【チューニングカー】MTMがほぼレースカーに仕立て上げたアウディR8 GT Sをテスト サーキットでその実力を試す

1066
- Advertisement -

記録破りのアウディを試乗。レーシングカーのエアロパーツとカーボンパーツ、コイルオーバーサスペンションを装備し、スティッキーなタイヤを装着する。MTMがチューニングしたアウディR8でスポーツカーエキスパートのギドがタイムアタックする。

「MTM R8 GT S」は、サーキットのために開発された、他にはないモデルだ。多くのパワー、多くのトラクション、多くのダウンフォース、速いラップタイム、これらが「R8 V10パフォーマンス」の改造の目標だった。MTMと「R8」、その関係はずっと続いているのだ。そして、愛と成功を特徴としている。例えば2013年、MTMのオーナー、ローランド メイヤーが完成度の高い「R8」でファンを沸かせたとき。当時、ナルドサーキットで350km/h以上の高速を達成したのは、チューニングされた810馬力の強力なRS-6エンジンのおかげだった。

サスペンションのセッティングは完璧で、クルマがどこに行くのか分かっているのではないかと思わせるほどだ。

2014年、チューナーはさらに一歩進んだ。彼は本物の「アウディR8 GT3 LMS」レーシングカーを、ある程度公道で走れるようにし、セミスリックタイヤでいくつかのラップレコードを記録した。当時のザクセンリンクサーキットで、1分28秒89というラップタイムを記録した。ただし、この時は気温が低く、ミシュランカップ2だったため、その記録に終わったが、それでもそのラップタイムでも、歴代記録、814台中12位と十分な速さを発揮したのだった。そして、オーナーのローランド メイヤーがその地位に決して甘んじていないことは、このチューナーを知る人はわかっている。

620馬力から822馬力へ

そして、現在のR8世代に取り組んだ。その5.2リッターV10用のスーパーチャージャーキットは、パペンブルグで3,000m走行後に337.9km/hを記録するほど熟成が進んでいた。しかし、メイヤーはこのクルマでさらにアイデアを練っていた。そして、アウディスポーツが、レーストラック用の「GT4」を発表したとき、その計画は明確となった。そのレースカーのパーツを買ってきて、適合させれば計画は完了となる。

スーパーチャージャー付きV10は低回転でもパワフルで、6000rpmから9000rpmの間で、本当によく回る。

ところが、実際にはスムーズに事は運ばず、そんなに早く、簡単にはいかなかった。この「R8」が本来の走りをするようになるには、約2年の歳月を必要とした。パワーはコンプレッサー経由で620馬力から822馬力にまでアップ。加えて、アンダーボディパネル、フロントスカート、スプリッターとフリック、ディフューザー付きリアスカート、アジャスタブルウィング、サイドブレードとシルなど、「GT4」からのエアロを搭載している。しかし、レーシングカーの中央で終わっている排気系だけは、ナンバープレートの関係で左右にそれぞれ2本のテールパイプに変更する必要があった。

MTM R8 7.93秒で200km/hに到達

シャーシは?「GT4」ではなく、フルアジャスタブルなスレッドクラブスポーツバージョン4を採用。ホイール?9インチと11.5×20インチの新しいBBS製FI-Rで、わずか7.9キロと9.2キロの軽さ(ホイール1本あたり、VA-HA)だ。タイヤ?ミシュラン製カップ2 Rの245/30と305/30 R20。スピードは?0から100km/hまで2.94秒、0から200km/hまで7.93秒と、十分なパワーがあることを物語っている。

コックピットの雰囲気は、これ以上チューニングする必要はないだろう。低い着座位置、手になじむステアリングホイール、完璧なセットアップがなされている。

また、カーボンパーツを多用し、レカロのカーボンバケットシート(マイナス25kg)の軽さもあって、総重量も含めライトウェイトに仕上がっている。ちなみに、ラウジッツリンクのファクトリーカーは、セミスリックタイヤを装着していたため、1分32秒11だった。ここでのベストタイムは、「911 GT2 RS」の1分25秒91だ。メイヤーは「911のタイムは難しいだろうが、トップ3は可能なはずだ!」と語る。

アンダーステアという外国語

当日のラウジッツリンクサーキット。曇り、気温12度。MTMチームは事前にウォームアップされたミシュランカップ2 Rをアクセルに装着。ラウジッツリンクサーキットのパドックは、「MTMアウディR8 GT S」が入ってくるだけで、猛音でいっぱいになり、それからが本番だ。奥には10個のポットから燃え盛る情熱の炎が、最高9,000回転で意識に突き刺さる。コンプレッサーは細かく音を立て、ギアは脊髄に容赦なく突き刺さる。

GT4のカーボンボンネットは、愛好家にとって懐かしい存在だろう。

フロントアクスルにとって、アンダーステアは異質な言葉だ。「R8」はレーシングカーのようにキビキビと操縦でき、同クラスのクルマが弱音を吐くしかないような場所でも噛みつき、爪を立て、まるで自分の力でわずかにオーバーステアを出しながらカーブから車体を押し出すのである。

結局、「GT2 RS」に比べて最高速度で10km/hが不足している。ラップタイムでは、1.6秒遅い。それでも、ヴェットステッテンを本拠地とするMTMよ、ラウジッツリンクサーキットで輝かしいスーパースポーツカーの中で2位だ。おめでとう!

テクニカルデータ&価格: MTMアウディR8 GT S
• ENGINE: V10、スーパーチャージャー、ミッド・リア・ロングトゥディティ
• 排気量: 5204cc
• 最高出力: 822PS@8650rpm
• 最大トルク: 720Nm@5100rpm
• 0-100km/h加速: 2.9秒
• 0-200km/h加速: 7.9秒
• 最高速度: 330km/h
• 価格: 295,600ユーロ(約4,000万円)より

結論:
メイヤー(MTM)は、サーキットで再びアウディの栄冠を手に入れた。歴代トップの「GT2 RS」に追いつくまでには何かが足りないが、それでも「GT4」とスーパーチャージャーのパッケージの効果はすごいものがある。

Text: Guido Naumann
Photo: autobild.de