【ちょっと古いクルマ】最小のハマーでありながら最高のハマー ハマーH3アルファ 試乗記を含むすべての情報

1031

この特別なモデルは、全シリーズの中で最高のハマーである。しかし残念ながら意外と知られていない。最小のハマーH3は、十分なV8パワーを備えて短期間だけ販売されたが、おそらくこのブランドの最高の車といえるだろう。その理由は? 以下にレポート。

よりによって、「魅力の1台」のコーナーに「ハマーH3」が? パワー不足だったのでは? と多くの方は思われるかもしれない。さもありなん。なぜなら、2005年から2010年にかけて生産された「H3」のほとんどは、3.7リッターの5気筒エンジンを搭載していましたのだから。そして、ラダーフレーム、リーフスプリング式リジッドリアアクスルを装着していた。しかし、アメリカ本国では223馬力の5気筒は、人気がなかった。

この批判に耳を傾け、GM帝国に属するブランドは、2008年に「H3アルファ」を投入し、様々なモデルで試された305馬力の5.3リッターのV8を搭載した。奇跡的に、はるかに弱い5気筒よりも燃費は良いのだった。その一方で、残念ながら、3.7リッターモデルより、より12,000ユーロ(約160万円)も高かった。

H3では2年間しか設定されなかった希少なエンジン: 5.3リッターV8、305馬力という頼りがいのあるパワーユニットだ。

その後、銀行危機のあおりを受けて、ルイジアナ州のH3生産工場も閉鎖され、楽しいクルマの販売台数は激減した。そして今、我々の目の前にあるは、所々にクロームの斑点が見られるものの、全体的にはプリミティブな状態の2009年モデルだ。ひび割れのない、まだ固い革のシートも持っている。

洗練されたV8エンジンが鳴り響く

イグニッションキーを回すと、歓迎の短い唸り声が聞こえ、その後、V8は洗練された調子で鳴り響く。4速オートマチックのがっしりとしたギアセレクターレバーをDに合わせると、重厚なオフロード車が、期待どおりの楽々とした落ち着きをもって動き出す。まさに、これこそがアメリカの車好きたちが好む本当の姿である。

ランドローバーのクラシックを彷彿とさせるアーティキュレーテッドリアアクスルを採用。

全長4.78mというヨーロッパ的な長さを、全幅1.99mが補っている。右前方の視界は近所のプードルにも危険が及ぶが、マネーバンのような兄貴分の「H2(全幅2.06m、ミラーなし)」よりははるかに我慢ができる。後席も、サイドウインドウがそれほど小さくなく、高さもそれほど低くないので、「H2」よりも視界が広い。

補修部品の誇り高き価格

よくもまあ、こんなエキゾチックなクルマがこの地にあるものだと思う。「もともとH2が欲しかったんです」と語るのは、ハンブルク近郊のアーレンスブルク出身の機械エンジニア、エムレ アクソイさん(26歳)だ。「まごうことなき男性的なフォルム」がいいんです。しかし、「H2」の全幅が2mを超えるため、日常的に使うには疑問がありました」と彼は語る。

ハマー専用のスペアパーツの値段は決して安くないことを、米国の車好きは知らなければならなかった。しかし、駆動系部品は、米国の部品メーカーならどこでも手に入る標準的なもので、価格も標準的なものである。「特に最近は燃料代が少し痛いです」とアクソイさんは苦笑する。

写真にあるH3アルファは86,000kmしか走行していない。若干のしわをのぞけば革の状態も良好だ。典型的なH3: アルミルックのインレイとギアセレクターノブ。

技術的には(エアサスペンションの)大型「H2」よりも複雑ではなく、操作も非常にシンプルで、SUVに多い4段クラッチをコックピット内のボタンでロックすることができる。センターコンソールのボタンでオフロードリダクションを電動で作動させると、下から「クロンッ!」と機械的な音がして、楽しい気分になる。

オフロードの才能をリスペクトする

4.03:1というギヤ比は、「ラングラー ルビコン」レベルの短さで、ロッククライミングも可能なものだ。BFグッドリッチオールテレインタイヤを装着すれば、急な坂道もゆっくりと、しかし確実に登っていくことができる。

表記されている登坂能力は60%だ。また、リアアクスルを見てほしい。フルアーティキュレーションにすると、リジッドアクスルは、まるで壊れてしまったかのように柔軟になり、激しい起伏のある路面にもスリップコントロールを使わずに追従できるシャシーになっている。良好なバンクアングルと平均215mm以上の地上高と相まって、オフロードでの才能は折り紙付きだ。また、ステアリングが適度に正確であること、回転半径が思いのほか小さいことも、大きな兄弟に対する利点となっている。

H3は、ヨーロッパ的な意味でのハンドリング性能はないが、それなりに正確なステアリングを備えている。

「H3」の典型的な弱点は、平凡な防錆(この個体では修理済み)、電子機器の混乱(この個体では観察されず)、前述のクロームの吹き出物で、これらは「H2」からもわかっていることだが、同じ供給元からの部品だそうだ。

当時、我々は標準の「H3」について、制動距離が長く、スリップ制御がやや粗いと批判していた。そのことは「H3」についても言えることだが、V8を搭載した「H3アルファ」は、このブランドの中で最も調和のとれたクルマに仕上がっている。

テクニカルデータ&価格: ハマーH3アルファ5.3 V8(2009)
● エンジン: V8ガソリンエンジン、フロント縦置き ● 排気量: 5327cc ● 最高出力: 305PS@5200pm ● 最大トルク: 434Nm@4000rpm ● 駆動方式: 全輪駆動、減速機付4速トルクコンバーターAT ● 全長×全幅×全高: 4782×1989×1872mm • ホイールベース/回転半径: 2841mm/左12.1m、右11.4m • 乾燥重量: 2,330kg • ラゲッジコンパートメント容量: 500~1,577リットル ● 0-100km/h加速: 8.2秒 ● 最高速度: 158km/h ●平均燃費: 6.8km/ℓ ● 燃料タンク容量: 87リットル ● 価格(2009年当時): 48.990ユーロ(約646万円)

ハマーブランドの歴史
イラク戦争時に軍用車HMMWV(ハンヴィーまたはハマーと呼ばれる、1983~2010年)がテレビで常時放映されていたことから、1992年に民間版「ハマーH1」が誕生した。独立懸架、フルタイム4WD、トルセンアクスルロック、幅2.19m、軍用版に比べてほとんど静かで、6桁の価格だった。1998年にGMがハマーを買収し、2002年に「シボレー シルバラード」に、ステーションワゴンのボディとエアサスペンションを装着した全幅2.06mの純民生車「H2」を発表した。

シビリアンH1(1992-02): 1996年から5.7 V8を搭載。

2005年に登場した小型の「H3」は、「コロラド」のエステートバージョンで、残念ながら先代よりも430kgも重く、3.7リッター5気筒ではパワー不足だった。GMはその後、2008年に5.3リッターV8を搭載した「H3アルファ」を発表。しかし、2010年には倒産危機に陥り、2021年に最大1,000馬力の電動ハマーEVでブランドを復活させるまで、生産は中止していたのだった。

【ABJのコメント】
ハマーがBEVになったというニュースを聞いたとき、やっぱり頭に浮かんだのはあの軍用車両として開発されたものを、一般にも「売ってくださった」あの「H1」の姿である。日本の路上でも、たまに(普通の人が乗っているのを)見かけたが、その多くは主に映画やニュースなどで登場していた、あのクルマ。あれこそがハマーの本来の姿である。それからしたら、今回の「H3」など、「イメージ的にハマーの姿をかりた、普通のSUV」なわけで、おそらく純粋なハマーファンにとっては、認めがたい一台ではあろう。

この「H3」も日本に並行輸入され、そのうちの一台をアイドルタレントが乗っているのを見たことがあるが、いうまでもなくファッションアイテムとしての自動車で、この車は普通に使ってなんぼのSUVであった。別にそれにいちゃもんをつけるわけではないし、ミリタリーグッズも決して嫌いではないから、こういう楽しみ方もあるのだなぁ、と思うと同時に、こういう自動車が認められるのは世の中が平和であるが故のことでもあるとも思う。

先日から報道されるウクライナに関するなんとも残念なニュースを見ながら、とにかく少しでも早く解決方向にすすみ、人の命が失われることのない状況になることだけを、心から願っている。(KO)

Text: Rolf Klein
加筆: 大林晃平
Photo: autobild.de