭載している。

ルーフラインはパナメーラを彷彿とさせるが、タイカンは背が低く、ボンネットはより急傾斜している。ポルシェの常として、ビジュアルの焦点は主に「タイカン」のリアに置かれている。ここには、本物のガラスで作られたポルシェバッジ、連続したライトストリップ、控えめなリアディフューザーが備わっている。

ポルシェ タイカン: ディメンション
• 全長: 4963mm
• 全幅: 1966mm
• 全高: 1378~1395mm(モデルにより異なる)
• ホイールベース: 2900mm
• ラゲッジルーム容量: セダン: 366~407リットル(モデルにより異なる)、スポーツツーリスモ: 405~1,212リットル(モデルにより異なる)
• フロントラゲッジルーム容量: 84リットル
• ルーフ荷重: 最大75kg

クロスツーリスモ: オフロードを意識したシューティングブレーク

ポルシェは、セダン、最近導入した「スポーツツーリスモ」に加えて、「クロスツーリスモ」という別のボディフォルムの電気自動車も提供している。このシューティングブレーキ仕様の「タイカン」は、さらにオフロードのイメージを印象づける。全輪駆動、エアサスペンション、プランク、専用スカート、93.4kWhの大容量バッテリーを常に標準装備している。

オフロードデザインパッケージでは、クロスツーリスモの車高を上げ、石跳ねから守るフラップを装備している。

ルーフには専用のレールが備わり、さらに10mmの車高アップ、石の衝撃から守るコーナーフラップ、ダッシュボード上のコンパスなど、「オフロードデザインパッケージ」が用意されている。

タイカン クロスツーリスモ: ディメンション
• 全長: 4974mm
• 全幅: 1967mm
• 全高: 1409/1412mm(モデルにより異なる)
• ホイールベース: 2904mm
• ラゲッジルーム容量: 405または446~1171または1212リットル(モデルにより異なる)
• フロントラゲッジルーム容量: 84リットル
• ルーフ荷重: 最大75kg

走る歓びはそのままに、より高い実用価値を

走行中、クロスツーリスモは通常のタイカンと同様、路面にボルトで固定されているような印象を受ける。フロアアッセンブリーに配置されたバッテリーは重心を低くし、ステアリング、サスペンションから伝わるレスポンスの良さは別次元のものだ。

ルーフが高くなったことで、リアのヘッドルームが47mm拡大し、大人がゆったりと座れるようになっている。モデルによって異なるものの、ラゲッジルームは最大1,212リットルの容量があり、休日の旅行には十分だ。

GTS: 新型ではスポーツツーリスモも投入された

2021年のLAオートショーでポルシェは「タイカン」の新しいバリエーションである「GTS」を発表した。つまり、タイカンの性能レベルがもう一つ増えただけでなく、新しいボディバリエーションである「スポーツツーリスモ」が追加されたのだった。シューティングブレークは、「クロスツーリスモ」と同じ形をしているが、オフロードの機能はない。その代わり、後席のヘッドルームが広く、ラゲッジスペースもサルーンより広くなっている。「スポーツツーリスモ」のラゲッジルームは、最大1,212リットルの収納が可能となっている。

598馬力のGTSは、4Sとターボの中間に位置する

パワー面では、「GTS」は「4S」とターボ系の中間に位置づけられる。598馬力(440kW)という性能がデータシートに記載されている。セダンとシューティングブレークは、静止状態から100km/hまで3.7秒で加速し、最高速度は250km/hに達する。ポルシェが特に誇りとする航続距離は504kmまで可能で、これは現在「タイカン」のバリエーションの中では、「GTS」が最も長い距離を走ることができるモデルとなっている。

GTSで、タイカンはスポーツツーリスモのシューティングブレーキ仕様も手に入れた。クロスツーリスモと形状を共有している。

内装のブラックアルマイト装飾に加え、専用チューニングのエアサスペンションを標準装備し、オプションのリアクスルステアリングもよりスポーティに設計されている。

また今回のアップデートでは新たなオプションとして、「タイカンGTS」に専用のパノラミックルーフを設定した。電動的に切り替え可能なフィルムにより、クリアからマットまで変化させることができるようになっている。また、ルーフの各パーツにフロスト加工を施し、模様を表現することも可能となっている。「タイカンGTS」の価格は最低でも134,214ユーロ(約1,880万円)、「GTSスポーツツーリスモ」は135,166ユーロ(約1,895万円)からとなっている。

インテリア: タッチパネルを多用し、最大4つのディスプレイを搭載したタイカン

ポルシェはインテリアをハイテクに頼り、従来のボタンはステアリングホイールにのみ用意されており、それ以外は、すべてタッチで操作するようになっている。16.8インチのインストルメントクラスターは、クラシックなポルシェのコックピットの形状を踏襲し、メーターも従来通り丸みを帯びている。全体として、近未来的になりすぎず、モダンな印象だ。ディスプレイの左右には、タッチパネルで照明やダンパーの調整が可能となっている。

インテリアでは、従来のボタンはステアリングホイールにしか残っていない。

中央のディスプレイは10.9インチで、助手席にも重要な機能を操作するためのスクリーンがオプションで用意されている。センターコンソールのもうひとつのタッチスクリーンは、エアコンの調整に使用する。個々の吹き出し口の風量もディスプレイ上でコントロールできるのが特長だ。

2列目のヘッドルームが狭い

そのクオリティには非の打ち所がない。スポーツシートは、サポート性だけでなく、2列目でも長距離の快適性を提供する。だが4ドアにもかかわらず、普通の身長の人でも後席に乗り込むのは容易ではない。

しかし、いったん座席に座ると、いわゆる「フットガレージ」のおかげで、驚くほど足元は広い。アキュムレーターの凹みによって作られる。足元は前席まで余裕があるが、頭上は狭く、身長1.80m以上ではルーフにぶつかりそうになる。

ドライビング: ポルシェ タイカンは、残酷なまでに前進する

「タイカン ターボS」の761馬力は、最初のドライブで強烈な印象として残った。4ドアスポーツカーは残酷なほどの速度で加速する。さらに、全輪操舵による優れたコーナリング性能と、非常に正確に制御できるブレーキも印象的だ。

本格的なドリフトも可能で、その場合でも「タイカン」は路面に板を敷いたような感覚で走ることができる。その理由は、多くの技術もさることながら、重いバッテリーのおかげで低重心であることだ。しかし、2.3トンの車両重量がこれほどまでに軽快に感じられることはない。

結論:
電気自動車とはいえ、タイカンは本物のポルシェであることに変わりはない。しかし最大の批判は、音だ。「911ボクサー」のようなサウンドを期待してしまうが、「タイカン」のサウンドジェネレーターはそうはいかない。

比較: タイカン対BMW M8のコンセプト対決

全長5メートル前後、全幅2メートル弱、クーペのようなボディ、4ドア、そしてそれぞれ600馬力以上。ここまでは似ている。そこから差がつくのは、パワーソースだ。「BMW M8 グランクーペ」では4.4リッターV8が、「タイカン ターボS」では2基の電動モーターが動力を発揮する。コンセプトの決闘が始まるのだ。

印象的なのは、ポルシェ「タイカン」やBMW「M8」が0から100km/hに達するまでに3秒前後、200km/hに達するまでに10秒前後しか必要のないことだ。

完全停止状態から100km/hへのスプリントはわずか2.8秒で完了し、「M8」の3.1秒と比べても、「タイカン」の加速はすでに狂気の沙汰だ。

しかし、BMWのスプリントのやり方は全く違う。内燃機関はシリンダーに圧力をかけなければならないのだ。さらに、ポルシェは次の100km/hでも驚異的なパワーを発揮し、0から200km/hまでは「M8」にコンマ8秒の差をつけている(約400kgの重量増にもかかわらず・・・)。

サーキットにおけるポルシェの典型的なパフォーマンス

加速と同様に、「タイカン」はブレーキでも先を行っている。2.3トンは31.5メートル後に100km/h時から完全停止する。BMWはポルシェよりかなり軽量で、テスト走行ではセラミックブレーキを装備しているにもかかわらず、停止するのはそのかなり後(32.6メートル後)となっている。

そして、その次はレース場での対決、今回はラウジッツリンクサーキットで比較してみた。ここでは、両サルーンが同列に並んでいる。「タイカン」は、驚くほど適度なアンダーステアが印象的だ。中高速区間では、リアも入ってくるので、その量を注意深く調整すれば、最速ラップタイムを狙うのに効果的だ。

また、ポルシェは低重心であることも利点のひとつだ。結局、ポルシェは3,282mのコースで1分32秒76のラップタイムを記録し、BMW(1分32秒96)よりコンマ2秒速いタイムを出した。

タイカンとM8の車内空間が似ている

インテリアでは、どちらもレザーをふんだんに使い、タイカンでは考えられるすべての場所にディスプレイを取り付けている。BMWはデジタル技術も一部採用しているが、幸いなことに、ロータリープッシュ式の独創的なiDriveに依存している。

スペースという点では、2台のスポーツカーに違いはなく、積載量も近い(M8は440リットル、タイカンは366+81リットル)ため互角と言えよう。

結論:
一方はクリーム色のV8、他方は電動技術の驚異である。適切な充電設備があれば、「ポルシェ タイカン」は十分満足できるはずだ。しかし、日常生活では特に航続距離の面ではまだデメリットがある。そのため依然として内燃機関の「パナメーラ」や「BMW M8」を選ぶ人も多いだろう。

【ABJのコメント】
「ポルシェ タイカン」がニュルブルクリンクサーキットで新記録達成、というのが今回のレポートのタイトルでもあるのだが、高性能車といえばドイツでもやっぱり何はなくともニュルブルクリンクサーキット詣で、なのだろうか、と思った。とはいっても、ニュルブルクリンクサーキットは決して新型車でタイムを競うためだけのサーキットではないし、開発者たちがニュルブルクリンクサーキット詣でをするのはタイムアタックをするためではなく、あの過酷な環境で車を鍛え上げること、が目的なはずである。

ロールス・ロイス(ということはBMW)が「ファントム」をニュルブルクリンクサーキットに持ち込んで走らせていたスクープショットを見た記憶があるが、あれはもちろんタイム計測が目的ではなく、自動車の基本的な性能を鍛えるためのサーキット走行であるはずだ。

さて「タイカン」ではあるが、限界的な性能はもうこれ以上必要ありませんという領域まで高められているし、それが証拠に今回は「BMW M8」にも数値的には勝利をあげている。

個人的にはなんで「パナメーラ」と徹底比較しなかったのかが疑問なのではあるが、同門対決では絵柄的に良くなかったからなのか、記事的に盛り上がりに欠ける、と判断したからなのか、今回はポルシェのBEVと、バリバリの内燃機関のBMWという、比較テストになっている。「そんなの比べてどうするんだよぉ」という気もするが、読み物としてはこちらのほうが面白い、という判断と配慮なのだろうか。いずれにしてもタイムは「タイカン」の勝ちとなったわけだが、それだけが優越のポイントではないことは言うまでもない。やはり一度、「タイカン」と「パナメーラ」を同門対決させて、徹底的に様々な角度から検証してほしいものである。(KO)

Text: Katharina Berndt, Andreas Huber, Malte Büttner and Sebastian Friemel
加筆: 大林晃平
Photo: Porsche AG / autobild.de