「プラモデルはやっぱり面白い」Vol. 13 フェラーリ(2)
2022年8月12日
今回はフェラーリの魅力(勿論、プラモデルとして)を紹介したい。フェラーリは、本稿Vol. 4でも採り上げさせて頂いているが、まだまだフェラーリのプラモデルの魅力については紹介したい事がある。
フェラーリの魅力はボディフォルムの美しさに尽きるのではないだろうか。それは当然プラモデルにも引き継がれているはずである。
「フェラーリ250SWB」 イタレリ製 1/24
「フェラーリ250SWB(ショート・ホイールベース・ベルリネッタ)」は「フェラーリ250GT Tdf(ベルリネッタ・ツール・ド・フランス)」の成功を引き継ぐべく1959年にデビューした。
因みに両車とも「フェラーリ250」とネーミングされているが、これは1950年代のフェラーリは同じシャーシに各種のボディを架装して個性を持たせた為である。
「フェラーリ250SWB」(以下250SWBと記述する)はその名の通り2400㎜のショートホイールベースでエンジンはV型12気筒SOHC排気量2953ccが搭載され、最高出力280psで最高速度は240km/hを誇った。
ボディデザインはピニンファリーナが担当し、美しい外観でありながらアルミボディのコンペティションモデルはレースで活躍した。
知人から「一番好きなフェラーリは?」と問われると、私はいつもこの250SWBと答えている。残念ながら特に古いフェラーリは身近に存在するクルマではない。したがって写真や活字でしか情報を得られないが、私はこの250SWBの写真を見ただけで美しいデザインに魅せられてしまった。後日、実車を見る機会があったが、その想いは倍増した。
三角窓があることから250SWB後期型と思われるが、実車の美しさをよく再現していると思う。数々のイタレリ製のキットをこれまでに製作してきたが、全般的に変に凝ったところも無く組み易いことが特長である(外国製のキットのなかには不必要なほど数多くのパーツが分割されるなど製作が困難になっているモデルも存在する)。
また、このキットもパーツ数は少ないながらV型12気筒エンジンがとてもよく再現されている。私はスケールカーモデルには是非エンジンを搭載してもらいたいと思っている。実車でもそうだが、興味を持ったクルマはエンジンルームを覗いてみたくなるのが常である。
本作のボディカラーはイエローにしてみた。フェラーリのボディカラーといえば「情熱の赤(ロッソ)」であるが、以前からイエローの250SWBを作りたかったのだ。今回製作してみて正解だったと思っている。
イエロー塗装は下地色の影響を受けやすい。特に塗装前の成型色が暗い色調であると綺麗な発色とならないので、イエローを吹く前にはサーフェイサーで下地処理することが必要である。
残念ながらこのキットは現在絶版中であるが、ネット上で時々発見することもあるので是非とも入手して製作して頂きたい優れたキットである。だいたいの価格は約5,000円~10,000円程度だ。
「フェラーリ カリフォルニア250 GT」 イタレリ製 1/24
250SWBと同様のシャーシにピニンファリーナがデザインした美しいスパイダーボディが架装された、まさしくエレガントなフェラーリである。
カリフォルニアのフェラーリ代理店からのオファーにより開発され、1957年に発表された。それ故、北米市場では大人気を博したモデルである。美しい外観でありながら、250SWBと同じエンジンを搭載しており高性能なスポーツカーであった。
キット内容は実車と同様にシャーシの製作は250SWBと同様である。そしてボディ製作に取りかかるわけだが、やはりボディカラーの選択の必要があり、本作も「情熱の赤」とはしなかった。なぜなら、このカリフォルニアスパイダーにはもう少し落ち着いた色調が似合うと思ったからである。色々と考えた結果、深い色調のブルーとした。
ボディカラー塗装後はデカールのマーキング作業となるが、ここで問題が起きた。このキットも250SWBと同様に古いキットであり、デカールを水につけるとひび割れしてしまったのだ。
古いデカールにはよくあることだが、対処方法があるので、ご紹介しよう。私も最近になって入手したのだが、「LIQUID DECAL FILM」というデカール用の保護剤が販売されている。水につける以前にデカール全体に塗り、乾燥後はひび割れが防げるという便利なモノである(アメリカ製のようだ)。恐らく、デカール表面をコーティングしてひび割れを防ぐのだと思うが、これは一つ持っておいて良いものだと思う(私はネットで探して1,000円程度で購入した)。
デカールの話題が続くが、本キットにはヘッドライトカバーの枠部分に貼付するシルバー色のデカールは付属されていない。したがって塗装することになるのだが、難易度が高いのでデカール貼付の方が綺麗に仕上がる。目立つ部分でもあるので気になってしまった。
「フェラーリ 250 テスタロッサ」 ハセガワ製 1/24
1950年代のスポーツカー世界選手権は大排気量で大出力のエンジンを搭載したモンスターカーが競っていた。しかしエンジン性能に比してシャーシ性能が劣っており危険な状況で、大事故も発生していた。その結果、エンジンの排気量を3.0ℓに制限することが規定され、1958年から実施された。そのルールに則ってフェラーリが開発したスポーツカーが「フェラーリ 250テスタロッサ」であった。
パワーユニットは新型のV型12気筒SOHCエンジンで排気量2953cc、最大出力300PSである。なおこのエンジンのカムカバーは赤く塗装され、テスタロッサ(赤い頭の意)と呼ばれた。
250テスタロッサはレースで大活躍し、特にル・マンでは1958年、60年、61年と優勝したのである。
この美しいフェラーリをハセガワがキット化し発売した。ハセガワはテスタロッサのキット化に注力し「シャーシNo.0714 TR」、「1958 LM」バージョンも追加発売した。
これらのキット発売時に私は嬉しく思い、継続して古いフェラーリのプラモデルが発売されることを期待したのだが、そうはいかなかった。
やはり国産プラモデルメーカーは新型フェラーリのモデル化には積極的であるが、古いフェラーリには消極的である(しかし前述のようにイタレリなどは1950~60年代のフェラーリのモデルを発売していた)。しかも最近はフェラーリ社との版権の問題もあるのか、新型のフェラーリのプラモデルでさえ店頭に無い状況である。
さて肝心のキット内容であるが、あのテスタロッサの独特なフォルムをよく再現していると思う。スカリエッティがデザインした複雑なボディは「ポントゥーンフェンダー」と呼ばれたが、正直なところ私にはテスタロッサの写真からでは全体像がよく把握できないでいた。しかしこのキットを完成させて鑑賞したことでよく理解できた。
このキットのボディを組んでいる時に感心させられたことがある。ボディパーツの部品分割が独特であり、多少の違和感があるが、組み上げてみると見事なフォルムになるのである。
組立説明書も解かりやすく親切である。デカールの貼付位置を1/10㎜単位で指示されているのには驚かされた。これほど正確に作り上げてもらいたいと考えたハセガワの担当者の心意気を感じた。
しかし敢えて言わせて頂ければ、付属のシートベルトのデカールはベストとは言えないので、これを使用するか否かは製作者皆さんの判断に委ねたい。
アフターパーツを使用する必要がないほど、付属パーツが豊富だ。革製ストラップまで付属しているので素組のままで完成後も十分な達成感に浸れる素晴らしいキットだ。
「フェラーリ 360スパイダー」 タミヤ製 1/24
最後に「フェラーリ360 スパイダー」を紹介したい。実車は言うまでもなく「フェラーリ360 モデナ」のオープンタイプとして2000年に発売されたスポーツカーである。
ベースとなった360モデナはF355の後継車として登場し、V型8気筒3.6ℓエンジンが搭載されていた。V8エンジン搭載車は「ピッコロフェラーリ」(小さなフェラーリの意)と呼ばれているが、360モデナはもはやピッコロを卒業した堂々としたフェラーリと思える。
タミヤは360モデナ、360スパイダー共にキット化している。シャーシ裏面には半透明のパーツを使用して完成後もエンジン、ミッションが鑑賞可能となっていたりと、キット内容についてはタミヤスタンダードというべき出来の良さである。
また「ウインドウマスクシール」が付属しており、フロント及びリアウインドウの枠部分のセミグロスブラック塗装には非常に有用である。このようなシールが付属していなかったキットのウインドウの塗装には悩んだものである。
タミヤの組立説明書が理解し易いのは言うまでもないが、他プラモデルメーカーの説明書との一番大きな差は塗装する際のカラー指定だと思う。非常に詳細に記述されており、一部の外国産プラモデルのそれと比較すると雲泥の差である。従って外国産プラモデルを塗装する際には実車写真をまず探さなければならないのである。
最後に
前述したように版権の問題もあるのだろうか、現在フェラーリのプラモデルは非常に入手しづらい環境にあるのが残念だ。一方で今期のフェラーリF1は好調で、ランク上位に位置しているは嬉しい限りだ。
プラモデル市場は、報道によればコロナ禍以前の1.5倍に拡大しているとのことだ。是非、各プラモデルメーカーには消費者が求める商品を開発して欲しい。その筆頭はフェラーリであると思うのだ。
Text & photo: 桐生 呂目男