【名車物語 その5】夢の実現 真のカルトカー&アイコンモデル ランチア デルタ インテグラーレHFでドライブ!
2022年8月28日
夢の実現: 215馬力、0-100km/h加速5.7秒のランチア デルタ インテグラーレ エボⅡでドライブ。デルタ インテグラーレHFに乗り込み、至福の時間を楽しんだ。
土曜日の朝7時過ぎ、息子たちはまだ寝ていたが、ドライビングインストラクターのマッツェと隣人のエデが試乗させてくれと懇願する。
彼らの欲望の対象は、玄関の前に停まっている、ほっぺたを膨らまして、ターボチャージャーが大きく鳴り響くあれだ。「ランチア デルタ インテグラーレ エボⅡ」、215馬力と全輪駆動と荒削りなカルト的コンパクトランナバウト。この週末は、私のものだ。
今回の充実した時間を過ごしているのは、ランチアのボスであるルカ ナポリターノが関係しているからだ。彼はちょうどヨーロッパ市場でのランチアのカムバックを発表し、今後のスケジュールを提示した: 2024年4メートルクラスの新しいイプシロン、2026年から唯一の電動ドライブと4.6メートルのクロスオーバー、2028年新しいデルタというのが新型ランチアの開発計画だ。そして、彼の驚愕的かつワンダフルな一言は、「我々のデザイナーは新型デルタの説明を受けている、そして我々は皆、新しいHFを夢見ている」というものだった。
HFは「High Fidelity」の略であり、実際にこのクルマはハイフィデリティで目を覚まして、そして、私はカントリーロードへ向かうことにする。
始まりを告げるサイン
エンジンを始動し、ウォーミングアップの間、2000回転でゆったりと転がりながらも、私の頭の中では今までのランチアの思い出でいっぱいになる。1957年の「フラミニア」、1973年の「ストラトス」、「ラリー037」、2003年のIAAで最も美しいクルマに選ばれた「フルビア」、そしてもちろん1979年の初代「デルタ」も。
そして、1990年代半ばに今回の車とは無関係な2代目「デルタ」から始まったブランドの衰退は、2008年に肥大化した、あまりにも太ったブリキの城のような3代目で続き、2011年には「クライスラー ボイジャー」という7人乗りのバンに「ランチア」のロゴを貼り付けた時点で悲しみのどん底に落ちたのだ。
しかし現在、ステランティス グループ(プジョー、シトロエン、DS、オペル、フィアット、アルファロメオ、アバルト、クライスラー、ジープ、ラム、ダッジ、マセラティ&ランチア)はランチア再生と新しい道への資金を提供している。
そんなことを考えているうちにウオームアップアップも終わり、スピードメーター(最高240km!)とレブカウンター(最高9000回転!)の間に、ターボブースト圧、冷却水温、ラジオの上に油圧と温度を表示するディスプレイを再度確認してから走り出す。
父と子のドライブデルタ
3000回転以下ではデルタは普通の車だが、4000回転を超えると雷鳴のような音に変わる。まるで205/45-16のラバーがピレリ製ではなくパッテクス製(ドイツの接着剤)であるかのように、路面に吸い付き、素早くコーナーを抜ける。小柄(1300kg、全長3.90m)なことも功を奏して気持ちはさらに高まる。昔のドライビングの喜びはこうだったんだなと改めて認識&体感する。
そして私たちはいつのまにかヴェルナー ブレッテル(58)のガレージの前に立っている。白い「マルティーニ5」と、息子のルカ(26)の青いデルタが停まっているのだ。ブレッテル家は、実はランチア愛好家なのだ。 お父さんが2005年に「インテグラーレ」の本を書いていて、それを読めば誰でも全部わかるという、いわば定番中の定番だ。
1995年、ルカのパパは1万3千km走った「マルティーニ5」を2万ユーロ(約280万円)相当で購入し、1997年、ルカがベビーシートの後ろに座り、おしゃぶりをくわえていた頃、アオスタ谷(イタリア)の「デルタ デイズ」までドライブに行ったのだ。トラックマーシャルのスタッフの女性が車の中を覗き込むと、「Un Bambino come un angelo(天使のような赤ちゃん)」と言ったのである。そのことがルカに深く印象に残ったのだろう。
ランチアの価値は今日の2倍
父や母同様、建築家である彼は、「デルタ インテグラーレ」に乗りたいと思っていた。1994年、18歳になった息子は、1万5千ユーロ(約210万円)を貯めていた。ランチアのスペシャリスト、ラルフ ザウエルはゴールドバッハ(バイエルン州)の出身で、一家がランチアに熱中し始めた頃から知っている人物だ。
今日、ブレッテルと妻のシモーネが目を合わせても、「デルタ インテグラーレ」の価格展開については微笑むしかない。4万5千km走ったところで滅多に外へ出さない「マルティーニ5」の価値は当時の10倍になり、青い「インテグラーレ」は、現在では7万ユーロ(約980万円)もする。そんな彼らは、電気自動車としてのカムバックについて、「ランチアレキシオン」はどのように語っているのだろうか。
「まあ、そうだな」とヴェルナー ブレッテルは笑うしかない。「電気というテーマには屈しなければならない。しかし、この再生は、オリジナルモデルがデザインスタジオのインスピレーションとなり、かつての大工が板金に刻んだ荒削りな部分を新しいデルタが取り戻した場合にのみ可能となるのです」。
デルタHF、世界ラリー選手権で6連覇を達成
70年代、ジョルジェット ジウジアーロは、「デルタ(1979年)」と同様に「VWシロッコ(1974年)」を作ったが、どちらも後継モデルが2台いて、また巨匠に任せた方がよかったと思うほどだった。しかしその後の1987年から1992年にかけて、ランチアは「デルタHF」で世界ラリー選手権を6回連続制覇している。28年経った今でも、「デルタ インテグラーレ」の才能を見ることができる。
いい思い出のままにしておくには、それ以上乗らない方がいい車がある、そうでないと熱意が曇ってしまうヤングタイマーがあるのは事実だが「デルタ インテグラーレ」では、それが違うのだ。ターボをふかすと、まるで当時のサンレモラリーのプロローグのように、アスファルトの上を走り抜ける。
バーン! ドキッ! バーン!
推定10万ユーロ(約1,400万円)の価値を持つエボⅡ
皆さんにもうひとつ質問です。「インテグラーレ」を購入するにはどれくらい用意したらいいのでしょう? 9月にモンタフォン(オーストリア)で3回目の「ランチア レジェンド」を開催するブレッテルは「インテグラーレ」の価格について語ってくれた。
彼は「市場は非常に静的だ」と言う。現在ドイツには「300台のインテグラーレがありますが、新しいものは珍しく、古いものはほとんどゴミです」。しかし彼は私たちの「エボⅡ」の価値を10万ユーロ(約1,400万円)と見積もっている。「わずか60,000キロメートル、最高のメンテナンス状態、最高の外観」なのがその価格の理由である。
今日は、そんな60,000kmに451kmを加えた。ガソリンスタンドで46.5リットルのハイオクを101ユーロ37セントで給油していると、40代半ばの男性が近づいてきて、「週末にたくさんの車を見たけど、このインテグラーレがいちばんいいね」と興奮気味に言った。
テクニカルデータ&価格: ランチア デルタ インテグラーレ エボⅡ
• エンジン: 4気筒ターボ、フロント横置き
• 排気量: 1995 cm3
• 最高出力: 215PS@5750rpm
• 最大トルク: 308Nm@2500rpm
• 駆動方式: 全輪駆動/5速ギアボックス
• 車重配分(フロント/リア): 47/53%
• 全長/全幅/全高: 3900/1770/1365mm
• 乾燥重量: 1340kg
• 0-100 km/h加速: 5.7秒
• 最高速度: 220km/h
• 平均燃費: 9.7km/ℓ(451kmのテスト走行時)
• 中古車価格: 約100,000ユーロ(約1,400万円)
Text: Andreas May
Photo: autobild.de