1. ホーム
  2. SUV
  3. 【比較テスト】小型パワーSUV対決 アウディSQ2対VW T-Roc R 300馬力小型SUV2台を比較 その結果は?

【比較テスト】小型パワーSUV対決 アウディSQ2対VW T-Roc R 300馬力小型SUV2台を比較 その結果は?

2022年8月11日

VWグループの小さなファンカー同士の決戦。基本的に、小型SUVは必ずしも手を焼いたり、心臓をバクバクさせたりするようなクルマではない。もちろん、アウディSQ2やVW T-Roc Rのように300馬力のヒップハイシートであれば話は別だが。2台のフォルクスワーゲングループ内の小型パワーSUVを比較してみた

確かな約束。VWグループのコンパクトセグメントのSUVだけに限っても、この比較には「退屈」は許されないのだ。そこで、言葉を濁さないために、まずはそれぞれのトップモデルにお願いした。正確には、最近改良された「VW T-Roc R」と、インゴルシュタットに本拠を置く技術的兄弟である「アウディSQ2」が出会ったのだ。どちらも全長4.20mをわずかに超えるだけだが、それでも300馬力を発揮する。もちろん、それぞれ単体で。

アウディ SQ2とVW T-Roc Rは、ものすごい接戦となった。

理屈はともかく、まずは「T-Roc」のフェイスリフトを見てみよう。見ての通り、あまり変わったようには見えないが、その一方で、VWの小型SUVであることに変わりはない。ラジエーターグリルには連続したLEDストリップが追加され、その下にはブラックのトリミングが施され、よりキビキビとした親しみやすい表情を強調している。また、ブラック塗装のトリムがリヤを彩り、テールランプはより「ゴルフ」を彷彿とさせるデザインとなっている。

SQ2はT-ROCより現代的でないように見える

一方、「SQ2」は、2020年10月のフェイスリフト以降、変更されていない。そして、それは決して悪いことではない。大型グリル、ブラックインサート、ダイナミックな表情・・・。バックミラーで見過ごせないアウディ最小のSUVは、Sバージョンでもアグレッシブさや見た目の強引さは感じさせない調和のとれたデザインだ。また残念ながら、アウディの公式発表によれば、「Q2」の後継モデルは存在しないとのことだ。

インテリアは、アウディの方が素材の質感が高いが、すでに第3世代のモジュラーインフォテインメントシステム(MIB3)を採用しているVWに比べると、現代的でないように見える。VWは、Apple CarPlayやAndroid Autoもケーブルなしで可能だ。しかし、アウディのボイスコントロールは、「T-Roc」のボイスコントロールよりも話し言葉の理解度が低く、「SQ2」にはボイスアクティベーションがまったくない。また、(最新の地図素材とは異なり)「無線で」後付けすることもできない。

小型パワープラント: ターボアシストにより、VWと同様に2リッター4気筒エンジンは最高出力300馬力、最大トルク400Nmを発揮する。

T-Rocはこうした現代的な機能を使いこなし、ナビゲーションシステムやラジオは「Hello Volkswagen」で操作できるが、クライメートコントロールは機能性の低いタッチスライダーで操作しなければならない。VWの場合、これらはラウド/クワイエットも担当するが、アウディは本物のノブやボタンに頼っており、しかもそれだけではない。「SQ2」のやや小型のモニターは、触るとせいぜい指紋が付く程度で、マルチメディアシステムはBMWのiDriveのようにセンターコンソールの回転式プッシュボタンで操作する。

ステアリングホイールにもタッチエレメントを搭載

しかし、ミュンヘン製の車と同様、この操作コンセプトの時代は終わりつつあるのかもしれない。VWに採用された高感度なタッチエレメントはステアリングホイールにも採用され、ドライブモードボタンを示す青いRが表示されるようになっている。

「T-Roc」は、より快適に、あるいはよりスポーティに設定することができる。アダプティブダンパーのおかげで、乗り心地の改善も可能だ。これは、常にスポーツサスペンションが装備され、ダンパー調整ができない「SQ2」に対する明確なアドバンテージと言える。アウディで旅をすることが罰ゲームというわけではないものの、本当にひどい石畳の道では、少し不機嫌になる感じがある。さらに、「T-Roc」はすべてのシートとトランクのスペースが広く、フロントシートは私たちをよりよくサポートし、太ももは数センチメートル多くサポートされているように感じる。一方で、長距離走行やサーキット走行では、フォルクスワーゲンはアウディから少し劣っていることは否めない。

走行性能の引き出し

性能に関しては、明確な引き分けだ。それもそのはず、両車ともにおなじみの2リッターTSIを搭載し、7段変速のデュアルクラッチを介して300馬力を4輪に供給するからである。完全停止状態から100km/hまでは「T-Roc R」がコンマ1秒、200km/hまでは「SQ2」が0.7秒先行し、メーカーが両者を止めるのは250km/hだ。また、ダイレクトシフトのギアボックスにも差はなく、左右で目立たず素早く作動するが、両モデルとも、シフトチェンジの際に少し乱れがあり、すぐに正しいギア比を見つけられないことがあるようだ。

デジタルコックピットはT-ROCに標準装備され、大型のナビゲーションシステム「Discover Pro」は1,135ユーロ(約15万円)の追加料金で購入できるようになっている。

両車ともステアリングのバランスが心地よく、その違いは直接乗り換えることでしか判断できない。「SQ2」はやや力が入りにくく、「T-Roc R」はややダイレクトな印象だが、大きな優越が存在するとはあまり言えない。

一方、ハンドリングは申し分ない。あまり楽観的にカーブにアプローチすると、2台とも四つんばいになって外側に押し出されてしまう。このような挙動になった時、つまり両車とも、アンダーステアになった時は、カーブの入り口でドライバーが本当に無理をしたとき、短いパワーパックを完全に「オーバードライブ」させたときの、最後の手段でしかないのだ。

ESPをオフにしても、重大な危険はともかく、想定外の事態はほとんど起こらない。とはいえ、クルマの楽しさは十二分に伝わってくる。しかしオフにすることはお勧めしない。この小人たちがこれほどの力を持っているとは、ほとんど誰も信じていないからだ。

チタン製システムで3,975ユーロ(約55万円)という破格の値段

「T-Roc 」の4本の本物のテールパイプを見て初めて、通はなるほどと頷くのである。アクラポビッチのチタン製エグゾーストシステムの価格は、なんと3,975ユーロ(約55万円)。控えめなSQ2よりもリッチなサウンドだが、スポーツモードでは少しノイジーだし、全体的に音量が大きめだ。これはかなり人工的な効果で、好き嫌いが分かれるところだが、だからこそVWのエンジンサウンドなどにはボーナスポイントを与えない。

結局、両者の差はわずか3ポイントにとどまった。

参考までに、「T-Roc」のテスト車(アクラポビッチのチタン製エグゾーストシステムなし)は5万ユーロ(約700万円)以上だが、さらに「すべてを搭載した」テスト車は6万ユーロ(約840万円)近くになる。

10リットル近いテスト時の燃料消費量は、現在のリッターあたり2ユーロ(約280円)近い狂気の燃料価格を考えると、本当に厳しいと思う。そして、スピードデートに誘惑された人は、その2倍を計算しなければならない。しかも、アウディもVWも高価なハイオクを必要とするのである。

「T-Roc R」の方が装備はやや充実しているが、3万kmごとにオイル交換が必要とされる。

第1位 251点: VW T-Roc R
パワフルで扱いやすく、日常使いにも適したミックス。しかし残念ながら価格が高い。

第2位 249点: アウディSQ2
こちらも大きな楽しみのポテンシャルに恵まれているが、小さくて快適性に劣る。そしてこちらもまた、高価である。

結論:
簡潔さは人生のスパイス。これは「SQ2」と「T-Roc R」に間違いなく言えることだ。4輪で300馬力を発揮する小型パワーSUVは、常にその楽しさのポテンシャルを追求するよう誘惑する。しかし、残念ながら、どちらも価格はかなりの高水準だ。

【ABJのコメント】
いまさら言うまでもなく、この2台は兄弟車である。そもそもの元ネタ、というかベースになったのはフォルクスワーゲングループの中の根幹車種ともいえる「ゴルフ」などのプラットフォームを、SUV化した2台といえる。もちろん高性能なのは「SQ2」のほうで、こちらのほうがより高価で希少性が高く、プレミアムラインである。一方の「T-Roc」も必要以上に高性能で300馬力という、一昔前ならスーパーカーも驚くほどのパワーを誇る。

300馬力以上ものパワーがあれば遅いはずもないし、パワー不足など感じることなどあるはずもなく、2台とも驚くほどの高性能で驚くほどの価格の小さなセグメントのSUVが成立している。もちろんこういうジャンルの車を否定する気はないし、言ってみれば21世紀の「フォルクスワーゲン ゴルフGTI」なのかもしれない、と思ってはみるが、それにしても価格が高いことは驚くべきで、「ゴルフGTI」や「ゴルフR」よりもずっと高価である。高価なことで台数が限られプレミアム性が保たれるということもあるかもしれないが、オプションをいろいろと乗っけていくと、1,000万円に近くなってしまうのだから、なかなかおいそれと買える価格ではないだろう。

またいくら小さな、コンパクトSUVとはいっても、これだけのパワーの車を飛ばせば本文中にも記されているとおり、燃費もかさむし、タイヤもめきめき減ってしまう。そういう意味でもかなり特殊な2台ではあるが、本文中にも記されている通り、「Q2」は次期モデルがないらしい。やはりそろそろフォルクスワーゲングループのラインナップも整理され、合理化されていくという方向なのだろうか。(KO)

Text: Berend Sanders and Gerald Czajka
加筆: 大林晃平
Photo: autobild.de