【このクルマなんぼ?】走行距離たったの987km このブルネイ国王の所有していたメルセデスS600クーペの落札想定価格は?

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走行距離たった987kmのメルセデスS600クーペ、オークションに出品される。かつてブルネイのスルタンが所有していたV12高級クーペは、まもなくオークションにかけられる予定だ。30年近く経った今でもこのS600の走行距離は1,000kmを切っているのだ!?

希少なSクラスクーペ

車が多すぎて運転する時間がない? 何台も車を所有していると、そういうこともあり得る。もちろん、これは純粋に贅沢な問題なのだが・・・。ブルネイの王様のことをご存知の方もいらっしゃるだろう。そこには、およそ3,000台から7,000台のコレクションがあると想像してください。そして、そのすべてが定期的に動かせるわけではないのは当然といえば当然のことだ。

非現実的に聞こえる? さて、ブルネイ王室の車両は、実は最盛期には3,000台から7,000台の車やバイクがあったと言われている。1980年から2000年代初頭にかけて、スルタンとその弟のジェフリ王子は、おそらく世界最大の自動車コレクションを作り上げた。神話が多く、事実が少ないコレクション。おそらく、ほとんどのクルマは現在もブルネイにあるのだろうが、時々、個々のクルマがブルネイを脱出することがある。

走行距離1000キロ未満のS600クーペ

つい先日お伝えした、英国でオークションに出品されているBMWカラー「バイオレットブルーメタリック」のメルセデス600SLのように・・・。「Historics Auctioneers」によるオークションでは、王室コレクションから現在もう1台、メルセデスが出品されている。

信じがたいことに、アナログのスピードメーターは613マイルしか表示していない。これは987キロメートルに相当する。

この1993年製「Sクラスクーペ」の話だ。また、かつて王室のガレージに停まっていた500台以上のメルセデスの中には、この「S600」も含まれていたと言われている。2021年、28年ぶりにこのV12搭載の高級クーペが英国に輸入された。信じられないことに、走行距離は613マイル(987km弱)というわずかな数字だ。これは、年間平均走行距離が35kmしかないことに相当し、数千台の車を所有することの一つの問題点である。

「Historics Auctioneers」によれば、これは世界で最も走行距離の少ない「メルセデスC140」かもしれないとのこと。走行距離が少ないにもかかわらず、「S600」がすぐに使えると言われているのは、英国到着後に大規模な修理を施し、車検を受けて新しいナンバープレートも取得しているためだ。

外側の黒、内側の黒という色の組み合わせはクラシックだ。右ハンドル車であるS600は、ドイツのお客様にとっては、どちらかというと面白みのない車かもしれない。

1992年に発売された「C140」は、同ブランドの究極のラグジュアリーフラッグシップとして登場した。「W140」のがっしりしたクーペタイプは、全長5.07メートル、全幅1.91メートル、重量2トンを優に超える大きさだ。「C140」は当初、V8を搭載した500バージョンとV12を搭載した600トップモデルのみが提供され、後に420が追加された。製造期間中に何度も呼称が変わったため、正しい呼称については常に混乱がある。当初は「SEC」として販売されていた「C140」は、1996年まで「Sクラスクーペ」、1996年から「CL」と呼ばれるようになった。最新のデザインは、特に新しいスカートと、ディップスティックの代わりに標準装備されたパーキングエイドで認識できる。

旧基本新価格221,950DM(1,500万円超)

「S600クーペ」の新価格は注目に値する。当時、ベース価格は221,950DM(1,500万円超)で、「600SL」や「600SEL」より高価であった。3台とも、最高出力394馬力、最大トルク570Nmの同じ6.0リッターV12(M120)を搭載していた。1995年夏までは4速オートマチックが搭載されていた(後に5速オートマチックに変更)。「S600クーペ」は0から100km/hまで6.6秒で加速し、電子制御で制限された250km/hに到達することができた。

6.0リッターV12は、最高出力394馬力、最大トルク570Nmを発揮する。S600を250km/hまで加速させるのに十分な性能だ。

ブルネイ国王の黒一色の「Sクラスクーペ」は、おそらくそれほど速く走ったことはないだろう。987kmという走行距離はそういう使い方がされていないことをも意味するからだ。右ハンドルの「Sクラスクーペ」は、内外装とも新車と見分けがつかないほどだ。ここでの視覚的なハイライトは、もちろん、ペイントスター付きの「AMG Aero 2」ホイールだ。その他の装備も、トップモデルにふさわしく充実している。搭載されているのは、オートエアコン、クルーズコントロール、電動調整式シート(メモリー機能付)、二重窓、リアブラインドなどだ。

これだけの贅沢が比較的安価に手に入るのだから、90年代の多くのスポーツカーや限定特別仕様車と違って、「C140」はお得な投資ではなかろうか。それどころか基本的な新車価格は221,950マルク(1,500万円超)という巨額だったが、推定落札価格は、わずか、22,000~33,000英国ポンド(約360~540万円)と表示されている。

【ABJのコメント】
前回の「R129 SL600」に続き、今回は「C140」の「S600クーペ」がブルネイ国王のガレージから登場である。個人的にはこのひとつ前の「C126 500SEC」あたりが好みなのだが、それはさておき、立派な体躯を持つこの車、各部分の仕上がりなども含め、メルセデス・ベンツらしい時代の一台といってよい車ではある。

前回も述べた通り、なんでこのようにたまに、ぽろっと、出てくるのかはいまいち不明ではあるが、ガソリンを2回入れたかどうかも怪しいような走行距離数の「C140」、500万円程度なら、なかなかお買い得商品なようにも思える。なにしろ新品も新品、使用感は限りなくゼロだし、実際にミントコンディションの一台である。もちろん年月を考えればこのまま日常使用にということは難しいし、消耗品はきちんと替えなくてはならないだろう。

それでも「この車、ブルネイのガレージからやってきたんだぜ」という、血統書つきで自慢できるのなら、なかなか悪くはないのではないだろうか。今やこの値段では、「メルセデス・ベンツCクラス」の新車は到底買えないのだから・・・。(KO)

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: Historics Auctioneers