【フルテスト】世界中で大人気のスズキ ジムニー その性能と魅力を徹底的にテストしてみた 

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幸せは小さなところにある。ジムニーは小さなオフロード車だが、大きな需要があるため、投機筋やバイヤーにも求められている。しかし、普段使いにも適しているのだろうか? 徹底的にテストしてみた。

広告を見て、新車で「スズキ ジムニー」を探し、衝撃を受ける・・・。27,499ユーロ(約382万円)、30,900ユーロ(約430万円)、32,499ユーロ(約452万円)、そして37,900ユーロ(約526万円)が、日本発の小型オフロード車に対するディーラーの付けたプレミアムつきの価格である。その価格は驚くほど高い。

なお、ドイツスズキの公式サイトでは、フル装備「ジムニー」の定価は、現在23,915ユーロ(約332万円)となっている。どういうことだ?

皮肉なことに、「需要が価格を決める」というのは、自由市場経済の揺るぎない原則である。しかし、もしあなたの心に少しでも共感できる部分があれば、これは希少性を利用したビジネスであり、買い手のニーズを恥じることなく利用したケースであるという気持ちに襲われることだろう。

スズキの縦置き4気筒ガソリンエンジンは、ターボチャージャーも持っていない。

なぜなら、本当に「ジムニー」に興味がある人は、安定的に入手できるであろう同等の他社製品に乗り換えることができないため、実質的に選択肢がないのだ。

そして、なぜ他の車ではいけないのか? だって、いけないものは仕方がない。「スズキ ジムニー」は、現在、事実上、競合がいない状態だ。その名にふさわしい安価な小型オフロード車 – 数年前まではライバルには、「ラーダ ニーバ」、「ダイハツ タフト」、「三菱パジェロ ピニン」、「アジア ロクスタ」、そして、「フィアット パンダ4×4」などがあったのだが・・・。

期待に違わぬジムニー

しかし、それらのモデルは新車としてはとっくに姿を消している。スズキと同じ価格帯の代替車は「デイシア ダスター」だが、あっちはもっと大きくて広いのだ。そしてデザイン面では、ギアレスの半永久的な全輪駆動とフィリグリー乗用車のシャーシを採用した、モダンなSUVである。

暖房、換気、標準装備のエアコンも実際に操作してみると、シンプルですぐに理解できる操作性を実現。

一方、スズキは現行「ジムニー」も古典的なオフロード車の原則に従って作っている。耐荷重ラダーフレーム、ボルト締め車体、堅牢なリジットアクスルを持つシャーシ、シンプルだがそれゆえに極限状態でも主張する選択式全輪駆動+オフロードリダクション(マニュアルギアボックスのギアで走行速度を半分にするがエンジンパワーとエンジンブレーキの効果は2倍に)である。

そうして「ジムニー」は、本物のオフロード車に課せられた期待を、何の制約もなく、まさに実現しているのだ。技術はシンプルだがそここそが重要なのである。

【車両データ】

モデル スズキ ジムニー1.5ユーティリティ
エンジン 直列4気筒ガソリンエンジン、フロント縦置き
排気量 1462cc
最高出力 102PS@6000rpm
最大トルク 130Nm@4000
駆動方式 後輪駆動、5速マニュアル
ラゲッジルーム容量 863リットル
最高速度 163km/h
テスト車価格 23,915ユーロ(約330万円)

底なしの泥や重いダンボールの雪を何時間も掘っていても、クラッチやエンジン、全輪駆動が限界に達することはないのだ。

2トンのソリッドオフロード車がとっくに車軸を沈め、回転する車輪をどうしようもなく擦っているような難しい路面も、1,100kgを切る「ジムニー」なら、軽々と走破することができるのだ。

「ジムニー」のドライバーは、同じ敷地内でこのようなラフロードを周回し、なぜ他の人が走らないのか理解できない。102馬力と140Nmのトルクを持つ小さなエンジンでも、動かすべき質量が少なく、適切なギア比を選択すれば、十分な性能を発揮することができるのだ。

ジムニーは、優れたアーティキュレーション特性を持っている。

そして、スズキはこれを巧みにやってのけるが、まあ一般道では、100km/h以上では6速が欲しいかもしれない、いわば速度を落とすジェントルギアとして。しかし、何十年も静かに歌い続けてきたスズキのマニュアル変速機は5段しかなく、6段目を入れるにはスペースがなく、また高価な新設計が必要だったのだ。

それでも、ドイツのアウトバーンではカタログ上の最高速度は145km/hだが、実際には平地でも162km/hで走る。

1.5リッター4気筒エンジンは喉の渇きを癒す仲間だ

5速では5275rpmと、6250rpmから始まるレブカウンターのレッドゾーンからはまだ遠い回転数である。だから、エンジンを気にせず下り坂を走るための蓄えが残っているのだ。

この1.5リッター4気筒は、総じて明るく元気なヤツだ。アクセルペダルの動きに自然に反応し、時速140kmまで軽快な「ジムニー」を躍動させる。

実用的なディテールとして、安定性が高く、簡単にアクセスできるトウイングアイをリアに装備している。フロント下にもある。

そしてそのトルクは、ギアレス走行にも十分耐えうるものだ。5速、つまり一番高いギアでも60km/hで走ることができ、それでも加速時に顕著なスピードアップを体感することができるのだ。

幸い、この軽快さはガソリンスタンドでも味わうことができる。なぜなら、小さな4バルブエンジンの回転力を容赦なく絶えず使わなければ、40リットルの小さなガソリンタンクにもかかわらず、我々のテスト消費量は、1リットル当たり12.8kmを達成し、約500kmの距離を走れるからだ。

小さな4気筒エンジンが常に4500rpm以上で回転し、その献身的な、しかし大音量のトランペットを受け入れるような、一貫した主導的なドライバーだけが、1リットルあたり10kmを下回る消費量で駆動することができるのだ。逆に、アクセルを特に緩やかに踏み込み、自主規制速度を100km/h程度に控えた場合、1リットル当たり15.3kmを期待することができる。

これならガソリンスタンドでお金を使わなくて済むはずだ。また、一方で、自動車税や保険料の区分が低いことによる固定費の低さも、これに符合している。

というのも、「ジムニーII」の険しいキャリアが始まった2018年当時、懐疑的な保険会社は、まだジムニーを比較的高価な総合保険クラス23に分類していたからだ。

ジムニーに後席はもうない

しかし、事故統計はとっくに保険会社でオーケーが出されている。ジムニーのオーナーは運転が丁寧なようで、そのため総合保険のカテゴリーが23から12と非常に有利になった。

ジムニーにデメリットはないのだろうか? それはたくさんある。まず、足の長いドライバーの足元が狭いことが挙げられる。

1.75mを超える人は、ステアリングホイールの後ろに窮屈そうに座っているのが実情だ。少なくとも昨年から、スズキは欧州で「ジムニー」を2人乗りの商用車仕様としてのみ提供しており、座席と荷室の間に(幸いにも溶接ではなくネジ止めのみ)パーティショングリルを設けている。

ボディ幅をほぼ完全に貨物用に使うことができる優れモノだ。室内高も相当なものだ。

これは、CO2排出量が基準値より多いとしてEUに課される数千ユーロ(数十万円)の制裁金を節約するためだ。「ジムニー」には、リアシートもエマージェンシーシートもなく、純粋な2シーターであることに変わりはない。

パーティショングリルを装着した運転席は、調整幅が狭く、座り心地が大きく損なわれている。一方、「ジムニー」は比較的重いリジッドアクスルにもかかわらず、意外に足回りがいい。

スズキの人たちは、シャーシのチューニングに成功したのだ。しかし、「ジムニー」では標準タイヤでサイドウォールが高く、そのためバネの追従性が高いというメリットがある。

今日の視点から見ると、オフロード用としては悪くない80mm断面とクラシックな印象のトレッドを持つ標準タイヤは、「ジムニー」のブレーキ問題を悪化させる。また、標準装備のタイヤは、この問題をさらに悪化させる。

その結果、時速100kmでの制動距離は40mをはるかに超え、前のクルマとの距離を平均以上に保たなければならなくなっている。

というのも、小さくて遅い「ジムニー」は、明らかに追い越しを急ぐドライバーを刺激し、そのドライバーが前方のギャップに入り込み、再びギャップを狭めていくからだ。

また、「ジムニー」をオリジナルな感じのシティカーとして使っている人もかなりいる。もちろん、全長はわずか3.65メートル(外側に装着されたスペアホイールを含む)で、「VWポロ」など、現在の小型車よりもさらに40センチも短いため、簡単に駐車することができる。

1.65mという狭い車幅は、林道の木々だけでなく、駐車場のコンクリート柱も回り込みやすくしている。とはいえ、約5mという回転半径は、このサイズのクルマとしては比較的大きい方だ。

ジムニーにおける横風感度の向上

しかし、長距離を走る車としては、精悍な顔つきの人にしか向いていない。狭い着座位置や120km/h以上での大きな風切り音やエンジン音がドライバーの体力を消耗するだけでなく、平凡な直進安定性も気になる。

「ジムニー」を車線の真ん中に正確にとどめようと、絶えずステアリングを修正しても意味がない。時には少し左に、時には右にふらふらと動くが、この挙動を防ぐためには船乗りのように、前方をよく見て、大きく外れたときだけ舵を操作すればいいのだともいえる。リジッドフロントアクスルを持つすべてのオフロード車は、このように駆動し、操舵する。

しかし、「ジープ ラングラー」や「ジムニー」を除けば、今ではほとんど残っていないため、人々はもう慣れてしまって、驚いているだけなのだ。また、「ジムニー」は車重が軽く、車高が高く角張ったボディなので、横風に弱い。

そう考えると、ジムニーは今日の23,915ユーロ(約332万円)よりも実際の価格は安いのが本当かもしれない。しかし、需要が価格を押し上げているのだ。

結論:
小型のスズキが価格投機筋に狙われるとは、誰が想像しただろうか。でもそれは、「ジムニー」が実質的に他の追随を許さない存在であり、EU版の台数も少ないからだ。まさに他に代えがたい素晴らしい車だ。

【ABJのコメント】
「ジムニー」の良さは、とにかく軽自動車サイズという世界的にもまれな小ささの中で、本物のフレーム構造と信頼性あふれるメカニズムを成立させ、それを安直にモデルチェンジすることなく長年にわたり造り続ける、という部分が世界最強というところにある。

とにかく世界を見渡しても、この小ささで、これだけタフな自動車はコレしか見当たらず、よってコレしか乗りたくない、あるいは乗れないというユーザーを長年にわたって育て続けてきた。

これでなくてはいけない人の中には、林業とか僻地居住者なども多い一方、釣りにキャンプに草刈りにと、ホビーの足に、そしてこの車を改造して乗ることに喜びを抱くような熱狂的な愛好者を世界中に生み出してきた。もうこの車だけ、ほかのは眼中にない、というか選択カテゴリーに入らない、という人も多く、そういう人がいるからこそ、いつの時代も「ジムニー」には需要がある。そんな需要と供給のバランスが若干崩れてしまったのは現行の「JB64」が登場した時期からで、その理由は一般のユーザーにも受けとめられるような内容(今までのようなやせ我慢が少なく、毎日乗れる)という部分と、あとは単純に格好良かったためで、「ジムニー女子」のような、形から入ってしまうユーザーさえ発生した結果、日本においても1~2年待ちは当たり前、のような納期期間の問題を生み出した。それは世界的にも同じような傾向で、今回のレポートを読む限り、かなりの上乗せ料金をのっけられてジムニーが取引されている。

日本においても「ジムニー即納あります」の場合、200~250万円(軽自動車モデル)は普通の状況ではあったのだが、ヨーロッパでは驚くべきことに(もちろんジムニー シエラであるが)、500~600万円という価格で販売されているらしい。もっとも標準的な販売価格も330万円程度となかなかなものではあるが、500~600万円を出してまで「ジムニー」を買うというのは、個人的には「そりゃないだろう」という感覚を抱くようなプライスタグだ。いくら無敵なマイクロ4輪駆動車ではあったとしても、この価格ではガンガン実用に使ったり、趣味の自動車として改造三昧に費やしたりする自動車としては500万円もの大金はハードルが高すぎる。

それを考えれば、気長に待つ気さえあれば、200万円程度でジムニーの新車が買え、中古車ならば100万円ちょっとで、そこそこのモデルが購入できる、という日本人である我々は幸せだとつくづく思う。どうか内燃機関の寿命が尽きる前に、興味がある方であれば、一度ジムニーに乗ってみてはいかがだろうか? それが最後の一台になったとしても、それはそれでなかなか清いチョイスなのではないか、と個人的には思う。
そうはいっても、このジムニー、だれにでも太鼓判かというと、そういうものでもない。言ってみれば使用をある程度限定される中華なべみたいなものだからで、当然この車でできないこともたくさんある。速さや高速道路での快適さを求めたり、室内の広さを必要としたりする方には、ほかにもっと似合う自動車があるので、ぜひそちらをお選びいただきたい、というような使用目的が極めてはっきりしている自動車なのである。(KO)

Text: Martin Braun
加筆: 大林晃平
Photo: Suzuki