【アメージングストーリー】走行距離15万km! このフェラーリ エンツォは日常の足として使われている スッゲー

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フェラーリ エンツォは、通常はコレクターズアイテムだ。しかし、このエンツォは日常の足として使われており、すでに15万km近くを走行している。アメージングストーリー!

645,000ユーロ(約8,700万円)が、2002年当時の「フェラーリ エンツォ」の価格だ。今日の価格と比較すると、バーゲンだ。なぜなら、その発表以来、限られたフェラーリの価格は、一つの方向、つまり上方向しか知らないからだ。現在、「エンツォ」は300万ユーロ(約4億円)以上で取引されている。当初から、限定特別仕様車はクルマであると同時に、投資対象でもあったのだ。当然のことながら、ほとんどの「エンツォ」は、まったく運転されないか、年間数kmの慎重な運転にとどまっている。しかし、少なくともここに1台の例外がある。現在、15万km近く走行している「MMエンツォ」である。これは、特別なフェラーリの、壮大な物語である。

「MMエンツォ」とは、「Most Milesエンツォ」、すなわち最も走行距離の長い「エンツォ」のことで、まさにリチャード ロージーが2003年に「エンツォ」を新車で購入して以来、追い求めてきた目標である。彼にとっての660馬力のスーパースポーツカーは、ガレージで埃をかぶるためのものではなく、ドライブするためのものであり続けた。

2022年に20歳を迎えるエンツォ

2002年、「F50」の後継モデルとして「エンツォ」が発売され、当時、「ロードレガシーフェラーリ」として最速の記録を樹立した。このスーパースポーツカーは、イタリア人の誇りであり、創業者であるエンツォ フェラーリの名を冠することにした。全長4.70m、全幅2.04mの「エンツォ」は、発表から20年経った今でも、角張ったフォルム、F1ノーズ、バタフライドアなど、近未来的な印象を与えている。

どんな天候でも: ほとんどのフェラーリが雨の日には走るのを控えるのに対し、このエンツォは雷雨でも走る。

停止状態から100km/hまで3.6秒、最高速度355km/hという性能面でも、「エンツォ」は、今日のスーパースポーツカーに劣るところはない。「エンツォ」に搭載された6.0リッター自然吸気V12エンジンは、最高出力660馬力、最大回転数8,200rpmで657Nmの最大トルクを発揮した。その後、このエンジンは「フェラーリ599GTB(620馬力)」、「マセラティMC12(632馬力)」にも、それぞれわずか50台限定で搭載され、若干の改良が加えられた。

400台のフェラーリ エンツォが製造された

「エンツォ」は当初、「フェラーリF50」と同数の349台が製造された。しかし、需要の高さから、フェラーリはさらに50台のエンツォを製造することを決定し、その後、最後の1台となる、400代目の「エンツォ」を製造することを発表した。この「エンツォ」は、ローマ法王ヨハネ パウロ二世に儀礼的に贈られ、その後、サザビーズで、1,055万ユーロ(約14億2千万円)でオークションにかけられた。そして、その収益金は2004年の津波の被災者に寄付された。

マセラティMC12はフェラーリ エンツォと密接な関係にあるが、MC12はわずか50台しか製造されなかったため、より希少価値が高い。

公式発表では、マラネッロの工場から出荷された「フェラーリ エンツォ」は合計400台であったが、実際にはもっと多くのエンツォが製造されたという噂は今でも流れている。1,365kgしかないエンツォの1台は、アメリカのリチャード ロージー氏の手に渡った。彼の頭の中には、フェラーリを純粋な投資対象などという考えはまったくなかった。

わずか3年ですでに5万キロ走行

まず、米『Road & Track』誌に、新車の「フェラーリ エンツォ」を貸し出し、この貴重なスーパースポーツカーで、2,500kmに及ぶ大規模なテストを実施した。その後、ロージー氏は、エンツォをできるだけ走らせるという考えを持ち、実際にエンツォを耐久テストとして使わせてもらった「Road & Track」誌の協力を得て、3年後にはすでにデジタルスピードメーターに5万km近くが表示されるようになったのだ。「エンツォ」の大半は、カーライフの中でそれほどの距離を走行する個体など極めてまれだ。

しかし、2006年、「MMエンツォ」の歴史に突然の転機が訪れる。ユタ州で開催されたチャリティイベントで、ロージーは時速332マイルで、閉鎖された道路で「エンツォ」をコントロールできなくなったのだ。墜落&クラッシュで完全に破損してしまったが、ロージー氏は執念で「MMエンツォ」を、1年以上かかったものの、フルレストアを完了させた。

V12はツインターボ化され、800馬力を発生するという

不思議なことに、この事故があっても、ロージー氏は計画を中止することはなく、エンツォを修理し、改造し、日常の足として使い続けた。その改造には2年半を要し、その間、自然吸気のV12をツインターボにアップデートもしている。

実用性: 冬用タイヤを装着したセカンドホイールを運搬するために、エンツォ専用のタイヤキャリアも作られた。

800馬力を超えた「ロージー エンツォ」は、2010年に、ソルトレークでスピード記録を打ち立てた。最高速度は382km/h弱で、ファクトリー発表の最高速度355km/hを明確に上回ることができた。

しかし、その高速走行の後、「MMエンツォ」はメディアから姿を消し、沈黙を守った。2019年、有名な「エンツォ」が戻って来て、インスタグラムに再登場するまで・・・。インスタグラムユーザーの@dryl8k氏が、フェラーリのスポンサーシップのようなものを引き受けてくれたのだ。その意味とは?ロージー氏はまだオーナーであり、折に触れて「エンツォ」を運転してはいるものの、現在では、ほとんどの時間は@dryl8k氏が「エンツォ」のハンドルを握り、プロジェクトを継続しているのだ。

つい最近、@dryl8k氏はエンツォの走行距離が、147,000km(91,530マイル)を超えたことを示す写真をアップした。信じられないことだが、「エンツォ」は、今や、日常的に使える車として、あらゆる天候に対応できるようになっている。エンツォのオーナーの99パーセントは、雨の日にガレージから愛車を出すことなど考えもしないだろうが、「MMエンツォ」は雪の中でも走らせることができる。そのために専用のタイヤキャリアも作られ、スペアのホイール一式を持ち運ぶことができるようになったのだ。

「エンツォ」のカスタムメイドは、このタイヤキャリアだけではない。何年も前、ロージー氏は「エンツォ」がタルガに変身できるように、上部を取り外したガルウィングドアも一組注文した。動画でも紹介されているように、比較的少ない労力でドアの交換が可能となっている。

それを観れば、この「フェラーリ エンツォ」が、波乱万丈のカーライフを送ってきたこと、そしてガレージクイーンではないことは明らかだろう。一方、10万マイル(16万km超)走行へのカウントダウンも始まっており、2022年中に、「エンツォ」がこのマイルストーンに到達するかどうか、楽しみなところだ。

YouTube動画を見たい人はこちらをどうぞ(英語版です。訳文はありません)。

【ABJのコメント】
1台の車に15万km、というのはなかなかのものだと個人的には思う。もちろんそれ以上乗られている方も知っているし、現代の自家用自動車にとって15万kmというのはそれほど大事件ではないのかもしれないが、それはあくまでも実用車とかの話であって、フェラーリの、さらにそれが特別モデルでもある「エンツォ」が記録したというのは大きなトピックである。そして私にはこの話題がとても格好よく、素敵に感じられる。

専用スペアタイヤキャリアさえもつけられた「エンツォ」、それは純粋なスポーツカーユーザーからしたら理解できない行為かもしれないが、あくまでもシャレではなく実用を考えての装備であるということがやはりふるっている。そしてまだまだこのエンツォは距離を伸ばしているという・・・。維持にどれだけのコストがかかるのか、ざっくり考えたタイヤ交換代金とオイル交換だけでも大変な金額であることは間違いない。もちろんトラブルもあるだろうし、途中で大事故にあって大規模修理さえ受けているのだから、おそらく、もう一台エンツォを購入できるくらいのコストはかかっているのではないだろうか。

でも一台の自動車とともにどこへでも、どんな用途でも使って距離を刻む、それはなんとも格好いい行為なのである。(KO)

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: Instagram/dryl8k