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【このクルマなんぼ?】約40年落ちのメルセデス280TE(S123)のお値段やいかに?

2022年1月23日

この185馬力のメルセデスエステート280TEは異常に安い。メルセデスS123ステーションワゴンは非常に需要が高く、価格は常に上昇しているが、eBayで32万4千km走行の「280TE」がかなり安く提供されている。どうやら、この古いベンツの状態は良いようだ。

メルセデスS123は、今や希少な存在となった。
1975年から1985年にかけて製造された古いクロームメッキのステーションワゴンは、今では、リーズナブルな価格で手に入れられることは稀となった。
そのほとんどが、比較的高い価格で売り買いされているのが現状だ。
しかし今、eBayでは、「メルセデス・ベンツ280TE」つまりトップエンジンを搭載したモデルが8,600ユーロ(約114万円)というリーズナブルな価格で売りに出されている。
この個体に興味がある人は、実際に見てチェックして、本当に写真に写っているように完璧なものであれば、購入することをお勧めする。

というのも、この出品者はeBayの評価が1つしかなく、クルマに関する詳細な情報もほとんど明かされていないのだ。
製造年すらわからないが、このエステートは185馬力(それ以前は177馬力)となっているので、1981年秋以降に生産されたものだろう。
eBayのページから得られる情報を見る限りは”状態が良い”という判断ができそうだ。

280TEの運転席のシート生地などは他のインテリアとマッチしておらず、どうやら以前交換されたようだ。

「M110」シリーズの6気筒ガソリンエンジンは、30年前のエンジンの最終型であり、Sクラスにも搭載されている185馬力で、その堅実さで知られている。
特に定期的なバルブの調整など、しっかりとした手入れをすれば、走行時に鳴る特徴的な音からファンが呼ぶ「ベルツリー」なども防げ、走行距離を倍増させることができるのだ。

W123の既知の錆の問題

しかし、40年も前のクルマには、もちろん致命的なポイントがある。
何より、「123」はすぐに錆に悩まされる。
酸化は主にホイールアーチ、エンドチップ、ジャッキポイントに見られる。
また、テールゲートやリアサイドウインドウは初期サビが発生しやすい。
だが、写真に写っている車両のこれらの部分は意外ときれいだ。
しかし、また、長い間、ガレージに置いたままにしておくと、すぐに腐り始めることもありえる。
ドアも錆びることがあるが、状態によっては、200ユーロ(約2万6千円)からと比較的安価に購入することができる。

ターボディーゼルも用意された「S123」は、メルセデス初のライフスタイルエステートであった。
サルーンの生産台数は230万台で、ベンツの歴史に名を刻んだが、エステートも約20万台と大成功を収めた。
クラシックカーとして、現在「S123」にはあまり安いオファーはない。
安い車は、車検の時に溶接すべき部分が多いので、かえって高くなる。
コンディション3の「280TE」の場合でも、状態の良い個体であれば、2万ユーロ(約264万円)以上は簡単にするだろう。
コンディション2であれば、その1.5倍から2倍はする。
燃料消費量は「123ディーゼル」とは比較にならないくらい悪い。
最高でもリッターあたり8.3リットルだ。

M110ガソリンエンジンは、6気筒で177馬力または185馬力を発生し、最高時速200km/hまでの走行に十分なパワーを発揮する。

良好な状態かどうか詳細を確認することができるようだ

この個体は、4枚の写真に写っているものを見る限り、少なくとも良さそうだ。
フロントバンパーのプラスチックトリムなど、細かい部分も色あせたり、もろくなったりしてはいない。
インテリアも保存状態がよく、非常に繊細なブルーのダッシュボードのひび割れもぱっと見には目立たない。
これだけ見ると、ちゃんとした車庫で保管されていたのかもしれない。

もちろん、このような「Hプレート」オプション付きの名機に興味を持った人は、決してインターネット上の情報だけで購入を決めてはいけない。
オーストリアから輸入されたこのエステートカーは、新しい車検証を取得しているものの、登録はされていない。
そのため、試乗会場で仮ナンバープレートを取得し、修理工場やピットに「S123」を乗り入れ、エンジンやギアボックス、デフなど下からのクラシックカーチェックを必ず行う必要がある。
また、請求書、テストレポート、オフィシャルレターなど過去のメンテナンスをチェックできる書類も要求する必要がある。
実態を正確に把握し維持していくためには、一つひとつの情報が重要なのは言うまでもない。

はるか遠い昔、「S123」の「300TD」が自宅にあった。相当使い古されて中古車として我が家にやってきたそれは、重い、厚い、そしてとにかく加速が遅いというもので、絶対に140km/h以上出ない変わりに、その速度をずっと一日でも保っていられるという、不思議な万能荷物車だった。その後我が家は「S124」の「230TE」に車が変わるのだが、今見るとあんなにしっかりしているはずの「S124」が、なんともコストダウンで、うすっぺらいプレハブ住宅のように思えてしまったのだから、「S123」はそれほどすべてが重厚だったのである。
そんな「S123」をたまに東京都内でも見かけるが、どれも大変綺麗に使われており、愛情をもって所有されていることが伝わってくる。もうじき登場から50年にもなろうという「S123」を今維持することがどれだけ大変なことか、少しだけは理解しているつもりだが、それでもよほどの愛情がない限り維持は困難だろう。
今回の一台は32万キロとのことだが、このころのメルセデス・ベンツとしては、まあ距離そのものは大丈夫だとは思う。それよりも各プラスチックパーツや、ちょっとした欠品などがもはや入手困難であることと、今回のレポートにも記されている通り、燃費が悪いことは覚悟しなくてはいけないだろう。
それでも、まごうかたなきメルセデス・ベンツとは何かを知りたければ、この一台に触れてみることは大切だと思う。この当時のメルセデス・ベンツから見たら、今のラインナップに並んでいる車は、どれも大変良くできた普通の自動車に感じられてしまうのではないだろうか。それほど厚く、重く、頑固だったのが昔のメルセデス・ベンツなのである。

Text: Roland Wildberg
加筆: 大林晃平
Photo: ebay/thoka-57