【ニューモデル情報】ルノーの新型水素ハイブリッドコンパクトSUV ルノー セニック ビジョンに関するすべての情報!

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ルノーの新型SUVスタディモデルは、水素ハイブリッドパワートレインを搭載している。2024年、ルノー セニックはバンからコンパクトSUVに変身する。今回発表されたスタディモデルでは、水素ハイブリッド駆動も示されている。ファーストチェック!

プレゼンテーション: セニックがコンパクトSUVに

ルノーはかつてヨーロッパでバンというセグメントを築き上げたが、フランス人は時代の流れを察知し、お行儀の良い車というジャンルに別れを告げようとしている。コンパクトな「セニック」は、長年にわたりメーカーのベストセラーモデルのひとつだったが、販売台数の減少により、2022年春に生産を終了し、まもなく「グランド セニック」も生産中止と予想されている。しかし、伝統的なモデルは、それでも生き続ける。

コンセプトスタディ「セニック ビジョン」は、新型の水素ハイブリッド駆動を採用し、フランス車の未来を垣間見ることができる。市販モデルは2024年の市場投入を予定しているが、当初は「メガーヌE-Techエレクトリック」の技術を搭載する。我々はすでにコンセプトカーを間近で見てチェックした。

デザインとサイズ: SUVの強気なデザイン

全長4.49mの「セニック ビジョン」は、従来型エンジンの兄弟機である「オーストラル」よりも2cm短い。しかし、全高1.59メートル、全幅1.90メートルというサイズなので、未来の「セニック」はもっともっとたくましく見える。この効果は、エアロデザインの豪華な21インチホイール、約2.84メートルに伸ばされたホイールベース、そしてSUVの表情豊かなフロントによってさらに強化されている。そしてそのフロントには、2020年にプジョーからルノーに移籍した新チーフデザイナー、ジル ヴィダルのデザインテイストがはっきりと刻まれている。

「セニック ビジョン」にも、彼らしいサーベル型のデイタイムランニングライトが採用されたのもうなずける。これはルノーのロゴを意識しているのだろう。また、4つの個別LED素子を使ったイルミネーショングラフィックも、このブランドの新しい特徴だ。ラジエーターグリルのない箱型の基本形を持つフロントは、コンセプトカー「ルノー5エレクトリック」の記憶を呼び起こさせるものといえよう。

細いテールランプを持つリアは、どこかスペインの「クープラ」ブランドを彷彿とさせる。

サイドビューでは、Cピラーのライトストリップ、欠けたBピラー、反対方向に開くドアなどが目を引く。いずれも、おそらく製品化されないであろう、スタディモデルらしいデザインギミックだ。一方、同じく半ひし形をした細いLEDテールランプを持つリアは、ある意味、シリーズ生産モデルにかなり近い印象を受ける。リアビューは、ライトユニットが薄いせいか、どこかスペインの「クープラ(Cupra)」ブランドを思わせるような雰囲気もする。

インテリア: スタディのインテリアはシリーズ生産に近い印象

インテリアがより華やかになったのは、これもルノーが新たに定義したアンビエントライティングによるものだ。乗員席の周囲には、近未来的なカラーリングを施したワイドパネルが設置されている。常に変化し、インテリアにダイナミズムをもたらしている。

Bピラーがないおかげで、インテリアへの入室は快適だ。そのインテリアは風通しが良いように見える。もちろんこれはモックアップモデルで生産車とは大きく異なるはず。

また、SF映画に出てきそうな「ステアリングホイール」は、テスラの話題の「ヨーク」や「トヨタbZ4X」の角張ったバランサーをどこか彷彿とさせるものだ。フロントガラスの下には、車幅のほぼ全域に広がるもうひとつのスクリーンがあり、カメラに基づいて車両前方の環境全体を映し出す。これにより、視野が24%以上広がると言われている。前列には、スマートウォッチのような小型タッチスクリーンが合計10個あり、さまざまな機能を備えている。例えば、室内のドアパネルに取り付けたウィジェットを使って、シートポジションを調整することができるようになっている。

安全性: エアバッグはシートに移動する

ルノーが「コクーンエアバッグ」と呼ぶ新技術のおかげで、ダッシュボードのサポートは明らかにミニマムなものにすることができている。実は、このエアバッグはシートに格納されており、衝突時に乗員の体に寄り添うようになっているのだ。メーカーによれば、とにかく受動的安全性と能動的安全性を重視した設計を行ったとのこと。

将来のルノー車に搭載される新アシスタントシステム

事故はほとんどの場合、ヒューマンエラーによって引き起こされるため、ルノーはセニック ビジョンに3つの新技術を搭載し、合わせて死亡事故の数を最大70%削減することを目指している。いわゆる「安全スコア」は、まもなく市販モデルにも搭載される予定で、それぞれのドライビングスタイルを評価し、ドライバーに改善提案を行うシステムだ。「セーフティコーチ」は、特に曲がりくねった道や危険な交差点などのリスクを、運転する人に早い段階で警告する。これは、評価された環境とナビゲーションデータに基づいて行われるものだ。

ヘッドレストのラウドスピーカーや、たくさんの光など、ルノーのインテリアにはたくさんの魅力が備わっている。とはいっても、どれだけ生産車に反映されるかは不明。

そして、「セーフガーディアン」という名称で、将来的にはセンサーとカメラを使ってドライバーの運転能力や健康状態を監視するシステムも提供したいと考えている。例えば、ドライバーが疲れすぎている場合は、信号で休憩を促す。

駆動系: 水素レンジエクステンダーによる小型バッテリー化

しかし、「セニック ビジョン」の真のハイライトは、未来志向の駆動システムだ。ルノーは、強調された環境に優しいハイブリッドドライブのプレビューを提供する。普段は普通の電気自動車だが、長距離走行では、このコンセプトカーは従来のe-carに比べてエース級になる。バッテリーと218馬力(160kW)のリアエンジンに加え、フランス車は走行中に蓄電ユニットに充電する15kWの燃料電池を車体下部に直接設置した。これにより、充電停止なしで最大800kmの走行が可能になるという。前方に配置された2.5kgの水素タンクのみ、約3時間ごとに充填が必要だ。ただし、この作業は5分以内に終わるとされている。

リアには、車両とのコントラストを意識したカラーでイルミネーションによるブランドロゴを表示している。なかなかきれいではあるが、本当に生産車でもせり出すのだろうか。

しかし、このコンセプトにはもう一つ利点がある。レンジエクステンダーは長距離走行を保証するため、必要なときに中身を電力系統に戻すことができるバッテリーをあえて小型・軽量にすることができるようになっている。これは、自動車の効率化や充電時間の短縮に効果があるだけではない。40kWhの蓄電池は、他社製品に比べエネルギー消費が少なく、同時にリチウムやニッケルなどの重要な原材料の使用量も少なく、製造コストも低く抑えることができるようになっている。

しかし、ルノーは、インフラの不足と水素の利用可能性の低さも認識しており、水素ハイブリッドの量産開始は10年後が現実的と考えている。そのため、量産型はまず2024年から完全な電動化を提示しなければならない。

サスティナビリティ: 魔法の言葉「リサイクル」

ルノーによれば、「セニック ビジョン」は、他の同クラスのe-carと比べて、75%CO2排出量を削減するとのことだ。そして、これはバッテリーの小型化だけでなく、サスティナブルを強調した基本思想によるものだ。例えば、燃料電池のプラチナは、廃棄される自動車の触媒コンバーターから完全にリサイクルされることになっている。

リアライトは、ルノーのブランドロゴを引用し、半分ひし形を連想させるデザインとなっている。

リチウムイオン電池に含まれる原材料の80%をリサイクルし、2030年からルノーの新型電池に使用することとしている。さらに、この2つの主要部品の生産拠点であるフランスのフリンとクレオンのルノー工場は、2025年から気候変動に左右されない方法で生産することになっている。

【ABJのコメント】
「ルノー メガーヌ セニック」・・・。なんとも懐かしい。最初の「セニック」はまだこういう形のワンモーションフォルムの自動車が少数だったころに登場し、5色のシート(5人の座る席がそれぞれ全部違う色だったのである。それもフランス的で実にオシャレだった)や、実際に乗るとほんわかほっこりする、なんとも優しい雰囲気の自動車だった。
そのころ神戸でとあるイベントの手伝い(注: フルーツフラワーパークの時)があり、この「セニック」の運転を任され、走り始めた途端、フランス車らしい柔らかい乗り心地と、圧倒的な直進性に圧倒されたものだった。4ATのトランスミッションだけはちょっと時代遅れだと思ったけれど、そんなことは頭のどこかに消えるような、なんとも不思議で優しい気持ちになれる自動車、それが最初の「セニック」だった。

そのセニックからするとこの水素ハイブリッドシステムを持つコンセプトカーは、なんとも格好良く、スマートで未来的でちょっとお近づきになるのが恥ずかしいほどのスタイリッシュな「セニック」になっている。内容は大変興味深いし、このまま出ることはないにせよ、実際にもかなり先鋭的な車になるのではないかと予想する。でもその未来の「セニック」のどこかにも、あのふわふわの毛布にくるまっているような優しさと安心感のある佇まいがどこかに残っていたら、というのは個人的なわがままであろう。(KO)

Text: Elias Holdenried
加筆: 大林晃平
Photo: RENAULT GROUP