【ガチンコ勝負】新型プジョー308 SWがVWゴルフ ヴァリアントに挑戦 果たしてその結果は?
2022年5月4日
ステーションワゴン比較テスト。新型プジョー308 SWが王者VWゴルフ ヴァリアントに挑戦する。コンパクトなステーションワゴンは実用的だが、今はもう大流行しているとは言えない。プジョー308SWとVWゴルフヴァリアントが威信を賭けて、そして、エステートカーの王冠をかけて戦う。
実用的なステーションワゴンは、箱型のリアにいろいろなものがついている。特に、多才なボディに経済的なガソリンエンジンと安心感のあるオートマチックギアボックスが組み合わされた場合、最大にその威力を発揮する。今回のテスト候補の「プジョー308SW」と「VWゴルフ ヴァリアント」がまさにそうだ。
この2台の外形寸法のわずかな違いは、一見するだけでは、決してわからない。したがって、両ステーションワゴンのドライバーが、非常に仲が良いのも当然といえば当然だ。確かにプジョーは、小さなステアリングホイールや小さくて凹凸の少ないシートなど、背の高いドライバーに多少の譲歩を求めるものの、場違いな感じはしない。
ヴァリアントとSWはベストエステートの美点を示す
また、荷物のパッキングに関しては、引き分けだ。1,600リットル超の収納スペースは、ほとんどの人の日常的なニーズには十分だ。どちらも模範的な方法で、エステートの美徳を心に刻んでいる。ダブルロードフロア、リアシートバックレストのリモートリリース、12Vソケット、すっきりとガイドされたリアローラーブラインドの床下収納も見逃せない。
車両データ&価格:
モデル | プジョー308 SWピュアテック130 EAT8 | VW ゴルフ ヴァリアント1.5 eTSI DSG |
エンジン | 3気筒ターボ、フロント横置き | 4気筒ターボ、マイルドハイブリッド、フロント横置き |
排気量 | 1199cc | 1498cc |
最高出力 | 131PS@5500rpm | 130@5000rpm |
最大トルク | 230Nm@1750rpm | 200Nm@1400rpm |
駆動方式 | 前輪駆動、8速オートマチック | 前輪駆動、7速デュアルクラッチ |
全長/全幅/全高 | 4636/1852/1442mm | 4633/1789/1498mm |
ホイールベース | 2732mm | 2669mm |
トランク容量 | 608~1634リットル | 611~1642リットル |
最高速度 | 210km/h | 213km/h |
平均燃費 | 17.2km/ℓ | 17.2km/ℓ |
CO2排出量 | 130g/km | 131g/km |
基本価格 | 30,000ユーロ(約405万円) | 32,495ユーロ(約438万円) |
テスト車価格 | 33,550ユーロ(約453万円) | 38,025ユーロ(約513万円) |
後部座席に関して言うならば、ホイールベースが大きくなったにもかかわらず、「308」に乗り込むのはやや面倒だ。そして、シートテストでは、VWは、デザインよりも空間利用に注意を払っていることは明確だ。全方位において、プジョーはドイツのライバルに数センチ及ばない。また、「308」の短いリアベンチはゴルフよりも低い位置に取り付けられており、同時に背もたれも急になっているので、「ヴァリアント」に好んで乗るのは、ヒッチハイカーだけであろう。
プジョー308はすべての言葉に従う
一方、「308」はデジタルデバイスの接続性に関しては、弱点は見当たらない。「ゴルフ」と同様、エアコンやシートヒーターはもちろん、ナビゲーションシステムやラジオも思いのままに操ることができる。アドバイス: 308で「温度を21度に設定してください」と言わないこと。それだとエアコンのコンプレッサーが全開になるだけだ。一方、「21度」というだけで、希望する快適な気候を実現することができる。特に、モニター下のクイックセレクト用のタッチ面を自由に割り当てられる点が気に入った。
VWの回転式ノブが恋しい
一方で、デジタルコックピットのナビゲーションディスプレイは、ズームがないため、あまりうまくいっていないと思う。その点では、VWのほうがよくできている。残念ながら、どちらのシステムも、動作はかなり遅く、地図上には遅延のみが表示され、自由なルートは表示されない。そして、大型のディスカバープロナビゲーションシステム(1,950ユーロ=約26万円)では、VWは大音量と静粛性のための回転ノブさえ節約している。
プジョーはゴルフに比べると段差を乗り越える際は少し柔らかい。一方、それは実際にもっとソフトにチューニングされているため、他方でスポーツサスペンションと18インチホイール(990ユーロ=約13万円)とR-ラインとしてのVWと比較すると、取り回しがいいようにも思えるが、悪路ではより不安定になる。
【性能測定値】
モデル | プジョー308 SWピュアテック130 EAT8 | VW ゴルフ ヴァリアント1.5 eTSI DSG |
0-50km/h加速 | 3.4秒 | 3.6秒 |
0-100km/h加速 | 9.9秒 | 10.0秒 |
0-130km/h加速 | 16.7秒 | 16.3秒 |
0-160km/h加速 | 26.7秒 | 26.7秒 |
60-100km/h加速 | 5.5秒 | 5.4秒 |
80-120km/h加速 | 7.1秒 | 6.9秒 |
乾燥重量 | 1,387kg | 1,415kg |
前後重量配分 | 60:40 | 58:42 |
100km/h時制動距離 | 34.4メートル | 33.0メートル |
性能に関しては、この2台はほぼ互角だ。130馬力は、どちらも10秒程度で0から100km/hに到達し、最高速度は200km/h強と、十分すぎるほど十分なパワーを持っている。しかし、パワーの供給方法には違いがある。4気筒エンジンのおかげで、VWは3気筒エンジンのプジョーよりも不機嫌にならず、48ボルトのオンボードシステムが、ゴルフデュアルクラッチの必ずしも完璧ではない始動挙動を補ってくれる。ここでプジョーが光るのは、トルコンオートマチックの良さだ。どちらもセーリング(コースティング)が可能で、「308」はエコモードでのみ行う。
価格: ヴォルフスブルクは会計に寛大
プジョーは、「308 SWピュアテック130 EAT8」のためにちょうど30,000ユーロ(約405万円)を求め、テスト車は33,550ユーロ(約453万円)だった。「VWゴルフ1.5 eTSI DSG」は、32,495ユーロ(約438万円)からスタートし、関連するエクストラを付けると38,025ユーロ(約513万円)となり、両方ともプジョーの金額を容易に凌駕する。 そして、フォルクスワーゲンはあえて2年以上の保証を提供しないが、プジョー社も同様だ。
コンパクトステーションワゴン2台をテスト:
第2位 800満点中519点: プジョー308 SWピュアテック130
子どもを後席に乗せる場合、安価で良い選択肢だ。3気筒でも十分OK。
第1位 800満点中544点: VWゴルフ ヴァリアント1.5 eTSI
エステートであっても、ゴルフは素晴らしい成熟度とバランスを示している。「R-Line」を省略することで、よりコストを削減し、快適性を得ることができる。
結論:
広々としたスペース、経済的で機敏な動き、そして快適性。結局、高価な「ゴルフ ヴァリアント」に軍配が上がったのは、リアシートを中心とした日常的な使い勝手の良さが勝っていたからだ。しかしスタイリッシュな「308 SW」も捨てがたい魅力を持っていることは間違いない。
【ABJのコメント】
日本でも正式発売がアナウンスされた新型プジョー308、今回はそのSWとゴルフヴァリアントとの比較テストである。ドイツのスタッフはフォルクスワーゲンの勝ちとしているが、おもに実用性部分と総合バランスを重視したチョイスであると見受けられる。実際にその走りや乗り心地に関してはどちらも互角なようだし、今やコストパフォーマンスという部分ではプジョーのほうが上位にある場合も多く、実際に購入する場合にはプジョーのほうがフォルクスワーゲンよりも安い場合も多い。
この「308」もスタイリッシュだし、内装などもかなり攻めた昨今のプジョーらしい一台である。「208」では小さいけれど、「508」では大きすぎる・・・。そんな人にはかなり当てはまるモデルであり、エンジンバリエーションも多い。一方の「ゴルフ」は今回の「ゴルフ8」でもバランスとクオリティーは(今回のモデルでも)かなりライバルを凌駕した内容である。まだまだ勝負はこれからだし、マイナーチェンジを今後施された熟成モデルなど、内燃機関の自動車のあがり(になるかどうかは、まったく未知ではあるけれど・・・)の実用車として長く乗れることだろう。個人的には、「ゴルフ」の完成度にはおおいに惹かれはするけれど、「308」のスタイリッシュさと、他の車に似ていないデザインなどに負けて、「308」を選んでしまいそうである。
Text: Berend Sanders and Gerald Czajka
加筆: 大林晃平
Photo: autobild.de