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【初テスト】フレッシュアップされた高性能ラグジュアリーサルーン 新型アウディS8に初試乗 そのドライビングレポート!

2022年7月7日

アウディS8は、ラグジュアリークラスの中でも、例外的なスポーティな才能を持つ車だ。そのため、マイナーチェンジを受けアップデートされたばかりの現行モデルは、レーストラックでもその実力を証明しなければならない。

自動車のカリスマ性? 「S8」は、文句なしにそれを放射している。アルミニウムをふんだんに使った「S」らしい色合いと外観も印象的だ。しかし、要望に応じて、今回の試乗車のような「ウルトラブルー」よりも控えめな色にすることもできるし、シルバーのライトメタルがすべてきらめくことなく、「ブラックオプティクスパッケージ」にすることも可能だ。そして、いつも光り輝いているのは、その歴史だ。

何しろ、このラグジュアリークラスサルーンの大御所は、25年も前から存在しているのだから。この間、「S8」はよりパワフル(605馬力のS8プラス)になり、常に軽量化(少なくとも200kgの軽減)され、またより純粋になった(初代S8にはマニュアルギアボックスも用意されていた)。そして、「S8」は、現行世代でもっともパワフルな仕様になった。

エンジンはパワフルだが、多くの質量を動かさなければならない。しかしより軽く、51馬力弱かった先代でも、同じように速かった。

グレードアップしたこの豪華客船の船内は、ほとんどすべてがマイナーチェンジ前と同じだ。その代わり、新しいヘッドライトがアスファルトを照らしている。そのひとつひとつに130万個のマイクロミラーがあり、LEDライトビームと連動して、車線と方位を示す光を高速道路に投射する。この光は、矢印のグラフィックによって、明るい光のカーペットの中に、道路を正確に描き出す。まるで「ドライブインシネマ4.0」だ。イルミネーションとマトリクス関数?とにかく素晴らしい!

標準装備のアクティブサスペンションも、他の技術と同様、アウディが一切変更することなく、十分な手ごたえを提供している。当たり前だが、このようなシステムは一新されることはない。そして、批判のポイントは狭い範囲にとどまる。

ベンドで最大3度まで傾けることが可能

ハイライトはいくつかあるが、まず、ドアを開けると瞬時にボディが4センチほど上がる仕掛けに感心した。これ以上のアコモデーションはないだろう。

さらに、ベルトと遊星ギアを介して各ホイールを個別に伸縮できる4基の電動モーターは、カーブで最大3度まで、それもカーブの中心に向かって傾けることができるようになっている(ドライビングモード「コンフォートプラス」)。これにより、乗員に作用する遠心力を低減し、コーナリングをより快適なものにしている。

職人の技によるクオリティーと低騒音は最高水準にある。

ダイナミックモードでは、横方向の傾きも抑えられ、通常の5度ではなく、「S8」のボディは最大2度までしか横に傾かない。しかし、「S8」は決して不退転の決意で臨んでいるわけではない。オプションの21インチホイール(1,500ユーロ=約21万円)にもかかわらず、エアサスペンションはいつも楽しませてくれる。

そして、その奥には、くつろぎのオアシスが待っている。電動調整式アウターシートや電動サンブラインドを含む3,435ユーロ(約48万円)のオプションのリアシートシステムは、顕著な自動運転性さえも弱体化させる。しかし、もしあなたがすべての贅沢を我慢して、ドライバーズシートに乗り込むことができたなら、その決断はすぐに報われるだろう。

アウディS8で571馬力

この571馬力4リッターツインターボエンジンは、サウンド オブ サイレンスの達人として、48ボルトシステムのおかげでしばしば静かに航行し、他方では何マイルも下り坂を下っていく。だが、8速オートマチックで800ニュートンを超えるパワーを発揮すると、歓声が沸き起こる。そして、2.3トンのクワトロが、ある種のスーパーカーのような力強さで前方に炸裂するのである。

車両データ アウディS8 TFSIクワトロ
エンジン V8ツインターボ、フロント縦置き、ハイブリッド
排気量 3996cc
最高出力 571@6000rpm
最大トルク 800Nm@2050~4500rpm
駆動方式 全輪駆動、8速トルクコンバーター式AT
全長/全幅/全高 5190/2130/1475mm
ホイールベース 2998mm
トランク容量 505リットル
基本価格 144,800ユーロ(約2,030万円)
テスト車価格 158,745ユーロ(約2,225万円)

「S8クアトロ」の駆動はリアアクスルにパワーの厚い部分を、スポーツディファレンシャルを経由して、外輪へ伝える。この「S8」はドリフターでこそないものの、コーナリングへのこだわりは顕著で、その重さを考えるとジェントルなコーナリングは絶対に必要だ。

V8は250km/hで制限

しかし、レーストラックでは、その質量の高さからややそぐわない場所に来てしまったことを感じてしまう。しかし一方、高速道路ではあまりドラマチックな展開にはならないが非常に低いノイズレベルのおかげで、250km/h(電子制御)、4000rpm強でV8が退屈しているのが聞こえるかと思うほど平和に走行することができる。

リア重視の全輪駆動は、カーブでその威力を発揮する。しかし、限界になると、重い船は前輪の上をゆったりと外側に流れていく。

ただ、高速走行時の直進安定性だけは、完璧とは言い難いものだったことに少し驚いた。「S8」のような高速道路の獣には残念なことだが、いくつかのミッドレンジサルーンでももっと良いものがある。しかし、「S8」のエンジンの優位性は、カジュアルな速度域でも愉しめる。「S8」の「S」は、スポーツを意味するものではないのだ。それは間違いなく「SPECTACULAR」の略だ。

【テスト評価】
ボディ: 5点満点中4点
広々とした空間、上質な仕上がり、素晴らしい品質を備えたスポーティな高級サルーンだ。センターエアバッグとヘッドアップは標準装備されていない。

走行性能: 5点満点中4.5点
優れた走行性能。V8の音も、決して高速走行などの邪魔にならない上質なものだ。48V技術で燃料を節約することも可能になった。

ドライビングダイナミクス 5点満点中3.5点
常に非常に良好なトラクション、しかしリアヘビーなトルク配分はトップスピードで若干、正確な直進安定性に欠ける。

ブレーキ: 5点満点中3点
ブレーキが温まっていても、セラミックシステムはトップスコアを出せない。以前のテストでは、「S8(フェイスリフト前)」の方が良い結果を出している。

ステアリング: 5点満点中4点
スポーティな走りではややもたつくが、トランスミッションは良好で、四輪操舵のおかげで、このサイズからするとかなり扱いやすいといえる。

コンフォート(居住性): 5点満点中5点
アクティブサスペンションのおかげで、乗り降りの際のリフトアップ機能など、珍しい機能がたくさんある。極めて静かで、心地よいしなやかな足回りといえる。

コスト(費用): 5点満点中2点
メンテナンスは2年に1度だけだが、その際のコストは非常に高価だ。保険等級が高く、減価償却費が非常に高いと推測される。

AUTO BILD SPORTSCARSのテストスコア: 2-

結論:
この車はオールラウンダーだろうか? 「S8」は技術的な花火で我々を驚かせてくれる。そして、多くの豪華さに加えて、非常にスポーティな面も持ち合わせている。しかし、「S8」は完璧ではない。そのブレーキングと直進安定性はもっと良くなってもいいはずだ。

【ABJのコメント】
「アウディA8」は一度乗ってみたい自動車の一台である。なにしろ、「あの」クアトロシステムを持った、超ハイテクのスーパーセダンだから、それはいつの時代も気になる自動車なのである。そんな「A8」をさらに高性能にしてブラッシュアップさせたのが「S8」だから、それが悪いはずなどなく、世界最高峰のスーパーセダンなはず、なのだが今回のAUTO BILDのスタッフは結構辛い評価を出している。

特に気になってしまったのは「ブレーキと直進安定性がイマイチ」という部分で、おいおい、その部分こそ、「A8」と「S8」が本来持っている特徴の最たる部分じゃなかったのかよ、と突っ込みを入れたくなった。どんな悪天候下であっても、ほかの車が躊躇するような速度でカッとんで行ける一台。「Don’t catch the Quattro in the snow」のステッカーまで用意されていたはずのあの「アウディ クアトロ」はいったいどうしちゃったのか、と心配になった。超絶技巧のライトシステムや、最上級で複雑なエレクトロニクスデバイスの開発に時間をかけた挙句、本来の走りの部分が置き去りにされてしまったのだろうか?そうであるならば、なんとも寂しい限りだが、いつの時代にも「クアトロ」は「クアトロ」らしい、ビシっとした走りを持ってることを願ってやまない。(KO)

Text: Berend Sanders and Stefan Novitski
加筆: 大林晃平
Photo: Audi AG