世界最速マシン 1600馬力&最高時速440km&ベース価格380万ユーロ ブガッティ シロン ドライビングレポート!

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1600馬力のブガッティ シロン スーパースポーツには言葉を失う。

1600馬力、最高速度440km/h、ベース価格380万ユーロ(約5億1千5百万円)。以上が、ブガッティ シロン スーパースポーツの主要データである。そんな世界最速のクルマでファーストドライブ!

正直このクルマには言葉を失う。ブガッティのテストドライバー、アンディ ウォレスが私を隣に乗せて突進したときには、正直、私は言葉を失った。今、ここで何が起きているのか?頭がついていけない感じだった。フルスロットル、フルブレーキング、わずか5秒後にまた同じことが起こり、自分を取り戻さなければならない。私は今、「ブガッティ シロン スーパースポーツ」の助手席に座っているところだ。しかし、まずは、このスーパースポーツの全容から説明しよう。

ブガッティ シロンの全仕様一覧

まずは、今までに発表されたシロンのバージョンが多すぎてわからなくなった人のために、すべてのモデルを紹介しよう。2016年、「ヴェイロン」の後継車として、1500馬力の「シロン」が市場に投入された。そのわずか2年後、ブガッティは18kgも軽い「シロン スポーツ」を発表した。外観上の違いは、4本出しのエキゾーストパイプなどの軽いニュアンスだけであった。2020年、ブガッティはレーストラック用に最適化された60台限定の残虐な「シロン ピュール スポーツ」を発表し、2021年には、フランスから「シロン スーパー スポーツ」が導入された。さらに、コーチビルドの「ディーボ」、「ラ ヴォワチュール ノワール」、「セントディエチ」といったモデルも用意されている。

記録更新車: ブガッティ シロン スーパースポーツ 300+

また、「シロン スーパースポーツ」の特別モデルとして、30台限定の「シロン スーパースポーツ300+」もある。このクルマで、テストドライバーのアンディ ウォレスは2019年8月に市販車世界最速の記録を打ち立てた。プロトタイプは、時速490.484kmという驚異的な数値を記録した。しかしブガッティは、ブラックのエクスポーズドカーボンにオレンジのストライプを施した30台の生産車の最高速度を時速440kmに規制している – それは安全上の理由からであることは明らかだ。

「シロン スーパースポーツ」と「シロン スーパースポーツ300+」は、最終的に構成のみが異なる。通常の「シロン」より、約23センチ長いロングテールのリアの下には、同じ技術が使われている、というような意味だ。そしてこの世界最速の市販車に今日乗れる。まるで夢のようだ。

500km/hまでのアナログ式スピードメーター

まずは、プライベートでは「VW ID.3」に乗るアンディが、運転に際して認識しておくべきことを説明してくれた。「タイヤの温度に気をつけるだけです。25度からはホイールスピンがほとんど発生しなくなります。その後、4つのターボチャージャーのうち2つ(3800rpmから4つのターボチャージャーすべて)が空気を吸い、全輪駆動によって黒いシロンは前に飛び出し、巨大なブレーキ(420mmVA、400mmHA)と、エアブレーキとして働くスポイラーが、少なくとも同じくらい印象的にクルマを制御してくれます」。

ブガッティ シロン スーパースポーツのコックピットには、ブラウンレザーとマットカーボンが混在し、ラグジュアリーな雰囲気を醸し出している。

そして、5分もしないうちに、説明は終わった。今度は私の番だ。アンディとブガッティで記念撮影をして、私は運転席に座った。ブラウンレザーとマットカーボンで覆われた豪華なコックピットは、その瞬間は眼に入らなかった。何よりも、目の前には500km/hまで刻まれたアナログのスピードメーターがある。電子機器は車を重くするので極力採用されていないという。

8.0リッターW16、1600馬力

ステアリングの右側にあるスタートボタンを押す。記念碑的な8.0リッターW16が覚醒する。このとき、私の頭に浮かんだのはただひとつ、「16気筒は、この純粋な形では二度と存在しない芸術品である」ということだった。新しいターボチャージャー、改良されたバルブトレイン、オイルポンプのおかげで、エンジニアはW16からさらに100馬力を引き出し、「シロン スーパースポーツ」は1600馬力を実現した。同時に、エンジンの重量は「シロン」より23kgも軽くなっている。しかし、その乾燥重量は約650キロ(ギアボックスを含む)と、決して軽くはない。

【車両データ】

モデル ブガッティ シロン スーパースポーツ
エンジン W16、クアッドターボ(ターボ×4基)
排気量 7,993cc
最高出力 1600PS@7050~7100rpm
最大トルク 1600Nm@2250~7000rpm
駆動方式 全輪駆動、7速DSG
乾燥重量 1995kg
全長/全幅/全高 4733 / 2183 / 1212 mm
0-100km/h加速 2.4秒
0-200km/h加速 5.8秒
0-300km/h加速 12.1秒
0-400km/h加速 28.6秒
最高速度 440km/h(電子制御)
最高速度 233km/h
平均燃費 4.6km/ℓ
CO2排出量 30g/km
価格 3,808,000ユーロ=約5億1,500万円(既に完売)

最大トルク1,600Nmは、2,250rpmの低回転域ですでに発揮されている。さらに記録的な速さを実現するために、最高回転数を7,100rpm(シロンは6,700rpm)に引き上げ、7速DCGのギア比を調整した。

ブガッティ シロン スーパースポーツに搭載された7速DSG

スタートは、革張りのギアセレクターレバーを右側に押し、ブレーキから足を離すだけだ。ちょっと勢いよくアクセルを踏むと、小気味よく前に飛び出す – これはブガッティにとどまらない、DSGらしい特性だ。

2トン弱のブガッティ シロン スーパースポーツが、曲がりくねった田舎道を機敏に駆け抜ける。それは驚くほどだ。

世界最速の市販車での最初の数メートルは、地味なものだ。「シロン スーパースポーツ」は、シンプルで淀みない走りを実現している。全幅が2.18メートル(エクステリアミラーを含む)もあるので、脇道は少し狭くなるが、「シロン」はリフトモードのおかげでスピードハンプも簡単にこなす。

ブガッティ シロン スーパースポーツに搭載されたトップスピードモード

街中では1600馬力のうち100馬力も使っていないのに、アンディから「3つの走行モード(EB、アウトバーン、ハンドリング)は、エンジントランスミッションの特性には影響せず、車高と制御系にのみ影響する」と説明された。380km/h以上のスピードで走行する場合は、「トップスピード」モードを選択する必要があるという。これを作動させるには、運転席の左側にあるイグニッションロックにもう1つキーを差し込む必要がある。その後、車が独自にいくつかのチェックを行い、すべてが適合すると、「トップスピード」モードが作動し、車高がフロント80mm、リア89mmまで下げられる。同時に、リアウイングはできるだけ抵抗を少なくするためにフラットな形状に設定されている。そして、いよいよ、「シロン スーパースポーツ」は440km/hに対する準備が整った。

でも、田舎道ではもちろん実行できないので、今は「EB」モードにしている。最初の小さな中間スプリントの時間だ。セカンドギア、ハーフスロットル。あっという間に100km/hに達し、アクセルを踏み込むと、4つのターボチャージャーが信じられないような音を立てて、それを受け止めてくれる。

3つの走行モード+リフトモード。上向き矢印は、シロン スーパースポーツのフロントエンドを10mm高くするものだ。

「シロン スーパースポーツ」のポテンシャルを体感するために、クローズドオフのサーキットに出かけてみる。「シロン スーパースポーツ」は、小さなステアリングの動きもダイレクトに反映させるので、高速コーナーでのブガッティの敏捷性は予想外だった。もちろん、無積載で1,995kgの車であることに変わりはないのだが、ブガッティはカーブでずっと軽く感じる。2つのコーナーの間にある短いストレートは、スーパースポーツがほぼ吸収してくれる。どんなに小さな中間加速でも、時速200kmを超えると、フロント8ピストンキャリパーとリア6ピストンキャリパーを備えたカーボンセラミックブレーキが再びそれを制御する。

ブガッティ シロン スーパースポーツに搭載されたローンチコントロール

そして、最後はブガッティのローンチコントロール! シロンのローンチコントロールは、他の多くのクルマと同じ方法で開始する。左足をしっかりとブレーキに置き、ステアリングホイールでローンチコントロールを起動し、右足でフルスロットルを踏み込む。しかし、シロンには特別な機能があり、わずか2秒後にシステムが自動的に解除されるが、パワフルなW16はブースト圧を完全に高めるのに1.1~1.2秒程度必要なのである。つまり、デルタは狭く、圧力は大きいのだ。隣にはブガッティのテストドライバーであり、ル・マン24時間レースで総合優勝を果たしたアンディ ウォレスが座っている。

左足でブレーキを踏み、ボタンを押し、フルスロットル、少し待つ – この瞬間、私はドラッグスターのドライバーになった気分だ – そして、文字通りロケットのように発射する。この後のことは、まだうまく言葉にできないのだが、世界が一瞬止まったような気がした。次の瞬間、「シロン スーパースポーツ」は走り出すのではなく、前に飛び出すのだ。4本のタイヤが最小限のスリップで、あとはひたすら前に進むだけ。マニュアルでもレブリミッターの手前でDSGが自動的にシフトアップしてくれるから、助かった。数秒後、4速で270km/hに到達し、思い切りブレーキをかけると、ABSが効果的に作動し、きれいに静止する。アンディは満足して、「すごい!」と叫んでいた。

「トップスピード」モードは、「スピードキー」でのみ起動できる。このとき初めて、シロン スーパースポーツは440km/hに到達するのだ。

0-300km/h加速12.1秒

一方、私はまだ何が起こったのか理解できていなかった。やっぱり「ブガッティ シロン スーパースポーツ」は速い。数字が怖ろしくて見ていられないくらいだ。静止状態から、5.8秒で200km/hまで到達する。そして、300km/hにはわずか12.1秒、0-400km/hにはスーパースポーツは30秒弱、わずか28.6秒で到達するという。しかし、これらは結局のところ、紙の上の価値観に過ぎないのだ。この加速を自分で実際に体験すると、今のところ言葉にはできないが、「ブガッティ シロン スーパースポーツ」が物理的な限界を短時間無効にしているように感じられるのだ。本当にアンビリーバボーだ(信じられない)!

ブガッティ シロン スーパースポーツの価格

価格も破格的なものだ。「ブガッティ シロン スーパースポーツ」のベーシックモデルは380万ユーロ(約5億1千5百万円)で、さらに各オーナーは購入後、平均30万~35万ユーロ(約4千万~4千8百万円)の追加費用を投じているという。500台のシロン(70~80台のスーパースポーツを含む)は昨年には完売しており、キャンセル待ちも満杯の状態だ・・・。アメージング(驚き)だが、そんな状況も素直に理解できた。

ブガッティ シロン スーパースポーツ

1600馬力、最高速度440km/h、ベース価格380万ユーロ(約5億1,500万円)。以上が、シロン スーパースポーツの主要データだ。世界最速のクルマで初ドライブ!
真にユニークな体験: 「ブガッティ シロン スーパースポーツ」をライブで体験できるチャンスは、ほんのわずかだ。
ステアリングの右側にあるスタートボタンを押す。記念碑的な8.0リッターW16が目覚める。新しいターボチャージャー、改良されたバルブトレイン、オイルポンプのおかげで、ブガッティのエンジニアたちはW16からさらに100馬力を引き出し、「シロン スーパースポーツ」は1600馬力を実現した。世界最速の市販車での最初の数メートルは、地味なものだ。「シロン スーパースポーツ」は、シンプルで淀みない走りを実現する。街中では1600馬力のうち100馬力も使わないのに、アンディの説明によると、3つの走行モード(EB、モーターウェイ、ハンドリング)はエンジン/トランスミッションの特性にまったく影響を与えず、車高と制御系にのみ影響を与えるのだそうだ。
最初の小さな中間スプリントの時間だ。セカンドギア、ハーフスロットル。あっという間に100km/hに達し、アクセルを踏むと、4基のターボチャージャーが信じられないような音をたてて、呼応する。
スピードを上げてコーナリングするとき、1,995kgのブガッティは思いがけない俊敏さで私を驚かせてくれる。「シロン スーパースポーツ」は小さなステアリングの動きにもダイレクトに反応するところが、予想外なのだ。2つのカーブの間にある短いストレートは、スーパースポーツがほぼ吸収してくれる。どんなに小さな中間加速でも、時速200kmを超えると、フロント8ピストンキャリパーとリア6ピストンキャリパーを備えたカーボンセラミックブレーキが再びそれを捕らえてくれる。
この加速を自分で体験すると、言葉で表現するのが不可能に近いが、「ブガッティ シロン スーパースポーツ」は、一瞬、物理的な限界を宙吊りにしたような感覚に陥る。信じられない!
アクセルを踏み込むと、4つのターボチャージャーが信じられないような音を立てて、それを受け止めてくれる。

結論:
今でも言葉が出ない。「ブガッティ シロン スーパースポーツ」は、私がこれまで運転した中で圧倒的に速いクルマだ。トラクションも、推進力も、ほぼ無限大だ。同時に、1600馬力のハイパースポーツカーは、街中で運転するのも安楽であり、超豪華でもある。果たしてこれを超えるものはあるのか?

【ABJのコメント】
大変な難産の末、1,000馬力で400km/h以上の最高速度という、市販車としては前人未到の性能をひっさげて「ブガッティ ヴェイロン」が登場した時代は、いつのまにかもうちょっと昔のことになってしまった。その当時に聞いた話では、とにかくタイヤの開発が大変だったこと、空力対策にものすごく時間がかかったこと、最高速度で走っていると10分程度で燃料タンクがからっぽになるということ、そしてその領域では、熱としてエネルギーの多くが空気中に放出されてしまうこと、などの初めて聞くような話を関係者から聞いたことを思い出す。それほど400km/hキロという世界が大変なのかと実感したものだが、それからブガッティの開発陣はさらに性能を高め、今や「シロン」は1,600馬力と、440km/h(実際は490.484km/h)の最高速度を記録するに至った。

たったの40km/hという人もいるかもしれないが、この領域での40km/hがいかに大変で、とんでもないことであるかは、おそらく一般人の想像をはるかに超えるレベルでの改良と対策と改革が必要な世界であることだろう。そしてこの速度を記録するためには、膨大なエネルギーと特別な場所と、新品のタイヤが必須であることも事実である。聞くところによればタイヤを4本交換するのもウン百万円の世界であり、それもブガッティの本社にタイヤを送っての作業になる、という都市伝説のような話も聞いたことがある。内燃機関の最高性能モデルとして、この「シロン」が頂点になるのだろうか、あるいはもっと高い位置に到達した、より高性能なモデルが本当のファイナルエディションとして登場するのだろうか。

いずれにしろ、カーボンニュートラルの問題などまったく世の中に存在していないかのような「ブガッティ シロン」は、言うまでもなくプラグインハイブリッドモデルやBEVを、日々一心不乱に開発している(はずの)フォルクスワーゲングループの自動車である。いうまでもなく、今のように自由に1,600馬力(つまり1,600頭もの馬 ☺)ものパワーを備えた内燃機関自動車を購入できる時間はあとわずかである。(KO)

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: Bugatti