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【このクルマなんぼ?】バーゲン? この27年落ちの走行距離32万km超のBMW M3 GTのお値段やいかに?

2022年7月13日

聞くところによると、ここ数年、M3 GTの購入には30万ユーロ(約4,200万円)近くが必要とされているそうだ。今、その特別なモデルが、数分の一の価格で販売されているのだ!

この「BMW M3 GT」は、前オーナー6名、走行距離32万キロ以上だ。そう聞くと、ボロボロの車のようだが、長い年月をかけて総計で約29万ユーロ(約4,000万円)のメンテナンスとレストアを行ったと言われている。そんな356台しか製造されなかった特別なモデルがeBayで販売されている。その価格が気になるところだ!

1995年モデルでは、「FIA GT」および「IMSAシリーズ」のホモロゲーションモデルとして、「E36」シリーズから「M3 GT」がBMWにより生産された。350台が製造され、最終的に356台(プレプロダクションモデル5台を含む)が、GTの特徴である「ブリティッシュレーシンググリーン」色(カラーコード312)で生産されたのだった。「GT」は、フロントスプリッターやリアウィング、17インチ鍛造ホイール、ホワイトウインカーなどの特別なディテールによって、塗装だけでなく、その存在を他の「M3」と識別することができる。インテリアでは、「メキシカングリーン」のセンターパネルとカーボントリムを採用したスポーツシートを装備し、ミュンヘン本社が限定特別仕様車として販売した。

286馬力から295馬力にパワーアップしたM3 GT

しかし、それだけでなく、エンジンも見直された。3リッター直列6気筒(S50B30)には、6個の個別スロットルバルブと新開発のカムシャフトコントロール(略してバノス)が装備されていた。また、1995年末から提供されたフェイスリフトモデルの3.2リッターエンジン(S52B30)の短いインテークマニホールドはすでに装着されていた。その結果、ノーマルの「M3」が286馬力と320Nmを発生するのに対し、「GT」は、295馬力と323Nmの最大トルクを発生するようになった。そして、「GT」は5速マニュアルギアボックスのみの設定で、新車基本価格は91,000マルク(約650万円)であった。

エンジンルームは一見とてもきれいな印象だ。19,000ユーロ(約270万円)でエンジンのオーバーホールをしたのだから、当然だ。

このクルマはイギリス仕様で、製造された356台(うち約80台がドイツに残っているといわれる)のうち、イギリス市場向けにはたったの50台が製造された。これはその50台中45番目。

走行距離32万km以上

走行距離は32万km以上(20万マイル以上)、オーナーは今までで合計6人だが、eBayの出品者は、これが史上最高の「M3 GT」の1台だということを心から約束している。2005年以降、約25万英ポンド(約4,000万円)がサービスやメンテナンスに使われたと言われているというが、なんとも信じがたい金額だ。

19,000ユーロ(約270万円)弱でエンジンのオーバーホールを実施

この「M3」には、書類や請求書がたくさん入った膨らんだフォルダーが2つあり、売却と同時に引き渡されるそうだ。近年行われた作業のほんの一部を紹介すると、2019年にはイギリスのJCレーシングで、オリジナルエンジンを約1万6000英ポンド(約260万円)弱かけてオーバーホールしたという。性能面では310馬力を記録しているという。

昨年、ボディワークとコスメティック作業に14,000英ポンド(約225万円)近くを費やしたばかりで、「GT」はもはやオリジナルペイントではなくなったのだ。さらに、多少の使用感や小さな傷があることも報告されている。

BMW M3 GTは、356台すべてが「ブリティッシュレーシンググリーン」のカラーで納車された。

この「M3 GT」は、5代目オーナーが、数年前にレーストラック用に改造したスペシャルモデルなので、オリジナリティを求める人には向かない。その内容は、BMWのスペシャリストである「チームシルマー」が、1万英ポンド(約160万円)弱の費用をかけてシャーシをリビルト、モディファイした。さらに、4ピストン固定キャリパーのAPブレーキシステムとクワイフ製LSD(リミテッドスリップデフ)が装着された。マイナスポイントとしては オリジナルの鍛造ホイール(BMWモータースポーツのエンボス付き)は、インテリアのカーボントリムと同様、もはや存在せず、ブラックキドニーグリルが装着され、セントラルロックシステムが回転している状態になっている。

それがこのM3 GTの良し悪しを物語っている

このように、この「M3」には法外な資金が投入されているが、32万km以上、27年という歳月は、クルマに何の影響も劣化も残さないということはありえない。冷静に考えてみると、「M3」は、走行距離が長いこと、前オーナーが6人であること、オリジナルの状態ではないこと、ドイツの顧客にとって重要ではない右ハンドルであることなどが、不利な点としてあげられる。

プラス面では、完全に検証可能な記録簿、エンジンのオーバーホール、ボディワーク、コスメのメンテなど。売り手によると、「M3」は素晴らしいドライブをするはずだとのこと。そして、最も重要なのは、今回の価格だ。この「GT」は45,000英ポンド(約720万円)弱になると言われている。近年は価格も高騰している。現状の「M3 GT」の中古車価格は、通常8万~10万ユーロ(約1,120~1,400万円)なので、相場の半額くらいで購入することが可能だということだ。

【ABJのコメント】
すでに何回も紹介した「M3」と「M5」だが、今回は「M3」の「GT」、というなかなかレアな一台である。写真で見る限り、カラーがいい感じである。こういうちょっと落ち着いたカラーがちょっと前の「M3」には似合う。また27年で4,000万円以上をかけた整備費用にも驚いてしまうが、こういう高性能車をきちんと乗ろうとすればそれぐらいの費用は掛かって当たり前だし、それだけ費やさなければ本物の性能や味は保てない、ということもである。

32万kmという走行距離も確かに多いけれど、やはり27年という年月を考えれば妥当ともいえる距離だし、先ほどの費用とあわせて考えると、きちんとメンテナンスされながら愛され続け、乗り続けてこられた一台であることがわかる。理想的な使われ方の一台だし、自動車というのは本来こうあるべきなのだろう。もちろん今後の所有にもそれなりの出費と情熱が必要とは思うが、ぜひ良いオーナーに巡り合ってほしい。(KO)

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: ebay / detelessresistrationltd