【短い動画付き】レクサス 新型スーパースポーツカーのコンセプトモデル公表 LFAの後継モデル?
2022年8月21日
このオール電化のレクサスのスタディモデルは、新しいLFAになる一台かもしれない。V10自然吸気エンジン、そして素晴らしいサウンドで、多くのファンの心を掴んできたレクサスLFA。そして今、その後継モデルとして、電気自動車のスーパースポーツカーが誕生する。
7分14秒。2011年、伝説のニュルブルクリンクサーキット北コース、ノルトシュライフェのアスファルトに「レクサスLFA」が焼き付いた時のこと。さらに、シャープなルックスと自然吸気V10エンジンの息を呑むようなサウンドが加わり、日本車は多くのファンの心を鷲掴みにした。しかしながらこれまではその後継機種がなかったのだが、このスタディモデルの登場でそれが変わるかもしれない。
2021年末、レクサスの豊田章男社長は、「LFA」本来の走りの味わいや、「秘伝のレシピ」を受け継いだオール電化のスポーツカーを開発すると発表した。トヨタによれば、新しいオール電化のレクサスモデルは、プレミアム性能の走りの次の時代を切り開くのに貢献すると言う。
伸びやかなフロント、巨大なリアディフューザー
その後、このスーパースポーツカーのスタディモデルは、グッドウッドで開催された2022年の「フェスティバル オブ スピード」で、「Electrified Sport Concept」として正式に発表された。長いボンネットと低く構えたフロント、ヘッドライトのエアインテークはマクラーレン720Sを彷彿とさせるフラットなスーパースポーツカーである。
横顔では、ボンネットの長さが大きく伸び、コンパクトなドライバーズキャビンが後方に移動しているのが目を引く。フロントのホイールアーチから立ち上がるデザインラインは、サイドを走り、大きく掃き出すようにルーフラインに合流している。そして、もうひとつ目を引くのは、強大な敷居(シル)の上に開く小さなドアだ。
最大700kmの航続が可能
リアは、大きなフロント開口部をピックアップし、リアライトは一体化されている。中央にはフィンを持つ巨大なリアディフューザーが備わっている。そして、モータースポーツと同じように、もうひとつのリアランプが収納されている。
レクサスでは、走行性能の詳細についてはまだ発表していない。しかし、日本メーカーが明らかにしたことは、固体電池技術により、0から100km/hまでの加速は2秒台前半、航続距離は約700kmという数字だ。一方、「LFA」は4.8リッターV10自然吸気エンジンから560馬力を発揮し、0-100km/hまで3.7秒で加速した。
このスーパースポーツカーは、トヨタが電気自動車攻勢をかける烽火(のろし)モデルのひとつだ。レクサスは、その方向転換の中で、2030年までにオール電化のブランドとなることを目指している。従って、「LFA」の後継車が伝説の先代にふさわしいかどうか、そしてニュルブルクリンク上でそれを超えることができるかどうかは、時間が経って実際に試乗してみなければわからない。
【ABJのコメント】
「LFA」の魅力とは?
あの緻密で変えようのないパッケージ。
妥協をせずに構築された各部の設計と精度。
数々の魅力が「LFA」にはあるはずだが、その中でもV10エンジンという要素が大変大きな魅力として存在していることは言うまでもないだろう。他のモデルには採用されることもなく生み出され、「LFA」にだけ採用されて消えて行ってしまった内燃機関の中の内燃機関ともいえる10気筒エンジン。
幸運なことに「LFA」が全力で駆け抜けていく姿を間近で何回か見る機会があったが、あの高回転で奏でる音は他のスーパースポーツに全く劣っていないばかりか、最上の響きであったことを今でも思い出す。昨今の、人を驚かすように吠えるだけが大多数のスポーツカーに対し、「LFA」のそれはけっしてこけおどしなどではない、本物の響きだった。
そんな10気筒エンジンの代わりに、BEVとして登場するレクサスのスーパースポーツはいったいどのような魅力を持っているのだろうか? もちろん内燃機関だけを賛美する気持ちはないし、BEVになることを否定する気もまったくない。
それどころかレクサスのラインナップがすべてBEVになるというニュースも、個人的には歓迎はすれども反対する気持ちは毛頭ない。逆に、様々な新技術を導入できるはずの高価格モデルだからこそ、ほかのメーカーのBEVが驚くほどのレクサスが登場してくれたら喜ばしいとさえおもう。
でも心の中ではあの素晴らしい10気筒エンジンを積んでいないスーパースポーツを、2代目とか後継の「LFA」と呼ぶのには抵抗がある。まったく新しいコンセプトで、BEVだからこそ生み出せる魅力を、妥協なく追及した、新しい価値観のスーパースポーツ、であるならば大賛成だが、その場合、「LFA」の残り香が一切しないような車のほうが、きっとより魅力的なのではないか、と思ってしまうのだが・・・。(KO)
Text: Sebastian Friemel
加筆: 大林晃平
Photo: Lexus