【面白ネタ】サスティナビリティとは? 一生このBMW 324 TDツーリングと添い遂げたい 電気自動車が私のガレージに入ってくることはない!
2022年7月1日
BMW 324 TDツーリング: ルポルタージュ、読者編。EよりDに乗りたい! AUTO BILDの読者であるアンフリート アレンツさん(68歳)は、愛してやまない1992年式のBMW 324 TDツーリングを今も愛用し続けている。そして、「今後も電気自動車が私のガレージに入ってくることはない!」と言うのである。
東フリジアの人口1500人の村、デュヌムからアンフリート アレンツさんが手紙をくれた。その内容は、DとEについて、30年前の「BMW 324 TDツーリング」が40万km近く走ったこと、そして電気自動車がそのような偉業を達成できるかどうかという疑問についてだった。そして、「電気自動車は代替品ではない」と書いている。「年金生活者である私は、コストリスクを考えると、そのようなものが長年使われるとは到底思えません」。
このことに興味を持った我々AUTO BILDのスタッフは、話を聞こうとデュヌム村にまでドライブし、実際にアレンツさんを訪ねた。平坦な土地、広い景色、少ない家屋、たくさんの緑。アレンツさんのBMWも緑色、BMWラグーングリーンメタリック、カラーコード266。スマートな赤レンガの家の前に駐車し、ガレージではなく雨ざらしで佇んでいた。30年の歳月を感じさせない、目立つ錆はないし艶は十分、クリーム色のレザーシートにはひび割れはない。毎日使っている30年前のクルマなのに、こんな感じなんだと印象深く感じた。
アンフリート アレンツはこう語る。1992年、父親のアーレント アレンツは、デビュー後3カ月でこのクルマを買い、愛用していた。「今でも車を見ると挨拶してくれる人がいます」。2009年に父親が亡くなる前に、アンフリートに対し、「このBMWは手放すな、残すんだ」とはっきり言い残したと言う。「当時は深刻な修理の滞りがあったにもかかわらず」、だ。
すべての修理を記載した40項目のリスト
現在68歳の彼は、ここ数年の間に受けた修理のうち、最も費用のかかる作業を40項目にまとめている。タイミングベルト、ウォーターポンプ、スターターモーター、オルタネーター、クラッチ、ターボチャージャー、新しいドライブシャフト、両マッドガードとテールゲートは錆のため交換、両サイドシルも交換が必要だった。
「とはいえ、自分でできることはどんどんやり、できないことは親友と一緒にやりました」という。その中の一人、塗装の名人から、板金やプラスチックに失敗なく塗料を塗る方法まで教わった。
そして、エレクトロモビリティとサスティナビリティの話になり、アレンツさんは、「e-carは後ろから排気ガスが出ないのはいいけれど、リチウムやコバルトを取り出すまでのこの恐ろしいほどの資源消費について考えたことがありますか?」と、明快な意見を述べた。
だからアレンツはディーゼルに乗るんだ
そして、「たしかにガレージでは電気自動車は、充電はできるけど、他にどこがあるんだ」と、田舎での事情を説明する。老人ホームにいる母を訪ねて、1日に250km以上走ることもある。「でも、そこには充電スタンドはないんです。メーカーは、現実にはありえない状況を作り出しているのです」。アンフリートさんはリッターあたり14.2kmのBMW、妻のマリアンヌは100kmあたり4.5リットルしか消費しない日産ノートに乗っているのだ。
アレンツさんは、好感の持てる人だ。「クレーマー」という類の人ではなく、世界観がはっきりしていて、どちらかというと「階級的スポークスマン小心者」だ。「田舎で何が稼げるか、実際に知っているのか? 3,000ユーロ(約40万円)の中古車を買って、車検を2回パスすることを願う人たちがいる」と教えてくれた。
そして、新しいe-carの話をする。VWから電動ブリが50,000ユーロ(約690万円)、ポルシェ タイカンまたはアウディe-tron GT、両方とも100,000 ユーロ(約1,380万円)という価格設定。「時々、AUTO BILDを読むと、これを買えるのはどんな人たちなんだろうと自問することがある」とアレンツ氏は言う。
トランクリッドに60ユーロ(約8,200円)
トランクリッドは、eBayで60ユーロ(約8,200円)、泥よけは35ユーロ(約4,800円)、ドライブシャフト2本は70ユーロ(約9,600円)で購入した。
「新しいe-carを買うより、30年前のディーゼルを生かす方が、持続可能性(サスティナビリティ)は高いのでしょうか?」という我々の問いに、アレンツさんは、明確に「イエス」と答えた。
年金生活者が「2トンもあるe-carに乗るのは持続可能か」と反問する。「41年前に買ったもので、レシートもありますよ」と、ジャンパーの袖をまくり上げ、41年前に購入した腕時計を見せてくれた。「これこそがサスティナビリティなのではないでしょうか?」と笑う。
果たして、モビリティを変え、内燃機関から脱却し、電動モーターにコミットすることで、本当に気候を救うことができるのだろうか? 68歳の彼は疑問を抱いている。「バイクで3回、世界を旅しました。最後のBMWバイクは104,000kmで売ったんだ。そして、言わずもがなですが、こんな小さな国だから、自分たちだけでは何も救えない」と感慨深げに語った。
最後に、アレンツ夫妻が昼食に招いてくれた。ポテトサラダと、わずか12キロメートル離れた北海で獲れた魚だ。それが彼らのサスティナビリティだ。
テクニカルデータ: BMW 324 TDツーリング
• エンジン: 直列6気筒ディーゼル、フロント縦置き
• 排気量: 2443cc
• 最高出力: 115PDS@4800rpm
• 最大トルク: 244Nm@2400 rpm
• 駆動方式: 後輪駆動、5速MT
• 全長/全幅/全高: 4325/1645/1380mm
• 乾燥重量: 1300kg
• 最高速度: 187km/h
• 燃費消費量: 14.4km/ℓ
【ABJのコメント】
SDGsというキャンペーンをテレビで見たり、SDGsのバッチを嬉しそうにつけていたりする人を見るたびに、こんなもののどこが環境にいいのだろうと思ってしまう、へそ曲がりの私としては、今回の話を読んで大いに留飲を下げた。BEVを否定したり、エネルギー問題を真面目に、そして大切に考えたりすることは必要だが、みんながみんな、BEVに(できるだけ速やかに)乗り換えることや、まだ使えるものを切り捨てながらエネルギー問題を語る、そんな本末転倒な話はないだろう。本来、一番サスティナビリティなこととは、このような人の生き方のことを言うし、とにかく真面目に考えれば考えるほど、今の浮かれたように大急ぎで世の中をカーボンニュートラルだなんだかんだという方向に持っていく話には、どうにも裏で動いている大きな何かを感じてしまうのは私だけだろうか。
また今回の主人公が言っている通り、500万円だ1,000万円だというBEVが、ホイホイと、右から左に購入できる人というのは、そんなに世の中に溢れているのだろうか?ヨーロッパやアメリカの所得水準は高いと言ったって、そんなにみんながみんな気楽にBEVを買えるのだろうか? そんな疑問を最近強く持っている私としては、やはりそうだろうなぁ、という気持ちになった彼の台詞である。そもそもヨーロッパの普通の人たちの金銭感覚はものすごくシビアなはずだし、ちょっと考えてみれば、今何を買うべきなのか正しい判断ができるのではないだろうか。BEVを否定はしないし、いずれは全部そうなるのだろう。だが「今」何をするべきなのか、今を否定してまで急いで何かをしなくてはいけないいのか、それは一人一人が考えるべき問題なのである。(KO)
Text & photo: autobild.de
加筆: 大林晃平