もっとワイルドに! 1億円超のブラバス900クローラーは(ほぼ)自社開発のオフローダー

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ブラバス クローラーは、90万ユーロ(1億2千万円超)の砂場用おもちゃだ。ブラバス900クローラーは、一見ハードコアなGクラスのように見えるが、ボトロップのチューナーにとって、初の自社開発車だ。そのキーワードは「もっとワイルドに!」だ。

いや、これは「Gクラス」ではない!少なくとも公式にはそうではない。というのも、一見すると、ガッツリとドーピングされた「G63」に見えるのは、ボトロップに拠点を置くメルセデスのスペシャリスト、ブラバスの「900クローラー」というオフローダーだからだ。900馬力の「クローラー」は、90万ユーロ(約1億2千万円)弱のコストがかかるが、公道を走れる、いわゆるストリートリーガルではないのだ!

フルカーボンのフロント、ボンネットの巨大なグリルは明らかに「Gクラス」をモデルにしているが、シャーシは全く新しいものだ。「クローラー」のために特別に開発されたチューブラースチールフレームと、その上に張り巡らされたカーボン製のビジブルボディが、隠すことよりも見せることを優先しているのだ。ポータルアクスル(フロントは独立懸架、リアはリジッドアクスル)は、基本的にピックアッププロジェクト「800アドベンチャーXLP」に由来するものだが、「クローラー」用にさらに改良発展させたものだ。調整可能なスプリングストラットとショックアブソーバーにより、最大53cmの地上高を確保している。ブラバスは、「G63 6×6」もリファインしている。

テールライトだけは量産型、その他はほとんどクローラー用に開発された。

Gクラスより30cm以上高い全高

クローラーの大きさをより実感していただくためには、サイズを観てほしい。全長4.62メートルと、「G63(スペアホイール装着時4.82メートル)」よりわずかに短いオフローダーだ。しかし、幅と高さに関しては極端で、クローラーは幅2.11メートル(G63 1.94メートル)、高さ2.34メートル(G63 1.97メートル)となっている。これは、ポータルアクスルの採用により、ギアボックスとエンジンの搭載位置が高くなったことも一因だ。

900馬力は、現在ブラバスのV8ツインターボの中で最もパワフルなバージョンだ。

V8ツインターボ: 900馬力&1,250Nm

そして、エンジンの話になるが、この「クローラー」に選ばれたのは、「Gクラス」のコンバージョンでお馴染みのブラバス製最強バージョンのパワーユニットが搭載されている。ベースは4.0リッターV8ツインターボで、ブラバスが4.5リッターにボアアップしている。鍛造ピストン、専用コンロッド、大型ターボチャージャー、ダウンパイプなどが、900馬力と1250Nmという驚異的なパワーに押し上げている。ただし、9速オートマチックトランスミッションへの配慮から、最大トルクは電子制御で1,050Nmに制限されている。

ステアリングホイールやワイドスクリーンコックピット以外の「インテリア」は、とてもスパルタンだ。ウィンドスクリーンすらない。ゲレンデヴァーゲンを思い出させる部分は皆無。

しかし、ドアや窓がなく(クローラーにはフロントガラスさえもない!)、カーボンを多用することで、通常のGクラスより600キロ近く軽量化できるため、2,065キロの「クローラー」は本当に速く走れる。0から100km/hまでのスプリントはわずか3.4秒という。しかし、ギア比が短いため、160km/hが最高速度となるが、砂漠ではこれで十分だろう。

4人掛けシート: カーボン製バケットシートにマリンシルバーテックス製の専用シートを採用。それはブラバスがボート製作で検証した素材だ。

全開走行時でも、乗員が通信できるように、「クローラー」には専用のインターホンが搭載されている。また、助手席にはGPSオフロードナビを含む12インチスクリーンが備わっている。1列目、2列目ともに、ブラバスがボートでテストしたマリンシルバーテックスと呼ばれる素材で張られた計4つのシートが用意されている。

クローラーの基本価格: 税込み749,000ユーロ(約1億2千万円)

残る唯一の問題は、その価格といえる。クローラーは正味749,000ユーロ(約1億330万円)だ。ドイツでは、これはグロスで891,310ユーロ(約1億2,300万円)に相当する。ただし、当然のことながら、このオフロード車は公道走行許可を得ていないため、「クローラー」の使用範囲は限定的であると言わざるを得ない。15台限定の「クローラー」は、閉鎖された道路でしか走れないが、砂漠などは絶好の場所となるだろう。こういうオモチャが好きな人にはたまらない1台と言えよう。

【ABJのコメント】
今回の一台は、一応「メルセデス・ベンツ ゲレンデヴァーゲン」をもとには作られているし、フロントグリルとテールランプだけは、そのもとの姿を思い出させる車にはなっているが、それ以外からは「ゲレンデヴァーゲン」を想起させる部分はまるでない。そもそも公道を走ることができないから、アラブの王族が砂丘で、「うっひゃー」と歓声をあげながら遊ぶためのオモチャ、そういう乗り物なのである。

そう考えると価格が問題だと上記されてはいるが、そんなことどうでもいい些細なことで、1億だろうが2億だろうが、大したことのない金額であるといえるのだろう。

15台という数も一見多いようでもあるし、そんなに売れるのかなぁとも思ってしまうが、王族の友達同士がそれぞれ所有し、チキチキマシン猛レースのように、砂漠でレースごっこをする場合ことを考えれば適当な数量なのかもしれない。いずれにしろ、ハイブリッドシステムやEVを必死に普及させ、一滴のガソリンまで大切にしようとしている私たちにとってはまるで関係のない、違う星の車の話である。(KO)

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: Brabus