【このクルマなんぼ?】六本木のカローラ BMW 324td(E30) 走行距離7,100km、31歳の3シリーズの値段は?
2022年2月2日
走行距離わずか7,100キロのBMW 324td(E30)がeBayで売りに出されている。そのボンネットの下には当時不人気のディーゼルが! 果たしてその値段は?
1982年から1994年の間に、230万台以上が製造販売された「BMW E30」。タマ数は多いが、状態の良いものが減ってきたこともあり、2代目「BMW 3シリーズ」は、コレクターズアイテムとして人気を博している。31年以上経過し、走行距離がわずか7,100キロという特別な「E30」が、現在eBayに出品されている。しかし、エンジンはシルキーシックスではなく、ディーゼルエンジンだ。
このE30は確かに6気筒だが、人気のある「320i」や「325i」ではない。当時ディーゼルのトップモデルであった希少な「324td」だ。生産期間中、BMWが「E30」に用意したディーゼルエンジンは2種類あった。86馬力の「324d」と115馬力の「324td」の両方に、同じ2.4リッター6気筒(M21)が搭載されていた。唯一の違いは、「324td」にはターボが搭載されていることだ。当時の「324td」は数が少なく、市場に少なくなっているのは、大きな驚きではない。
この324tdは、実質的に新車だ
しかし、この美しいカラー「ノーティックグリーン」の「BMW 324td」は非常に特別な個体で、事実上新車と言えるだろう。31年余で、7,100kmといえば、年間走行距離はわずか229kmだ。この「E30」を代理出品している出品者は、広告文中で信じられないほどの低走行距離が実現できた理由を説明している。1990年7月、ベルリンに納車された3シリーズは、トップディーゼルに加え、エアコン(ディーゼルとしては珍しい)、フロント電動ウィンドウ、アラームシステム、電動調整式エクステリアミラーなどの優れた装備を備え持っていた。その後、「E30」はポーランドに渡り、そこでカーライフを送っていた。
しかし、オーナーが病気になったため、「324td」は、乗るより、ガレージに置いておかれることのほうが多くなった。しかし、売主によれば、オーナーの家族は30年間、「E30」を定期的に整備し、常に走行可能な状態に保つよう気を配っていたとのことである。直近では、タイミングベルトを交換し、オリジナルのタイヤも新しいものに交換した。
E30は、改造されていないオリジナルの状態だ
初年度登録から32年近く経過したこの「E30」は、見た目も匂いも新車のようで、数十年にわたる手入れと保存が報われたことは明らかだ。写真では、塗装(再塗装なしとされている)も色あせておらず、ダメージも見受けられない。さらに、「E30」は、ほぼオリジナルの手付かずの状態だ。グレーのベロアを張ったインテリアも実に印象的だ。何も摩耗していないし、プラスチック部品も摩耗していないし、ステアリングも油っぽくない。ちなみに、この「E30」には純正のラジオなどは付いていない。またシート生地もベロアだ。
Hナンバー登録と2023年6月までの車検を含めて28,000ユーロ(約366万円)という価格で売りに出されたが、売り手はすでに1,999ユーロ(約26万円)の値下げをオファーしている。ちょっとした交渉術があれば、もう少し交渉の余地があるかもしれない。現在、ドイツ市場にはこれに匹敵する「E30」は存在しないので、この特別なモデルの価格は比較することすらできない。
BMWが圧倒的に一般的?になってきたのは、この「E30」の頃から、である。もちろんそれにはバブル経済とかそういう時代の趨勢ももちろん影響しているが、「2002」の頃の「ドイツの特別な自動車」というイメージを変え、一般的な人にも(頑張れば)買えるという思いを抱かせ、一気に数を増やしていったのは、この「E30」からだろう。
残念ながら僕はこの「E30」を所有することもなく、数回乗せてもらったことがあるだけだが、今の「3シリーズ」よりもずっと骨っぽい、ドイツ車らしいドイツ車だった。今回の一台はそんな中でも一番骨っぽい?と思われるディーゼルエンジンモデルで、当時はもちろん、日本にはガソリンエンジンの4気筒と6気筒しか導入されていなかったから、なじみの薄いモデルではある。そういえば当時は「318」に「320」とか「325」なんていうエンブレムを付け替えるのが流行っていたっけ・・・。なんとも良い時代である。
それでもドイツでは、ディーゼルエンジンは一般的だったはずだし、ターボもついているのでパワーも十分だろう。でもいくら新車みたいな一台とはいえ、360万円以上かぁと思うと、「E30」の思い出代金としてもなかなか踏ん切りのつかない値段のようにも思われる。あの頃六本木に夜な夜な出かけていた当時のユーザー殿、いかがでありましょうか??
Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: ebay.de/aggijo